表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/19

第1話 異世界転移

「この一年楽しかったなぁ……」


 スマートフォン、ソーシャルゲーム『エターナルチャージ』


 基本無料、課金することで強力な装備等を入手可能。ゲーム内にいるキャラクターを仲間にし、操作キャラとして扱える。俺はこのゲームをやり込んでいた。特に対人戦『アリーナ』は一位を取り続けた。

 

 起業して一発当て、とっとと権利を売り払い一財産築いた俺は『エターナルチャージ』にどっぷりハマり一年で五億円をつぎ込む。しかし流石にお金を使いすぎた。これ以上続けると破産しそうだったため、丁度一年目の今日、引退することを決めていた。


 ゲーム内で知り合いに引退のことをほのめかしていた。それが運営会社の耳に入ったのだろう、軽く引き留められたが俺の決意が固いことを知ると説得は諦め『このゲームで最も活躍した人』ということで特別称号『エターナル・ワン』を授与される。


 もう辞めるからいらないんだけどね。


「……俺はプレイヤー達からサクラだと思われていたかもな」


 ゲームを終了して伸びをし、そのまま机に突っ伏してうとうとと眠り始めた。




 目を覚ますとそこには寝た時と違う風景が広がっている。大木に寄りかかるようにして眠っていたようだ。


「ここはどこだ? 公園……か?」


 よろよろと立ち上がりながら周囲を見渡す。

 賑やかな方向に目を向けると変わった服装を身に着けた人々が大通りを歩いている。そうだな、言うなれば中世ヨーロッパ風の服装だろうか。

 

 ハッと思い返し自分の服装を確認する。寝る前と違う服装。ここの人たちと似たようなデザインだ。しかしこの服、どこかで……


 そうだ、『エーターナルチャージ』のデザインに似ている。ということはここはゲームの中か? いやしかし――


 大通りを眺めながら思案にふけっていると、一人の少女が奇妙な動きをしていることに気づく。人を避けるようにして進んでいる。訓練? 大道芸?

 あっ、目が合った。気まずい。


 すると、その少女は通行人にぶつかり焦った表情をしたが、すぐに体勢を立て直しさらに進み続け建物の中に入っていく。


『生まれたての小鹿亭』


 看板に書かれた名前に見覚えがある。ゲーム最初の村にあるギルドの名前だ。ギルドには人が集まり情報収集をするには欠かせない場所、とゲーム内の説明に書いてあった気がする。今はとにかく情報が欲しい。そう考えた俺は、ギルドに足を運ぶことにした。


 ギルドに到着。中に入ると、がたいが良い人たちから視線を感じた。脅かそうとしている雰囲気ではないが正直怖い。

 

 できるだけ目を合わせないようにギルドを観察していたところ、先ほどの少女が部屋の片隅からじっとこちらを見つめていることに気づく。座れる椅子はたくさんある。なんでそんな場所にいるんだろう? と彼女を見返すが、何か理由があるのかなと思いすぐ目をそらした。


「兄ちゃん、見ねえ顔だがここは初めてか?」


 俺は体をビクッとさせる。声の方へ振り向くと強面でひげを生やし筋肉隆々、40歳くらいの大男が後ろに立っている。すごい威圧感だ。


「え、ええ。そうなんですよ。田舎から出てきたばかりで」


 なんとか平常心を保とうとしながら答えたが声がうわずってしまう。平常心、平常心だ。


「冒険者になって一旗揚げようって口かい?」


「そこまでは……日がな一日食べていければなー、と」


「がーはっはっは、そんなちっけぇ考えじゃいけねえぜ! はったりでも一国の王になるくらい言わないとよぉ!」


「まあ、とにかくあれだ、そこの受付で冒険者登録をすませるんだな。じゃなきゃ何も始まらねぇ」


「ありがとうございます」


 気を使ってくれたようだが迫力がありすぎて俺の足は震えていた。会話を聞いていたギルドの受付らしき女性が、やれやれといった感じで大男に話しかける。


「まったく、脅かすのはやめてくださいね」


「そんなつもりじゃなかったんだがな……」


 と大男は肩を落とし小さくなった。いい人か。


「冗談ですよ。ところでそちらのお兄さん冒険者になりますか?」


「あ、はいお願いします」


「こほん、それでは改めまして」


「ようこそギルド支店生まれたての小鹿へ! 私は受付のアミリアです。よろしくお願いします」


 テンション高いな。歓迎してくれるのはうれしいけど。

 それから、アミリアさんか。こちらも名乗らないと失礼にあたるかな。フルネームは南保怜恩だがゲームで使っていたプレイヤーネーム、レオンにしておこう。 


「レオンです、よろしく」


「まずは手続きを行います。この書類に記入してください」


 アミリアさんから書類を受け取り記入項目を眺める。ふむふむ、名前と年齢だけか。レオン、25歳と。


「はい。それでは次にあなたに合ったクラスと現在のレベルがわかる職業鑑定石(クラスストーン)、こちらに手を乗せていただきます。光った後、魔法紙に結果が出力されます」


 言われた通り石の上に手を乗せる。淡く光を放ち魔法紙に文字が書かれ始めた。


【剣士? レベル1】


 剣士? なんか「?」がついてるんだけど。考えてもわからない。とりあえず魔法紙を渡す。


「!! ……はい。この後は別室で初心者向け冒険者講習となります。今から案内致しますね」


 アミリアさんの言葉に従いギルド奥の小部屋に。


「ここに座ってお待ちください。今担当の者をお呼びします」


 ほどなくして、一人の男が入ってきた。


「やあ、待たせたね。僕がギルド長のメルツだ。よろしく」


「レオンです、よろしくお願いします」


 ギルド長ってここで一番偉い人なんじゃないか? 初心者にそこまでするのか。とても手厚いサポートだな。関心関心。


「僕がここへ来た理由は先ほど鑑定で剣士? と出たことについてなんだ。これは剣士ではなく――」


「【英雄】だ」


 英雄。ソーシャルゲームエターナルチャージでは、プレイヤーの分身ともいえる主人公キャラの初期クラス。世界を制覇する潜在能力力を持つと言われる。

 大層な説明だが他クラスと比べると、初期は明らかに弱かった。プレイヤー達から大不評だったため、後にパワーアップするけど。


「英雄ですか……しかし剣士? とわざわざ隠すような真似をしたのはなぜですか?」


「これは英雄にしかできないことなんだけど、一日一回武器を召喚できる。さらに特別なアイテム、虹流石を使用して強力な武器を召喚できるんだ。だから冒険初心者が英雄だとばれると無理やりパーティーに引き込まれたり、最悪監禁されたこともあったんだよ」


 なるほど。って過去に監禁された人がいるのか。それは慎重になるな……


「では、武器召喚を行う場所に向かおう。この魔法石に『ヒーローゲート』と心の中で唱えると異空間ががあらわれその内部に召喚する場所がある。君に魔法石を渡しておこう。ちなみに私も英雄だ。一緒に中に入って説明するよ」


 メルツから魔法石を受け取り、言われた通りのことをおこなう。


『ヒーローゲート』


 無事異空間が開き、俺たちは中へ入っていった。

初心者です! よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ