存在
俺は神だ。趣味で星を育成している。
いくつかの星を育成しているのだが、その中でも一番のお気に入りの星があった。
その星はとても生命力が高く、たくさんの生物が繁栄していた。最近では「人間」という種族が生まれたことで、一際目覚しい成長を遂げていた。ノリに乗った勢いに、俺もニッコニコだったのだが・・・
昨日、ついうっかりその星のデータを消してしまったのだ。
星の存在を証明する、とても重要なデータだった。
「はああああ・・・俺の星が」
「ちょっとお前、大きなため息ついちゃって、どうした。」
俺が全力で絶望感を表していると、友達の神が話しかけてきた。俺は彼に、お気に入りの星が消えてしまったことを説明した。
「あちゃー、それは残念だったな。僕も一度同じことをしでかしたことがあるから、わかるぞその気持ち。」
俺を慰めてくれた。良い奴だ。それでも、なかなか沈んだ気持ちは浮かばない。
「はああああああ」
「ああ、そうだ。僕が最近育て始めた世界で、データが重複してるのがあるんだわ。だから、片方やろうか?重複してるだけだから、両方同じだし。ほら、どっちが早く星を繁栄させられるか競争しようぜ!」
「・・・ホントに良い奴だな。」
・
友達のおかげで機嫌を取り戻した俺のもとに、最高神様からの手紙が届いた。最高神様は、俺の上司のポジションにいる人だ。
俺は何か失敗したか?ドキドキしながら手紙を読むと、そこには
『謝らなければならないことがある。私の部屋に来てくれ。』
と、書かれていた。一体どういうことだろう。早く最高神様のところに向かわなければ。
俺は急いで最高神様の部屋まで走り、部屋の扉を勢いよく開けた。
「さ、最高神様!どうされましたか。」
「おお、来たか。お主には本当に申し訳ないことをしたと思っておる。」
「な、何をなされたのですか。」
最高神様が俺に謝ることなど、今まで一度もなかったはずだが。
「実はな・・・お主の存在を証明するデータを、消してしまったのだ。」
「・・・え」
俺のデータが消えた、だと?それはつまり、俺が消してしまったあの星のように、俺も消えてしまうということか?なんてことだ。
「これから、お主のデータを復元しようと思う。」
「では、俺は消えずに済むのですか。」
よかった。
「いや、お主は消える。」
よくなかった。
「どういうことでしょうか。」
「データを復元すれば、お主と同じデータを持った、お主とは別の奴が現れるということだ。今私の目の前にいる、様々な記憶を持ったお主は消えてしまう。」
「はい?」
どういうことだ。理解が追いつかない。
「うむ、受け入れられないのも無理はない。しかし、もう決まってしまったことなのだ。本当に申し訳ない。ああ、最期に話をしたい奴はいるか?」
さ、最期か。
「では、俺の友に。」
「わかった。」
そう言うと、最高神様は何やら作業を始めた様子だった。そして、しばらく待っていると俺の友達がやってきた。
「ちょっとお前、何したんだよ。僕だって暇じゃないのに。」
俺は彼に、俺のデータが消えたので復元することを説明した。彼なら、どうにかして助けてくれるかもしれないと思ったからだ。
しかし、
「なんだよ、そんなことか。復元するだけだろ?そんなのお前がもう一人出てくるだけじゃんか。さっさと復元されてこいよ。」
「え、ちょっと。いや、そうなのか?」
よくわからない。一体何が、誰が正しいのか。
「主らよ、もういいか?」
最高神様が話しかけてきた。俺としては最初から全く良くないのだが。
「じゃな、さっさと終わらせてもらって飯食おうぜ。」
ヒラヒラと手を振って、無情にも友は帰ってしまった。
「すまぬが、これから復元を始める。本当に申し訳ない。」
そう言って最高神様は頭を下げた。俺は全くもって状況を呑み込めていないので謝られてもただ混乱するだけだ。。
「さよなら、じゃ。」
最高神様は復元の完了ボタンを押した。
そして俺は訳のわからぬまま、あの星のように、消えた。
友達は、データが同じなら中身も同じ
最高神様は、データが同じでも中身は違う
という考え方です。
作者は自分が自分だということを当たり前に認識していますが、その証明ができるのは自分ではなく、他人だけなのではないかと思いました。
それならば、
自分の証明をしてくれるものがなくなったら自分はどうなってしまうのか?
自分の証明が間違っていたら自分はどうなっているのか?
という疑問が浮かんだのでこれを書きました。
流石に物体が消えるとは思いませんが、疑問が現実になったら、何かは変わってしまうのかもしれません。