16 ドア
「なあ、2人いるんだし打ち合いしてみねえか?」
「打ち合い?決闘か!?」
「いや決闘ってほど本気ではやらん。稽古だ稽古」
「おう、いいぞ!」
「あ、ちょっと待て。俺らには絶望的な弱点がある」
「な、なんだってー!?」
アニキが自分の体をペシペシ触る。
「装甲がやわすぎる。ぶっちゃけると防御力なんぞ皆無だ」
「おう!普通の服だしな!」
「なのであの大剣で戦ったらドラゴンの前に大怪我だ。ちょっと木刀作るわ」
「おお~木刀か~」
「あとよ、この部屋結構お宝いっぱいあるだろ?」
「お宝しかねーぞ」
「今は誰もいねーけど、泥棒が入るかもしれん。誰でも入って来れるしよ」
「んーたしかに」
「ドア付けた方がいいんでねーか?」
「おードアかー。出来るかなー?」
「あー、そうだなー・・・こう両手開きの作って」
「お城とかにある奴わかるか?こう押して開けるんだ。んで閂とかかける。俺もお城なんて生で見たことねーけど、なんとなくわかるべ?」
「かんぬき?ってのよくわかんねーけど、なんとなくわかったぞ」
「閂ってのは、まあ鍵みたいなもんだ」
「鍵かあ。どんな仕組みなんだろ?」
アニキも考えている。鍵は普通に使ってたけど、仕組みなんていちいち考えないよな?
「こう鍵を捻るだろ?すると鉄のストッパーがこう横から出てきて、外側にある穴に入るんだよたしか」
あーなんとなくかわるかもしれん。でも漠然としかわからん。
「あ、そうだ南京錠ならあるぞ。ホレ」
「おーさすがアニキだ。なんでこんなん持ってんだ?解剖してみていいか?」
「あー偶然だ。好きにしろよ、どうせ使うことなんかねーから」
「サンキュー、アニキ」
「んじゃま、作るとすっか」
「おう!」
ダブル職人の誕生である。アニキも木彫り職人目指すのかな?ライバルだ。やべえな気合い入れんと。
・・・・・
いやー苦戦した。ごちゃごちゃしてるし、バネとか俺クラスの職人じゃないと作るの無理だろ。でもこれ作った奴天才だわ。俺1人じゃ絶対考えつかねえよこんなん。
見たまんまコピーだからなんとか出来た。デカイのもいけると思う。
「アニキー・・・出来たけどすげー疲れたぞ」
「お?マジか。コテツおめーマジすげえわ。ん?でも鍵だけか?」
「ドアは明日にするー、もう今日は無理」
「そっか。まあ無理する必要はねーよ。木刀なら出来たぞ」
「おー、明日から特訓だな!」
「おう!無理しない程度になー。あー明日木取ってきてやんよ。ドアに使うだろ?」
「おー、アニキに任せたー」
やっぱアニキいい人だなー。頼りになるぜ。
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―――――【神殿】―――――
「へーーー、ヤンキーけっこういい奴じゃない!ま、趣味じゃないけど」
人は見かけじゃ、わからないものね・・・。
ここに送ってしまったのはミスだったけど、仲良くしてくれて助かったわ。
・・・・・
それは子供とプロレスラーを、ダンジョンに送った少し後のことだった。
「殺すぞガキ!」
「あ?ヤッさんだろうが、引くつもりはねえぞコラ!」
「テメェちょっと調子に乗ってないか?このままじゃ洒落にならんぞ?」
「うっせぇ!やんのかやらんのかハッキリせえや!」
はぁ、なんで今度はヤクザとヤンキーが来るのよ・・・・・。
勇者だよね?絶対人選間違ってるでしょ!どうするのよこれ・・・。
「ほぉ、いい度胸だ。死んでも恨むなよ?クソガキ」
「上等だ!この野郎」
「はいストーーーップ!あんまりここで騒がないでくれる?」
あーめんどくさいなあ。どう見てもこの2人はないでしょ。
「あ?なんだテメェは」
「あ?なんだココは?」
はいS級ダンジョン行き確定。ヤクザのほうは・・、えーとココなんかいいんじゃない?
で、と。ヤンキーはココね。
「じゃあ、がーんばってねー」
2人は何が何だかわからないまま転送された。
・・・・・
「はぁ、疲れたわね。次こそまともなのが来ればいいけど」
送った先を一応確認してみる。
あっ!しまった!ヤンキーのほう、子供送った所じゃない!
うーん、大丈夫かなあ?まあ送ってしまったものはしょうがないわよね。
「うん。もう知ーらないっと」
次はイケメンが来るといいわねー。
この女神、結構適当である。




