表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異根くんは間違っている  作者: 一宮カエデ
1/1

きっと大丈夫だろう

「あのね、皆ここを移動するんだって……。 異根《ことね》くんも一緒に移動しよう?」


クラスメイトの女の子……だよな? 名前は知らんがその子が俺に声をかけてくる。


「あぁ、俺はやることあるから、まだここに居るよ」

「で、でもこの辺は危ないかもしれないよ? 一人でいるよりみんなで動いた方がいいと思うなぁ~……なんて」


なるほど……要するにこの子は俺が一人でいる事が面倒くさいのだ。

まぁ、喋ったことはなくてもクラスメイトが死んだら少し心を病むだろう……が


「大丈夫だよ、それより……君はクラスメイトと一緒にいかなくて良いのか?」

「え!? もうあんな遠くに!」


女の子が俺を説得している間クラスメイトは結構遠くまで歩いて行ってしまっている。

このままだとあと少しで追えなくなる可能性もある。


「俺は自分の意思でここに残るんだ。 気にしないでいいから」

「ほ、本当に大丈夫なんですね?」

「大丈夫だよ」


……多分。


「それじゃあ、行ってきます。 また何処かで会えます……よね? し、死んじゃ駄目ですからね!」


叫びながら走って行った。


「よし、俺は俺でやれることをやっていくか」






ここに来て3日が過ぎた。

ここ《・・》とか言ってはいるがここ《・・》がどこかはわからない。

俺たちは修学旅行で京都に行く際、乗っていた飛行機が墜落……そしてここ《・・》に着いた。

乗客は奇跡的に無事であり、まさに不幸中の幸いだったのだろう。


皆はここが日本だと思っている。 が、明らかに違うところがある。

実際良く考えれば分かることなんだが、パニックでそれどころじゃないらしい……。


俺が感じた違和感、まずは植生だ。

この土地の植物は明らかに日本の物ではない。

ここら辺の植物が異常にデカい。

日本にもあるにはあるだろうがその数が多すぎる。 それにカラフルなのだ。

赤青緑……etc色々な色が混じっており、正直なぜこれを見ていてここが日本だと思っているのかがわからない。


そして極め付けは、


「ステータスオープン!」


俺の目には今、俺のステータスが浮かび上がっている。






NAME : KOTONE HARAI


Lv : 1


HP : 10


MP : 0


ATK : 4


DEF : 2


MAT : 0


MDF : 0


POW : 2


VIT : 1


SPD : 2


INT : 0


LUK : 4


UNNOWN : 0


SKILL


・ステータス更新

・土魔法

・聴覚強化






……もう完全に言い訳もできない……。

これが俺が完全にこの世界が異世界だとする判断だ。


にしてもこのステータス、他の人は出せなかった。

なぜだかは知らないが、それが原因でこのことは誰も信じてくれず浮いた存在になってしまった。


「よし、とりあえず動いて見よう」


俺は声を出して自分を奮い立たせる。

まず俺がする、出来ること、しなきゃいけないことは……食料探しだ。

じゃない、水探しだ。


食事は取らなくても1週間は大丈夫だが、水は1日飲まないだけで最悪死ぬ。

と言っても多分だが水がどこにあるのか大体見当が付いている。


「聴覚強化」


俺がスキルを唱えると一気に耳への情報が増えた。


聴覚強化……その名の通り聴覚を強化するスキル。 このスキルを使用すると大体3kmほど離れた声もわかるようになる。

だけど……


「こっちか?」


情報が多いため雑音が入り過ぎて結局わからない。

水の音かどうかはわからないがそれっぽい音が聞こえる方に歩いていく。


歩いていく。

どんどん森の中を歩いていく。


歩いていて分かったことがある。

この森、他に生物がいる。

木には時々マーキングが付いているし、雨で流されていない血痕、動物や何かよくわからない生き物の骨。

ここに来て3日間、俺たちのクラスや大人達は動かない方がいいという結論を出し、そのままあまり動かなかった。

でも少し歩けば気付けたかもしれない。

だって……


「こ、これって……」


テレビなんかで見たことがある。

熊のマーキングだ。 でもこれは……。


俺の目の前には今まで見てきた熊の約10倍はある爪痕だった……。


この森にはこんなデカイ熊がいるのか?

熊はどこ行った?

いや、その前にここを離れなきゃ!


気がついた瞬間、俺は森の中を全力疾走した。 あんな熊がマーキングしているところにいたら熊から殺される。


そういえば、皆は大丈夫だろうか?

俺は皆とは逆の方向に進んだんだ。 ここら辺が熊の縄張りなら向こうはきっと無事だろう。


きっと、大丈夫だろう。


大丈夫。大丈夫。


この時、俺はまだ知らなかった。

ラノベなんかで書かれる異世界コメディーはただのご都合主義の塊であり、この異世界も同じだなんて考えてはいけない事に……

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ