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カラクレム  作者: Arpad
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2部 第9章 海の女神

 昇降機が止まると、目の前に無機質な通路が現れた。ずいぶん先まで真っ直ぐ伸びている。考えを整理するにはちょうど良い、とカラクレムは物悲しい表情で笑みを浮かべた。

 思えば、これでグリーバに続き、二つ目の種を断絶させることになる。どちらも、旧人類が生み出した遺産。そんな旧人類が生き残ろうともがいた足跡は、今のところ確実に現人類の脅威、つまりは怪物と成り果てていた。そうなると、考えずにはいられない。旧人類は、ユートピアは、どうなのだろうか。ユートピアも、旧人類の遺産である事に変わりは無い。彼らもいつか、今の世に仇を成す怪物となってしまうのか。そうなった時、自分はどう立ち回るべきなのか。答えが出ないうちに、カラクレムは通路の終点へと行き着いていた。

 目の前の気密ドアを開けると、アンモニア的生臭さが鼻を襲う。これは、エイディアンを斬った時にも感じた異臭である。この先にいるのは、確実のようだ。長剣を右手に発現し、カラクレムはドアの先へと歩を進めた。

 そこは、カラクレムがアクアニウムへと辿り着いた際に利用した、エアロックの間と同じ構造になっていた。異なっていたのは、全てのエアロックの気密ドアが開放され、そこをエイディアンが出入りしていた点だ。ここが奴等の巣と見て間違いないようである。

 その時、傍らの壁に備え付けられていたインターホンからノイズ音が響いてきた。

「・・・カラクレム、そこに居ますか・・・?」

「おお・・・シムズさんか」

 突然の声に驚きはしたものの、すぐに冷静さを取り戻して、カラクレムはインターホンへと近付いた。

「ここに居ますよ、シムズさん」

「・・・確認しました・・・無事に辿り着けたようですね・・・」

「ええ、おかげさまで・・・あの、ここからはどこへ行けば?」

「・・・そこからは、道なりに壁沿いの通路を通ってください・・・梯子を降りた場合の、ポート中央を行くルートは、現エイディアンの巣があり、推奨しかねます・・・環境柄、通路の腐食が危惧されますので、ご注意を」

「分かりました」

 カラクレムはインターホンから離れ、言われた通りに壁沿いの通路を進んだ。この通路は、アクアニウムの外壁や潜水艇の装甲に使われている謎物質ではなく、親しみのある金属で造られていた。もしかしたら、後から急造されたもので、設計段階では存在しなかったのかもしれない。需要は不明だが、下を通らずに済んだのはありがたい事だった。

 通路を半分くらい進んだ時の事だ、カラクレムは踵を置いた床に違和感を感じ、瞬時に踏み切った。すると、踏み切った床が手摺ごと落下し、けたたましい金属音を響かせた。どうやら、腐食していたらしい。カラクレムが踏み切らずに体重を預けていたら、一緒に落下していただろう。

 しかし不幸にも、床が落ちた音で、エイディアンらがカラクレムの存在に気付いてしまった。まだ通路の上なので大丈夫だが、通路の下には夥しい数のエイディアンが犇めきつつある。カラクレムが進むと、一緒に付いて来る始末だ。

 エイディアンは、何故こうも執着してくるのだろうか。巣を守る為、というのが一番しっくりと来るが、やはり他種族が嫌いなだけなのか。答えの知りようが無いが、その目からは憎悪を感じなくもない。こんな姿にした旧人類に、遺伝子レベルで憎悪を抱いているというのも、ありえない話では無い。

 カラクレムは、ジッと床下のエイディアンを見つめていたせいで気付くのに遅れてしまっていた。通るべき通路を、手の届いたエイディアンがもぎ取ってしまっていた事に。

「それは、あんまりですよ!?」

 既に跳躍して届く距離ではない。カラクレムは咄嗟に長剣をエイディアンに投げ付け、それが突き刺さった後、その柄頭を踏み台にして、通路の先へと跳び移った。ここからはもう、金属の足場では無い。カラクレムは長剣を右手に戻し、先を急いだ。

 再び無機質な通路を抜けて、辿り着いたのは、数々の計器と椅子が配された場所だった。さながら、アクアニウムの艦橋と言ったところだろうか。前方の壁が透明になっていて、外の様子が窺える。

 ここにもインターホンがあり、カラクレムは呼び掛けてみることにした。

「シムズさん、ここは?」

「・・・そこは、アクアニウム内の環境を手動で操作する為の場所です・・・通常、環境管理はワタシが行なっておりましたが、そこでの操作はワタシの権限よりも上位のものとなっております・・・」

「なるほど・・・王の間、ということですか」

「・・・アクアニウムの最高責任者という意味では、正しいです・・・中央に位置するコンソールへ移動してください・・・」

「はい、真ん中のコンソールですね」

 カラクレムが周囲を見回すと、外を観るのに最適な位置に、玉座としか思えない椅子と目的のものと思われるコンソールを発見した。

 早速歩み寄り、玉座に腰を降ろす。良い眺め、とはお世辞にも言えないが、座り心地は悪くない。カラクレムは肩を回し、コンソールの操作を開始した。

 技術を要する操作は苦手なので、カラクレムは内心不安に思っていたのだが、パネルタッチ式で操作が進むようなので胸を撫で下ろしていた。

「・・・さて、始めましょうか」

 時限式自爆シークエンスの開始、を選択すると、次に時間指定を要求された。そういえば、どのくらいに設定すれば良いのだろうか。カラクレムが逡巡していると、コンソールのスピーカーが作動した。

「・・・出払っているエイディアンの誘導、貴方達の脱出を考慮なら、30分程度が理想的かと・・・こちらはエイディアンの誘導を開始しましたので、タイマーのセットと起動を要請します・・・」

「ええ、助かりました」

 カラクレムは、提案通りの時間をセットし、自爆シークエンス起動のパネルを押そうとして、指を止めた。

 何か、見落としは無いだろうか。これほど大掛かりな事を仕掛けるのだから、どんな現象が起きてもおかしくない。

 一度考えを整理した方が良いのか、カラクレムが顔を上げた次の瞬間、自分の居る環境制御室へダンタリオが急速接近していることに気が付いた。

「こんな時に・・・はぁ、仕方ないですね!」

 カラクレムは、自爆シークエンスを起動するや否や、即座に出入り口の気密ドアへと全速力で駆け出した。そして、彼が気密ドアを閉めるのとほぼ同時に、ダンタリオの拳が振るわれ、透明だった壁に大穴を空けた。

 深海と、地上と同じ気圧の部屋が繋がるとどうなるのか。定かでは無いが、逃げ遅れていた場合、カラクレムは恐ろしい結末を迎えていただろう。それにしても何故、ダンタリオが襲ってきたのか。もしかしたら、エイディアン達はカラクレムが何をしようとしていたのか、判っていたのかもしれない。まあ、これも知りようが無いのだが。

 カラクレムは通路を駆け戻り、自分がツキに見放されている事を実感した。エイディアンの巣を迂回するルートが、行きで失われていたのだ。つまりは、エイディアンが犇めくフロアを強行突破するしか道はない。

 カラクレムは長剣を程好い位置にいるエイディアンに投擲し、先程と同じく柄頭を踏み台にして、エアロックの上に着地した。エアロック伝いに反対側の通路へ行くのが、より早く切り抜けられると判断したのだ。

 しかし、エアロックは壁沿いの通路よりも高さが無く、エイディアンはカラクレムの居るエアロックの上へと登って来ようとしていた。カラクレムは、長剣で登ろうとしてくるエイディアンの手を斬りつけて牽制し、隙を見つけてはエアロックを跳び移った。その間にも、エイディアンはカラクレムの足を掴もうとしてくるので、注意が必要である。

 これを繰り返すこと6回、カラクレムはどうにかフロアを渡り切る事に成功した。後は通路を疾走し、昇降機である床に飛び乗った。だが、昇降機は動き出さない。

「シムズさん!」

 カラクレムが呼び掛けると、何処からかシムズの声が響いてきた。

「・・・システムにエラーが発生しました・・・復旧までしばらくお待ちください・・・」

 実に機械的な文言に苦笑していると、通路の奥からエイディアンが侵入してきてしまった。他を踏み台にして、怨敵とばかりにカラクレムに追い縋る。絶滅させようとしている事から怨敵で間違いないのだが、魚の怪物に成り果てようとも、復讐という人間臭さは捨てられないらしい。

 カラクレムは、長剣を投擲し、先頭を転ばせることで時を稼ごうとした。真っ向からぶつかれば、圧倒的な物量に押し潰されてしまうからである。だが、例え仲間に蹴躓こうとも、エイディアンの勢いは止まることが無かった。少しでも隙間がそこを掻い潜り、身が裂け、骨が砕けようとも、怨敵を押し潰さんと猛進を続ける。

 まさに、生命の底意地と言ったところだろうか。カラクレムは感嘆し、押し潰される覚悟さえ、決めようとしていた。

「・・・良かった、間に合いました・・・上昇します・・・」

 エイディアンの塊が目前に迫ったところで、昇降機の上昇が始まった。あるエイディアンの指が、昇降機をかすめていたので、本当に間一髪である。

 カラクレムは、肩で息をしながら、昇降機にへたり込んだ。相手を道連れにすることしか考えていない特攻ほど、恐ろしいものはない。彼らには胆を冷やすに足る迫力と怨念が確かに存在していた。

 どうにか、五体満足でドームへと帰還したカラクレム。ドームでは、シムズとマーレイが待っていた。

「・・・ありがとう、カラクレム・・・これでようやく、ワタシは矛盾から解放される・・・」

「・・・マーレイさんとは、話しましたか?」

「・・・ええ、ちゃんと・・・そして彼女も自らの定めを理解し、精一杯生き続けることを誓ってくれました・・・」

「・・・そうですか、それは何よりです」

「・・・さあ、マーレイを連れて、脱出を・・・さようなら、マーレイ・・・」

「うん・・・バイバイ、お母様・・・」

 マーレイの目元は泣き腫らしたように赤らんでいた。それが己の定めを知ったからなのか、母との別れを悲しんでなのかは、判らない。どちらにせよ、カラクレムに出来るのは、彼女の手を取り、逃げ出すことだけである。

「シムズさん、短い間でしたが・・・お疲れ様です」

「・・・ありがとう、カラクレム・・・終わり方を選べて、ワタシは幸せです・・・生き物のように、子に未来を託せるのですから・・・それが例え、僅かな時間であっても・・・マーレイを頼みます・・・」

「・・・安心してください。マーレイさんには、大好きな人とお友達が出来たのですから、きっと笑っていられますよ」

「・・・・・・」

 シムズは、もう何も語らない。機能を停止したようにも思えるが、そうではないのだろう。別れの時ほど、言葉は尽きないものだ。だからこそ、会話を切る勇気が必要になる。時間が無いとなれば、なおさらに。

 カラクレムは、シムズの意図を察し、マーレイの手を引いて、ドームを後にした。

 円環を駆け抜けていると、アクアニウムの周辺、特にドームの外壁にエイディアンやダンタリオが集結しているのが見えた。例の音波は、効果を上げているようだ。そのまま、塔のエントランスを抜け、潜水艇のあるエアロックへと滑り込んだ。

「離れるのは危険です、マーレイさんも一緒に乗ってください」

 マーレイを一人にすれば、シムズと運命を共にしてしまうかもしれない。そう危惧しての誘いを、マーレイは小さく頷き、了承した。

 ハッチを閉めると同時に、潜水艇は潜航を開始した。やはりシムズはまだ、稼働していた。

 潜水艇はアクアニウムから急速離脱しようとするが、擦れ違うダンタリオが皆、手や触手を伸ばして、捕らえようとしてくる。不意に伸びてくる手を、潜水艇は見事な操縦で掻い潜り、アクアニウム周辺から、無事に脱する事が出来た。後は、海上に辿り着くのを待つだけである。

 やっと一息つけたカラクレムを、マーレイが神妙な表情で見つめてきていた。

「・・・カラクお兄さんに、お願いがあります」

 その真摯な目付きに、何かしらの決意を固めたのだと感じたカラクレムは、気を引き締めて、彼女を見つめ返した。

「・・・聞かせてください」



 海上では、既に空が白み始めていた。語り尽くしたエノゥとファウは、波間にあの球体が浮上してくるのを、静かにぼんやりと待っていた。 そして、警戒している様で、実は半分寝ている二人の眼前にカラクレム達を乗せた球体が、急浮上する。顔面に海水を掛けられ、二人の意識は嫌でも覚醒した。

「うぇ、しょっぱ・・・じゃない、帰ってきた!!」

 エノゥが球体へ飛び乗ると、ちょうどカラクレムがハッチを開けて、顔を出した。

「あ、エノゥさん・・・」

「おかえり、お兄さん♪」

「あの・・・怒ってます、よね?」

「うん、もちろん♪」

 エノゥはカラクレムの胸ぐらを掴み、眼前でこれ見よがしに握り拳を作ってみせた。

「あ、あの・・・罰は後程甘んじて受けさせて頂きますので、今は猶予をもらえないでしょうか?」

「う~ん・・・どうしようか、ファウちゃん?」

 エノゥが問い掛けると、ファウはジトッとした目でカラクレムを見据えながら、ゆっくりと頷いた。

「・・・で、では早速、海底で爆発が起きるので、衝撃に備えてください」

「・・・爆発?」

 エノゥとファウが見つめ合い、首を傾げた次の瞬間、突然海が大きく凹み、ボートも潜水艇も束の間、宙に浮いた。そして、鈍い爆発音が響いてくるや、寄り返しとばかりに海が膨張し、盛大にボートと潜水艇を打ち上げた。そのままけっこうな高さから着水し、衝撃で船体が大きく揺れ動いた。

「何これ~!?」

 エノゥは、悲痛な叫びと共に海中へ没し、ボートで耐え抜いていたファウは、慌ててエノゥを引き揚げに掛かった。

 一方のカラクレムは、エノゥには目もくれず、プリシーバの方角を凝視していた。

「しまった・・・これだ」

 アクアニウムの自爆は、海上を大きく揺らし、その衝撃は波紋となってあらゆる方向へと発散されていく。つまり、大波の素が生み出されたということである。それを、シムズは考慮に入れていなかった。大波からプリシーバの住人を避難させる時間を。そしてカラクレムは危惧しながらも、それに気付けなかったのである。

 手漕ぎボートで今からプリシーバへ向かっても、大波を追い越すどころか、追い付けさえしないだろう。ただ一人、大波よりも速く泳げるうる存在に、カラクレムは心当たりがあった。

「マーレイさん、お願いがあります」

 カラクレムは、潜水艇内からマーレイを引き揚げ、ハッチの縁に座らせた。

「何、カラクお兄さん?」

「あの波が到達する前にプリシーバへ向かい、住人の方に避難するよう伝えて欲しいのです」

「・・・うん、分かった。カラクお兄さんも、約束、守ってね?」

「もちろんです、絶対に果たしますよ・・・エノゥさんの名前を使って、避難を促してください。アンリヌイと言った方が通じ易いかな?」

「うん、分かった・・・行ってくる」

 マーレイはコクリと頷くと、カラクレムの外套を脱ぎ捨てながら、大海原へと飛び込んだ。それから素早い影が、プリシーバの方角へと泳ぎ去っていく。

「頼みましたよ、マーレイさん」

 カラクレムは奇跡を祈りながら、あっという間に小さくなるマーレイの影を、拳を握り絞めながら見送った。



 マーレイは、全速力で水を蹴っている。波よりも速くとカラクレムにお願いされたからだ。

 波を猛追しながら、ここ数日は色々な事が起きたと、マーレイは考える。

 二日前、初めてお家の外から出た。その昼、お姉さんに助けられた。その夕方、お姉さんに好きと言った。昨日の夜、人間のお兄さんと会えた。初めての友達が出来た。それから、お母様と話した。約束を守ったから、褒めてもらえた。だけど、お別れだと言われた。それはとても悲しかった。それから、長くは生きられないと教えられた。それは少し寂しかった。お姉さんやお兄さん、お友達と出会えたばかりだから。

 だからこそ、自分のことを好きなままでいて欲しいとマーレイは想った。出来ることは、出来るうちに何でもする。だから、自分が居なくなっても、好きでいて、友達でいて欲しい。

 ゆえに、マーレイは水を蹴り続ける。あの街に、まだ良い思い出は無いけれど、お姉さん達が大事そうにしていたのは感じていた。だから、自分も守るのだと、心に誓う。

 こんなに速く泳ぐのは初めてだ。お家の中では、泳ぐ必要も無かったから。私はこんなに速く泳げたのだと、早く自慢したかった。波はもう追い越している。街の姿が、ぼんやりと見えてきた。マーレイはさらに強く水を蹴る。助けなきゃ、お姉さんがした様に、街の人を。

 天然の防波堤を越え、湾内を矢の様に突き進む。漁港の辺りに人の姿が見えた。マーレイが水飛沫と共に桟橋へ現れると、人々から驚きの声が上がった。

 日の出と共に海から突然現れたからというのもあるが、服を着ていなかったのが大きいとは、マーレイには思い至れない。何故なら、これまでに無いほど大声を出すべく、大きく息を吸い込んでいたからだ。

「波が来る! 逃げて!!」

 必死に声を張ったが、人々は首を傾げるだけで、逃げようとしない。負けじと叫び続けていると、恐い顔の女の人が、武器を携えてやって来た。

「君はもしや・・・」

「大きな波が来るの、逃げて! エノゥお姉さんじゃなくて、あんりぬい?お姉さんが、そうしろって!!」

「アンリヌイ・・・皆、大波が来るそうだ! ハルハントの援軍にも伝えろ! 高台へ退避するぞ!!」

 恐い顔の女の人、ライエナが一喝すると、人々つまりは自警団員は大急ぎで走り回った。

 マーレイは、ライエナからマントを着せられ、それから手を引かれて坂を登り始めた。

 それから程無くして、大波がプリシーバへ到達した。防波堤で勢いは削がれたものの、プリシーバの二段目にすら届きそうになっていた。南区は壊滅的な損害を受けたが、死傷者は一人も出なかった。一人の勇敢な少女のおかげで。

「感謝する、エイディアの姫。君が教えてくれなければ、我々は全滅していた・・・伝説と同じく、我々を守ってくれたのだな。君こそが今上の、海の女神だ」

 ライエナは強面ながら、マーレイに笑い掛けた。



 カラクレム達が、プリシーバに辿り着いたのは、大波襲来からしばらくしての事である。

 エノゥとファウに散々説教を食らってきたカラクレムは、南区の被害に生唾を呑んだ。ほとんどが、更地になってしまっている。これでは死者が出ていても不思議ではない。マーレイは間に合ったのだろうか。

 戦々恐々としながら、坂を登って行くと、カラクレム達は予想だにしない光景を目の当たりにする。

 東西南北の通りが交わる、通称踊り場。そこでは驚くべき事に、マーレイを奉る祭りが催されていたのだ。

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