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第2話 石ガチャ

 異空間の中に入る。通路がありそれが奥に向かって一直線に伸びている。扉のない部屋が二つ、魔方陣が描かれている扉が一つある。

 その内の一つ、異空間に入ってから左側、扉のない部屋へ入っていく。


「ここは天授の間。一日一回武器を召喚できるよ。ここに先ほど渡した魔法石をはめ込むと魔方陣から武器が現れる。では試してみて」


 指示された場所に魔法石をはめ込む。すると魔方陣が白く光りだし、中心に光の塊があらわれる。徐々に発光が弱まり、形が整っていき、最終的に剣となった。


「ショートソードだね。等級は一番下、Nの武器だ。まあ二回に一回は何も出ないことがあるから大ハズレってわけではないよ」


 苦笑いしながらメルツは説明を続ける。魔方陣の発色で武器の等級がわかるそうだ。下から、Nは白色、Rは赤、SRは金色、SSRは虹色。この天授の間ではRまでしか出ないとのこと。等級、魔方陣の発色に関してはエターナルチャージと同じだな。ただ、何も出ないなんてことはなかったが。


 メルツが説明を終えショートソードを受け取り、もう一つの扉のない部屋へと入っていく。広大な部屋で、天井は5階建ての建物がすっぽり入ってしまうなくらいの高さだった。


「ここは神授の間。虹流石を触媒にすることでより強力な武器が手に入る。一度の召喚に30個使う。最大は300個、魔方陣内部10か所から武器が出現する。今回は特別に一回召喚分の30個を渡すよ」


 メルツは「かなり貴重品なんだよ」、と笑みをこぼしながら虹流石の入った袋を俺に渡す。メルツに指示された場所に魔法石をはめ込むと魔方陣が光りだした。


 おお、虹色だ!ゲームを始めたころはこの色を見ると非常にうれしい気分になったものだ。課金を重ねるたびに虹色演出への感動が薄れていくんだけどね。魔方陣の内部は凄まじい炎が沸き起こっていた。天井まで届きそうな炎は徐々に勢いが失われていく。炎が無くなると、円の中心に巨大な生物が姿を現した。


極炎竜皇(ブレイズタイラント)


 これは大当たりだな。竜族。召喚できる零獣の中でもトップクラスの性能を誇る。零獣とは普段人には見えない存在。英雄は見ることができ、使役することも可能、とゲームで説明されていたな。ちなみに零獣が召喚されるときも等級による発色は武器と同じだ。


 ゲームでは編成に組み込むことで零獣効果が発動。パーティ全員が攻撃力50%アップという壊れ気味な性能だ。さらに攻撃指示を出すことで敵に大ダメージを与える。


 引きがいいな。一発でSSR零獣とは。


「いやー、残念だったね。魔方陣が虹色に輝いたときは心躍ったが。何も無しのハズレだね……」


 メルツが肩を落としながらうつむき気味に語りかけてきた。


(ハズレ? 正面にデカイ零獣がいるんだけど?)


『ゴファァー、また契約もできぬのに我が呼び出されたか。まったく。こういう無駄は避けて……ん? もしやお主は見えておるのか?』


 俺は極炎竜皇(ブレイズタイラント)に向かって頷く。


『長い間待たされたわい。おおっと、おぬしに愚痴を言っても始まらぬな。どれ契約をしようではないか。我が言葉の後に”求める”と心で念じるがよい』


『汝、我を求める者か。』


(求める)


『よかろう。なれば零獣契約に従い、我は汝に付き従おう』


 その姿が徐々に透明になりながら消える。かわりに俺の中へ何かが入り込むような感覚を覚えた。


「ズワッ」


(これは!)


 体の奥底から力が沸き上がる。


『今回初めての契約だったようじゃから、直接おぬしの中に入ったようじゃな。次回からは零獣が召喚され、契約が終わると零獣石となる。後々入れ替えも可能じゃよ。では今後ともよろしくじゃ、主殿』


 無事契約が終わった。隣でメルツが不思議そうな顔をしていた。


「どうかしたかい? さっきから上を見上げているけど」


「いえ、放心してしまって。虹色から何もなしはつらいですね……」


「ハハハ、今日は運が無かっただけさ。いつの日か大当たりを引く日が来るよ」


 グッ、と親指を立てながら励ましてくれた。幻獣は見えていないし、契約したことも分かっていない様子だな。メルツさんは信用できそうだけど、もし話が広まってしまった場合どんなことが起こるか想像がつかない。


 嘘をつくのは心苦しいけど、とりあえず秘密にしておこう。


「ささ、気持ちを入れ替えて冒険者講習を続けよう。ここからは全クラス共通の説明になる。引き続き教官は僕がやるよ」


「はい、お願いします」


 いや、まだ魔方陣の描かれた扉があったな、確認してみよう。


「ところで、この通路の奥にある魔方陣の描かれた扉はなんです?」


「? いや、そんな扉はないはずだけど」


 一緒に扉の近くまで近づく。


「ね、なにもないでしょ」


「あ、そうですね。遠くから見たとき魔方陣が見えた気がしたんですが何もありませんね」


 扉の魔方陣は光り輝いていた。これもメルツさんには見えないというわけか。


「それじゃ戻ろうか」


 ギルドの部屋に戻り、メルツは講習を始めた。知っていることも多いな。全部覚えるのは本来大変だから楽でいい。


「さて、スキル説明の前に戦闘補助魔方陣を体に埋め込もう。後に魔方陣の場所は動かせるから今回は左手の手の甲に、ちょっとちくっとするけど我慢してね」


 そう言うとポケットから判子のようなものを取り出す。それを俺の左手の手の甲に当て、呪文を唱えだす。痛みはないが熱を感じる。判子を持ち上げ手の甲を確認すると焦げ付いたような色で魔方陣が描かれていた。


「スキルについて。スキルレベル、クラスレベルを上げていくとスキルを習得することがある。スキルを最大限活用するためには肉体と魂、その間にスキルを装着する必要がある――」


 簡単に言えば、

 ○魂と肉体をスキルでリンクさせることで強力なスキルが扱える。

 ○同時に装着できるスキルは4つまで。

 ○スキルは入れ替え可能。

 ○パッシブスキルという常時特殊な効果が発動するスキルもある。

 と言ったところかな。




「それでは講習を終わりとする。長時間お疲れ様」


「いえいえ。いろいろ教えていただきありがとうございました」


「これは当面の活動資金1000ゴールドだ。持っていって」


 ゴールドはこの世界の通貨だな。ここはゲームと同じか。


「はい、ギルドカード。これは戦闘補助魔方陣の中に収納できるようになっている。本人以外収納できないから詐欺防止にもなっている。」


 カードには、名前、クラス、星が一つ、一番下に∞と書かれていた。無限てなんだろう……

 もしかしたらこれもメルツさんに見えないかもしれない。そう思い確認をしてみることにした。


「メルツさん、一番下のこれはなんでしょう?」


 星はギルドの依頼をこなしていくと増えていくと説明してくれる。ということは∞は見えてないってことかな。見えてないならこれについて尋ねるのはやめておこう。


「今日はそろそろ夜になるから宿に泊まって体を休めて、また明日ギルドへ来るといい。初心者用のクエストを見繕っておくよ」


「わかりました。それではまた明日」


「うん、またね」


 挨拶を済ませ、俺はギルドを後にした。

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