第14話 悩み
目的を達成した俺たちは、お祭りを楽しみながらギルドで情報収集することにした。
年に一度のお祭りということで様々な場所から冒険者が集う。仲間探しには最適だ。有名冒険者も多数来るとのことでそちらの情報も仕入れておきたい。
「あの赤髪のにーちゃんの名前はネオ、クラスは疾風騎士、それから――」
情報通の冒険者ビアンから有名冒険者の情報を教えてもらう。朝からギルドにいるが数人の有名冒険者がギルドへ来ている。いつもと比べるとやはり多いそうだ。
ギルド内を眺めていると、中に入ってきた冒険者たちの中に一際目立つ女性がいた。
全身から黄金色の光を放ち、派手に着飾った衣装、後背にはわっかのようなものが浮遊している。手にした杖も変わった形だな。
「あの女性も有名な方ですか?」
「いや、知らない子だな。最近出入りするのを見ているが、それにしても、派手だよな……」
組んでいた冒険者達へ丁寧にあいさつをして別れ、席に座る女性。皆が注目している。美人だしな。
「ちょっといいかな」
ふいに声を掛けられ、少し驚く俺。声の方に振り向くとそこにはアサイアさんが立っていた。
「久しぶりだな。それで、訳ありなんだが……良かったら私をパーティに加えてもらえないだろうか?」
「ええ、もちろん良いとも」
二つ返事で了承する。よしよし、仲間集めは順調だ。
「それでは改めて、アサイアだ、よろしく頼む」
「レオンだ、よろしく」
「サシュウよ、よろしくね」
「メディスです、よろしくお願いします」
(ちょっと不思議なことが起こるけど、慌てないようにしてね、詳しいことは後で説明する。)
(? わかった)
小声でそう伝えるとパーティを組んだ。アサイアに加護が付与されたのだろう、少し驚いたが、すぐ笑顔に変わる。
「おう、アサイア。良い情報はあったか?」
「今のところはダメだ」
「そうか。まあレオンにも相談に乗ってもらうといい」
ビアンと話すアサイア。訳ありと言うくらいだから、彼女から話すのを待つか。
さて、力を見せ合わないとな。そうだ、今日の零獣退治が終わってるならレイドも可能かな。行ってみよう。
「お、空いてるな」
零獣出現ポイントには人はほとんどいない。これなら奥の方でこっそりレイドができるか。アサイアにある程度説明をする。
「そんな事が! しかも零獣が見えるだけじゃなく使役できるなんて……」
初級の黄金鳥を片付けると、中級で俺たちの力を見せた。驚いているな。それからアサイアの力を見ようと初級に挑戦する。
「腕力は見せてもらったから、スキルを見せてくれ」
「……了解した」
サシュウを超える力だ。これにスキルも加わればとんでもない破壊力になるだろう。初級なら一撃じゃないかな。鈍器のような武器を手に取り敵から離れた位置で構えるアサイア。飛び道具系スキルかな。
『石礫』
数個の小さな石が零獣へ飛んで行き、当たる。
「ポフン」
え、あれ? 魔法? しかも弱い!?
元気よく突進してきた零獣を俺のスキルで片づけた。
「……私は魔法使いなんだ」
一瞬意識が止まりかけたが、ハッと我に返る。アサイアは申し訳なさそうに苦笑する。
「これではまともに戦えなくてね」
力はあるが、攻撃魔力が低い魔法使い。ビアンとはこの状況を打破するための情報を探しているときに知り合ったらしい。俺が誘ったとき嘘をついて断った、とのことだ。
「君に誘われたときうれしくて一回だけでも組んでみたいと思ったんだ、すまない」
「……なんとかならない? レオンさん」
サシュウが真剣な顔で俺を見る。彼女も苦労してきたからアサイアさんの身の上に思うところがあるのだろう。
「何かいい情報があったら教えてくれ。パーティは抜けておく。迷惑をかけたな」
「待った、大丈夫だよ」
パーティを抜けようとするアサイアを止める。
思いつくところで方法は二つある。一つはSSRを使うから保留しておこう。もう一つは――
「アサイア、これはスキル結晶と言って、スキルが使えるようになる代物だ。戦闘補助魔方陣から入れて、装着してみてくれ」
「ス、スキルが使える結晶!? わかった、試してみよう」
美脚大木が落としたスキル結晶を渡す。言われた通りスキルを装着するアサイア。もう一度初級レイドへ挑戦する。黄金長の前に立ち武器を構えた。
『美整連突』
猛烈な突きの連打を放つ。一発一発が重そうだ。その場で崩れ落ちる零獣。マナがあふれ出し元の姿へと戻る。
「や、やった! 念願の攻撃スキルだ!!」
アサイアは嬉しそうに手を上げる。
「ふふふ、さすが私のレオンさん」
俺の近くにいたサシュウは笑みをこぼし聞き取れない声でつぶやく。
「ありがとう! 長年悩んでいたんだ!」
俺の手を握ってブルンブルンと振る。ハハハ、余程嬉しかったんだな。手がもげそうだけど。
レイドから退出した後、俺たちを呼び止め語り始めた。
「……君たちには話しておこう。実は私は巨人族の末裔なんだ。巨人族は力に優れ、体が今の私の3倍ほどあったが、長い年月の中で体が小さくなっていった。力の強さはそのままにね」
サシュウをも超える力はそれが理由か、納得。
「お祭りが終わって街が落ち着いてからでいい、もしよかったら私の村へ来ないか。お礼をしたいんだ。ハハハ、村長の娘でね。そこそこのおもてなしは出来る。それに村近くで暴走零獣が出現することがある」
俺が情報収集をしていることに気を使いつつ、誘ってくれているんだな。しかも零獣か。二人はこちらを見て頷く。
「お言葉に甘えよう。ただ――」
「わかってる。秘密は守るよ」
アサイアは唇に人差し指を当て、ウインクをしながらいたずらぽく笑う。




