第12話 お祭り
俺達は険しい山道を歩く。足を踏み外したら、崖下へ真っ逆さまだ。のぼりから下りに差し掛かったところで、大きな滝が見えてきた。
「あの近くに先生が住んでいます」
滝を眺めていると、下から割れ目が駆け上り、大きな音を立て二つに割れる。なんだあゃ……。
滝つぼに到着すると大きな体躯の老人が少女に格闘術の指導していた。
「先生、お久しぶりです」
「おお、メディスか。大きゅうなったな」
目を細め、嬉しそうに微笑む老人。隣にいる少女はメディスと同じお尻丸出しファッション。戦う聖女の正装なのだろうか。
「この方達は――」
メディスは俺たちを紹介し、深呼吸をし構える。
「先生、一手お願いします」
「良いじゃろう」
あっと一旦パーティから抜けてもらおう。今は加護がついてるからね。
「ちょっと待って。メディス、パーティを抜けておこうか」
改めて構えなおす二人。
「いきます!」
「いつでも」
「シュバン」
「ガキン」
戦闘は爺さんが優勢かな。レベル42のメディスが押されている。
「バキン」
「ぬぐ」
あ、キツイやつ入ったな。たまらずバックステップをしてスキルを発動する。左掌を前に突き出すと光が集まり大きな玉があらわれる。それを右の拳で撃ち抜いた。
『聖光縮弾』
「ガスン」
対して爺さんは迫る光弾を手刀で叩き落とす。あれはスキルだろうか。しかし強いな、もしかして。
「ガハッ」
メディスが大きく吹き飛び、そこで戦いは終了する。
「ほっほっほ、あれから随分と腕を上げた様じゃな」
「ありがとうございます。先生」
「もしかしてあなたは、レベル上限50を超えてますか?」
「何のことじゃ? レベルなら50じゃが」
上限突破を知らないようだ。この世界では50が限界と思われているのだろうか。
こちらの現在の上限値は俺が60、サシュウが70、メディスが60。それぞれ、56、59、42。人それぞれ上限突破条件が違うのは辛いな。ゲームの時はネット検索ですぐ見つかったが。
(ちなみにあの服装はどんな意味があるのでしょうか)
小声で老人に問いかける。
(わしの趣味じゃ)
聞かなかったことにしよう。
一晩泊り挨拶をして、俺たちは街に帰る。三人で相談し、次は冒険者が集まる街、ルクニクルへ行くことに決めた。そろそろ、SR武器を装備しても良い頃か。剣、グローブ、杖だな。久しぶりに1000回召喚を行い、お目当ての魔法付加が付いた武器を強化していく。
攻撃力アップの剣、攻撃力アップのグローブ、、魔法攻撃力アップの杖。完璧だ。指輪も渡しておかないとな。サシュウが上限80になったことに気づく。幻獣の種類が条件かな。それにしてもどんどん強くなるな。
朝、出発前にSR武器、指輪を二人に渡す。
「こんなにすごい剣初めて見た……。ありがとう、大切にするね」
「ありがとうございます!」
ふふふ、まだこの先にSSRが控えているからSRは通過点に過ぎないんだけどね。でも大切にするって言われて嬉しい。
「それじゃ出発!」
おー! と、掛け声と共に俺たちは元気よく歩き出した。
ルクニクルに到着すると街の賑わいぶりに驚く。大教会がある街フリーションもかなりの人数がいたが、それをはるかに凌駕する過密状態だ。それにしてもこれは異常な気がする。
「この街へはお父さんに連れられてよく来てたけど、いつもより人の数が多いわね」
ギルドへ入る。その内部は広大で冒険者でひしめき合っており、受付も多数、椅子やテーブルもかなりの数があった。さすが冒険者の集まる街だ。
掲示板を見ると派手な張り紙が目に入る。
『零獣祭、間もなく開始!』
お祭りみたいだな。どんな祭りなのだろう? 困ったときは聞くに限る。俺は、ベテランで人の良さそうな、暇をしている冒険者を見つけて声をかける。
「すみません、俺たちここへ来たばっかりで。これだけ賑わってるのは、お祭りの影響なんですか?」
「ああ、そうだとも。ワッハッハ、君たちはそれを知らずにこの街へ来たのか」
上機嫌に酒を飲み肉を頬張る冒険者。
「祭りは5日後だ。他では零獣暴走がいつ起こるかわからないが、ここは毎年決まった日に暴走するんだ。それが十日間続く。倒しても次の日には復活。冒険者が多勢押し寄せるから商売っ気のある商人たちもこの街へ来る。さらに観光客も来るようになっていつの間にかお祭り化したって話だ」
さらに零獣の出現場所等、詳しく話をしてくれる冒険者。なるほど、『黄金鳥』か。鳥と名がつくが飛べない。他の零獣よりも弱く倒すのは簡単だ。
コイツがドロップするスキル結晶は有用だ。これは良い情報を聞いた、お酒一本つけちゃおう。
「いい心がけだ! 今年の祭りも楽しくなりそうだ、ハーハッハ!」
大笑いしながら周りの冒険者に酒をふるまい始める。冒険者たちのリアクションは様々。だが皆ノリノリだ。礼を言い、俺たちはギルド掲示板へと向かう。5日後ならまだ時間があるな。簡単なクエストをしながら零獣暴走を待とう。
そう思いながら掲示板を眺めるも、時間がかかる、難易度の高そうな依頼書しか残っていなかった。まあ皆考えることは同じか。外を見ると、お祭りは5日後だが既に街はお祭りムード。
「依頼書はろくなものが無いから、お祭りまでのんびりしよう」
「賛成、賛成! もう出店がいっぱい並んでるし、催しものもたくさんあるみたいよ!」
「あ、向こうにかわいいアクセサリーを売っているお店がありました!」
二人ともお祭りモードだな。戦闘や旅ばかりだったから二人には楽しんでもらおう。もちろん俺も。
「よーし、予算は考えなくていい! 楽しもう!」
「「サスガリーダー!」」
通りを歩く人たちの中には、獣人族がちらほらいる。近くに彼らの住処があるのかな。
街中を歩いていると、同じような服を着ている人たちが多い事に気づく。お祭り用の衣装か。形から入るってのもアリだな。
「アレ買う?」
「「欲しい!」」
と即答。着替えて俺達は人波の中へ入っていった。
「これオイシー! あー、あっちもおいしそう!」
「レオンさん、玉当てと書いてあるお店、面白そうです!」
ははは。こらこら。俺は一人なんだからあっちこっち行っちゃったらついていけないよ。でもお兄さん頑張っちゃう!出店を楽しみながら進んでいくと、大声を張り上げている男がいた。
「集まれ力自慢! 我こそはと思う者はこちらへ。参加受付中だよ!」
男の奥には大きなハンマーが置いてあり、その隣にはこれまた大きなボタンのような装置が備え付けてある。ハンマーであれを叩くのかな。
「挑戦しても良いですか?」
「んじゃ私もっ!」
ふむ、俺も参加しよう。
三人とも受付を済ませ、参加者の列に並んだ。




