第十三話
身体を捻りながら宙を舞う言ちゃん。そのまま後ろの本棚に頭をぶつけると、重力に逆らうこと無く床に倒れてしまう。
「きゃあああぁぁぁ!!! 言ちゃあああぁぁぁん!!!」
想像以上の出来事に、すっかり気が動転してしまった私は、足元に倒れている言ちゃんのお腹に股がって襟元を掴み、無理やり上体を起こす。
「言ちゃん! しっかり! 目を覚まして!!」
しばらく身体を揺さぶっても目を覚まさない言ちゃん。私は、最悪の状況を考え、焦り出してしまう。
「……言……ちゃん……?」
私は、過呼吸の様に息をつきながら、何とか気を落ち着つかせようと、脚の短いテーブルに座る。
「待って……そんなはずない……落ち着いて……」
そうだ……落ち着くんだ……そう! まず、言ちゃんをどこに埋めるか考えないと……
「って、ちがーーう!!」
何を恐ろしい事考えてるの!? 私!! そうじゃないでしょ!? そうよ! そう! まず最初にやるべき事は……
「救急車! 救急車呼ばないと!!」
私は、119番に電話する為、急いで自分の鞄からスマホ取り出す。
「119番って、何番だったっけーーー!?」
おおおおお落ち着けぇ! 私いぃ!! 全神経を脳に集中させれば簡単に思い出せる!! やれ! やるんだ!! 福余暇子ぉ!!
「うおおおぉぉぉ!!!」
そうだ! 117だ! 119番は、117番だ! やればできるじゃねぇか!! 福余暇子!!
「1……1……7……と……」
待っててね! 言ちゃん! 今、救急車を呼んであげるからね!!
『ポーン』
「あ! 救急車ですか!? 病院をお願いしたいんですが!!」
『午後5時、36分、20秒をお伝えします』
だあぁーー!! 119じゃねえええぇぇぇ!!!
何故だぁ!? 117を押したのに、どうして119じゃあねえんだぁ!?
あまりの慌てっぷりに、冷静な判断力を失っている事に気付かないまま、私は、言ちゃんの体に抱きついて泣き出してしまう。
「……言ちゃあん……言ちゃあぁん……!!」
もうどうすれば良いの? どうしたら良いの? もう言ちゃんはこのまま目覚めることはないの……?
その時だった。何処からか、ふわりとした……でもなんか投げやりのような、そんな声が聞こえてきたのは。
『……リア充……爆発しろ……』




