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奴は悪人か
カラン。
金盥に銃弾が落ちた。
ロンが李の傷口に消毒する。
「ありがとう」李は礼を言った。
「お前達、いったい何なんだ」ロンが李に聞いた。
「私は李英風と言います。あの男は宣教師ではなく重罪人で私は捕らえるために追ってます」李は答えた。
「ふうん、よくわからないが奴は悪人か。でも結構良いこと言っていたぞ」
「どんな?」李は聞いた。
「世の中を良くするため私は教えを広めているとか」
「そうですか」
「まず貧富の差を無くさなければならない、とか」
李は返答に窮した。
「とにかく今日はウチで休んでいけ」ロンが言った。
「ありがとうございます」李は礼を言った。
ロンは立ち上がり、食事の支度を始めた。
日は西に傾いていた。
「奴は本当に悪人なのか」
李は窓の外の日を見ながら、ふと疑問に思った。