第11話 策士
「うふふふ、罠にかかったわね……」
私は策士サシュウ。大きな獲物を仕留めんと、考えを巡らせ行動に至る。相手は鈍感を越え、そびえ立つ岩山。今回の作戦は、女の子に興味を持ってもらおうという作戦。レオンさんを真ん中に寝かせ、左右を私たちで挟む。女の子二人に囲まれては意識せざるをえまい。
夜がふけ、楽しいおしゃべりの時間は終わる。
「さて、そろそろ寝ようか」
メディスに目配せをする。ウインクで返してきた。作戦実行の時!
「んじゃ、俺が見張りをしてるよ」
「!!」
しまった!! 見張り役を数に入れていなかった!! いや、焦るな、サシュウ。ピンチをチャンスに変えてこそ本物の策士。このぐらい乗り越えるのよ。
「あ、ちょっとまって」
メディスと相談することにする。そして話は決まった。
「私とサシュウさんが交代で見張りをします。まずは私から」
「いつもお世話になってるからメディスとこうしようって話したのよ」
レオンさんは難しい顔をしていたが私の話を聞くと途端に微笑んだ。
「わかった、ありがとう。それではお言葉に甘えるとしよう」
伸びをしてテントのほうへ歩き出すレオンさん。少々トラブルが発生したけど問題はない。三人が二人になるだけよ。二人きりか。ナニィィィーー!
もう覚悟を決めるしかない。いやレオンさんならそんなことは……いやいやむしろ……。混迷渦巻きながらも、意を決してテントへ侵入。
そこにはすやすやと寝息を立て、すでに眠っているレオンさんがいた。
(そうだよね、レオンさんだものね……)
ほっとしたような寂しいような感覚を覚えたが、私も鎧を脱ぎ眠ることにした。
そろそろ眠りの世界へいざわなれる手前で、レオンさんがごろごろと動き始め、こちらに近づき、抱きつかれた。
「スゥ」
寝ている。寝相が悪いのだろうか。いやしかしこの状態は……。か、顔が近い。吐息があたる。ダメ、意識が遠のいヲポォ!
何かが抜け出たような声を上げた後、私は意識を失った。
後に、メディスが交代の時間テントの入り口を開けるとレオンさんが私に抱きついている、という状況を見てすぐに閉じ、見張りを続行したことを知る。誤解は解いておいた。
サシュウからメディスがあまり寝ていない、と聞く。あまりにもぐっすり眠っているものだから起こせなかったと。メディスをしっかり寝かせてから出発した。
「ハッハッハ。良い心遣いだと思うけど、無理はしちゃ駄目だよ」
まずは自分を大切にしないとな。やさしい子二人に囲まれて俺は上機嫌だが。
昼食を食べそれからさらに歩いたところで、家々が見えてきた。村から外れた場所にある小屋から金属音が聞こえる。あそこかな。
「インビジウムの鎧を作っていただきたいのですが」
「……持っているのか?」
インビジウムを取り出すと、手に取り真剣な表情で見つめる鍛冶屋の男。
「加工はしたことがない。しかし、このインビジウムの槌と地下にある溶岩で、昔師匠が剣を作り上げたのを見ていた。もし良かったらやらせてもらえないか?」
「それで構いません。お願いします」
「ありがたい。師匠に追いつけるチャンスだ。必ず作り上げて見せる」
――数日後、村に滞在していた俺たちの元へ鎧完成の一報がはいった。
「おぉー、これは見事ですね」
「難しかったぜ。だが俺にも出来た。師匠にも自慢したいな」
「約束通り、そこは内密にお願いしますね。それにまだまだ作っていただきたいものがあるんでこれで満足していてはいけませんよ」
俺は笑いながら、作成費用を渡す。
「……なあ、もしかしてまだまだインビジウムがあるのか? 良かったら槌や他道具用に欲しいんだが」
「手持ちはありませんが、用意できます。今後お世話になるだろうし、必要な分はタダでお分けしますよ」
「ほ、本当か! 頼む!! となると金は受け取れねえな」
これから長い付き合いになりそうだ。そのくらいなら安いもの。サシュウは鎧を受け取り着替えた。
「前の鎧より軽くて動きやすいわ。それなのに固いのね。」
外へ出て飛び跳ねたり走るサシュウ。一通り試した後、ポーズをとってこちらにウインクを送る。気に入ってもらえたようだな。
街に帰った俺たちは、飲食店で食事を。大きな声で会話する男たちの声が耳に入る。
「王子様が王殺しだってよ。やってくれたぜ」
「いやー、よかったよかった。散財に圧政、気に入らない奴は死刑。ろくでもねえ王様だったよな」
「良いことはそれだけじゃなく、隣国グレイが弱ったバンプティに攻め込もうとしていたが今回の件で手を引くって噂だぜ?」
ああ、そういえばゲームのメインストーリーで、王の交代があったな。ろくでもないってのは共通。むしろ、ろくでなし過ぎてプレイヤー達から人気があり、ネット内で葬式も行われていたな。
さて、マナマテリアルを必要分変換してくるか。俺の服用、指輪用にいくつか、と頼まれ分のインビジウム、と。メディスの服はSRなんだよな。サシュウの鎧と同じ等級。まだしばらく大丈夫だろう。
一か月稼いだ分がかなり減ったな。レイドはここからじゃやれないか。また戻って稼がないと。
クエストやレイドをこなし、一か月ほどたったところでアイテムの受け取りへと向かう。
「はっはっは、動きやすくていいな」
「あと、知っているとは思うがこの宝石に一つだけ魔法を付加出来る。俺は彫金、裁縫をある程度できるが、魔法付加は無理だ」
「あの街で出来ますか?」
「ん~、可能だとは思うが、効果が低い付与しか出来ないんじゃないかな。魔法都市へ行けばいいところがあるかもしれない」
等級が高いほど効果が高い魔法付加がつけられる。出来ればいい付加をつけたいものだ。魔法都市か。次の目的地の候補だな。村の宿へと戻り、今後の方針についてみんなと話し合った。
「魔法付与。仲間集め。今思いつくのはこのあたりだな」
「そうねぇ。ここからだと冒険者が多数集まる街が比較的近いかな。お父さんから聞いた話だとクエスト依頼が豊富にあるから冒険者たちが来るんだって」
ふむ、冒険者の集まる街か。それも捨てがたい。
「あの、もし良かったらこれから旅立つ前に、私に武術を教えてくれた先生に会っておきたいのですが……」
「この村のさらに奥、そこに住んでいます」
メディスの先生か。あの街じゃ一番強いといわれていた理由がその人にあるのかな。興味深い。それに挨拶は大切だ、世話になった人なら猶更。
「わかった、まずはそこへ行くとしよう」
「ありがとうございます」
村で一泊し、メディスを先頭にして山道を登って行った。




