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第六話「やっと魔法の学習が始まった」


 「えー、というわけで、私がイグルスフィア様の魔法の教師を務めさせて頂きます」


 現在、俺の手前には、見覚えのある青年が立っている。

 昨日の青年だ。昨日、俺が鉱物系の魔法について訊ねた人である。

 

 彼も、俺の家庭教師を務めるのだと知ったときは驚いていた。目は口ほどに物を言うのである。

 

 「はい、どうぞよろしく」


 挨拶を返す俺の顔は、なんとか微笑みを保とうとしているが、少しぎこちなくなっていることだろう。

 それにしてもこの青年、何だか昨日と同じ服を着ているような気がする。やはり、魔法使いは忙しいのだろうか? 顔は割とイケているのに、勿体ないことである。


 「あっ、その、服は似たようなものしか持っておりませんもので・・・・・・」


 服をまじまじと見つめる俺に気づいたのだろう、青年は恥ずかしそうにしている。

 

 「・・・・・・で、では、先ずは比較的簡単な土壁からいきましょう。詠唱文はこうです・・・・・・・・・・・・大いなる自然よ、大地よ、土よ、我に力を! 出でよ! 強固なる土の壁、土壁!」


 青年が詠唱文とやらを言うと、青年と俺の前に二メートル程の壁が出来た。

 因みにここは魔法師団訓練所なので、一応、土魔法用の土スポットが隅の方に有り、そこで訓練しているわけだが、俺達以外に土魔法を使おうとしている者達が居ない。地味なので人気が無いのだろうか?


 「ではイグルスフィア様、詠唱を」


 「む、ではいきます。大いなる自然よ、大地よ、土よ、我に力を! 出でよ! 強固なる土の壁、土壁!」


 青年に促されて詠唱をし、それが終わった瞬間、俺の腕の中で何かが駆け巡り、手の平に集まった。

 これが所謂、魔力というものなのだろう。ラノベでも、確かにこういった描写をするものは有った。

 

 「うあぁ、不思議な感触が・・・・・・」


 「おお! これは立派な壁ですね! 初めて魔法を行使するのにこんなに良い壁をお作りになられるとは、やはりイグルスフィア様は希代の天才であらせられるようだ」


 青年が、俺が作った三メートル程の壁を盛大に褒め称えているが、そんなことはどうでも良い。

 魔力が体を流れた、ということは、その流れを上手く掴み、自由に魔力を放出できるかもしれない。

 ラノベではそういうのも有った。


 「・・・・・・感覚を研ぎ澄ませ。魔力だ、魔力」


 完全にラノベが異世界の取説になっているが、そんなことを気にするまでもなく、俺は体内の流れに意識を集中させた。

 だが、一向にそれらしきものは掴めない。


 どうすればいいものか・・・・・・・・・・・・あっ、そうだ、念じてみれば流れるかもしれない。


 「うむむむ・・・・・・魔力よ、我が手に・・・・・・・・・・・・ん、おお? 来たのか? これがそうか?」


 「あのぉ、イグルスフィア様・・・・・・」


 数秒間、迫真の念を込めていたら、俺の腕に、最初は弱々しく、だが徐々に大きく魔力が流れ、手の平に熱いものが集結した。

 どうやら、俺の考えは当たりのようだ。


 「おぉぉぉぉっ! 来たぞ・・・・・・これで俺は異世界で俺TUEEEが出来る・・・・・・!」


 「お、おれつええ? あの、イグルスフィアさ「はいなんでしょう!!?」


 テンションが上がりすぎた俺は、空気になっていた青年の呼び掛けに少し食い気味に答えると、引き気味な青年の顔を見て、一気に通常の状態へと戻った。


 「・・・・・・ええと、それでは授業の続きを行います。では、次は水球を試してみましょうか」


 そう言うと、彼は土壁の時と似たような詠唱文を読み上げ、手の平にソフトボール大の水の球を浮かべた。

 ありがちではあるが、無詠唱を試してみるのには最適だ。

 

 やってみよう。


 俺は右手を前に出し、先程のように魔力を手の平に集め、青年が出したようなソフトボール大の水球をイメージしてみた。

 すると次の瞬間、イメージしたのと寸分違わぬ大きさの水球が、俺の手の平の先に現れた。


 「おっ、出来た! 後はこいつを・・・・・・飛ばす!」


 早速、出来た水球を適当に人のいない方へ飛ばすのをイメージしてみると、然程速くは飛ばないものの、イメージした通りに飛んでくれた。

 やったぜ。


 「あわわわ・・・・・・なんてことだ・・・・・・・・・・・・」


 ふと、横にいる青年を見ると、顔面蒼白していた。

 魔法の無詠唱行使が珍しい、というか、そんなことが出来る者は恐らく、歴代に数える程しか居ないであろうこの世界で、目の前の少年がいきなり無詠唱行使なんてやり始めたら、それはそれは驚かれるだろう。

 でも、そんな化け物を見るような目はやめて欲しいな。


 「はぁ・・・・・・いや、驚いてるのは分かりますがね? そんなに顔を青くしなくても良いじゃないですか」


 溜め息をつくのと同時に、俺は後悔した。

 何故、人前で興奮して闇雲に無詠唱行使なんてしたのだろうか? 転生者に有りがちなチートに興奮したからだ。

 チートか・・・・・・。そうだよなぁ。魔神とか人外とか言われる程の魔力に、手に魔力を集めて、行いたいことをイメージしただけで魔法が使える、まさに異能とでも言うべき、バカみたく強い能力。よくよく考えてみたら、少しも笑えない気違い能力である。

 ラノベで読んだ異能は、とても面白かった。だが、リアルでそれをやったら絶対気持ち悪いし、恐い。

 

 やっちまった感が俺の精神を洪水のように襲った。

 

 「・・・・・・」

 

 「・・・・・・」


 しばらくの間、俺と青年の間には沈黙が続いた。

 ジットリと、背中が嫌な汗で濡れるのを感じ、何とかしなければ、と思うものの、もう何も喋ることが出来ない。

 それは青年も同じようで、非常に気まずい雰囲気が漂っている。


 だが、その緊張感は一気に崩壊した。その原因となる人物が、土魔法スポットに、ひょっこりと姿を現したのだ。


 「魔法の授業は上手くやっているかな?」


 王が現れたのだ。その横には高級そうなローブを羽織ったおっさんが立っている。



遅れてしまいまして申し訳有りません。

いやーそれにしても、良いですよねチート。主人公は弱いより、ある程度強い方が良いとおもいます。


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