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第五話「家庭教師が付くらしい」

少し長いかもしれません。一話につき、千五百字程を目標にしておりますが、少なくなったり多くなったりします。どうかご了承ください。


 「・・・・・・・・・・・・ん、もう夜だな。そろそろ晩飯・・・・・・え”!?」


 ごろごろしているといつの間にか寝てしまっていて、すっかり夜になっていた。

 いや、それ自体は然程大した問題ではない。だが、寝ている俺の腕や下半身に・・・・・・ねっとりと絡み付く生き物がいた・・・・・・・・・・・・。

 アイリス姉貴だ・・・・・・もうやだこの人・・・・・・・・・・・・。


 「ん~イグルおはよう。むふふふふ、イグルの匂いはやっぱり「いやいやおかしいだろアンタ!」え・・・・・・?」


 「精神状態おかしいよ・・・・・・いくら弟が可愛いからってこれは無いでしょう。おれ・・・・・・私より年上なんですから、その辺の分別はつけないと駄目ですよ」 


 一喝したら泣きそうな雰囲気になってきたので、今度は優しく諭してみたら、どうやら泣くことは避けられたようだ。

 だがよくよく考えてみると、十代後半辺りなら完全にアウトだが、十歳以下なら結構許されるのかもしれない。

 あれ? もしかして・・・・・・アイリス姉貴は本当にじゃれついていただけだったり?

 それなら非常に申し訳ないことをしてしまったやもしれない・・・・・・。


 「だって・・・・・・私はイグルのお嫁さんになると決めたのに・・・・・・・・・・・・」


 俺が心中で猛省していると、姉貴は肩を震わせながら、そう、小さく呟いた。

 この場合、異常性愛と言うよりは、小さい女の子が「パパのお嫁さんになる!」みたいなことを言い出すのと同じだろう。

 いや、前世の俺だったら、こんな美少女に求愛されては下の方が黙っていなかっただろう。たとえそれが自分の姉だったとしても。

 だが、今の俺は何故だか分からないが、前世のように性欲の化身を背後に漂わせてはいない。まあ、それは場合にもよるだろうが、とにかく姉貴にたいして性的感情を抱く事はない。

 もし、王子と王女が男女の関係だということが世間にばれでもしたら、王家の権威は失墜するだろうし、今の俺は恐らく五歳。まだあまり性的興奮などがーーー前世の俺にはこの頃からバリバリあったがーーー無い。

 

 前世と今とで俺の性格や気質が違うのは多分親の遺伝か何かだろう。


 「そうですか、それは仕方がありませんね。では、私が二十歳になったら結婚しましょうか」


 俺が肩を震わせている姉貴を優しく抱き寄せると、下を向いていた彼女は顔を上げ、微笑んだ。了承の印だろう。

 

 こう言うのも何だが、バカなものだ。二十歳にもなれば、互いに相手を見つけるか、忘れているのに。

 前世での十歳の頃の俺だったらこんな簡単な手口こどもだましはすぐに看破できたぞ。


 「では、そろそろ夕食でしょうから、食堂に行きましょう。」


 そう言って、俺達は食堂へ向かい、豪勢で、尚且つヘルシーな夕食を摂ったのであった・・・・・・。

 途中、姉貴が例の戯れ言を両親に言ったところ、両親の顔が一瞬引きつった事を俺は忘れない。 


   ◇◇◇




 「いやぁ、やはり宮廷の料理は素晴らしい。俺の作った卵かけごはんと同じくらいうまい」


 「タマゴカケ・・・・・・? まあいい、それよりもイグル、お前に大切な話がある」


 夕食後、メイドさんがくれたハーブティーを自室で啜っていると、父親が何処からともなく現れた。

 なんだかこの宮廷の人達は、何処からともなく物を出したり、現れたりするのが大好きなようだ。

 普通に怖いんだよなぁ・・・・・・。こんなんお茶吹き出すわ。


 「うぷっ!? とうさ・・・・・・父上、その、大切なお話とは一体何でしょう?」


 「なあ、お前午前中何処に行っていた? 魔法師団訓練所か? いや、そうだよな。私は知っているんだぞ」


 「・・・・・・そうですけど」


 「そうか、では単刀直入に言う。お前は魔神のような魔力量を保有している。それは非常に素晴らしい事であり、お前は人間国宝になれる。いや、なれるかもしれない。というのも、急遽、明日からお前に家庭教師が付く。みっちりと魔法を仕込んでもらえ」


 「魔神、ですか。それに家庭教師? ・・・・・・・・・・・・まあ、頑張らせていただきます」


 恐らく今、父には俺の疲れた顔が見えていることだろう。

 魔法の学習とは本来、もっと広い場所で、尚且つ一人で本でも読んですべきなのだ。少なくとも俺のラノベ知識の中ではそういうものだと相場が決まっている。

 しかし、ここは宮殿。どこでやるかと言えば、恐らくはあのショボい訓練所だろう。


 あれ? もしかして・・・・・・・・・・・・王族って結構貧乏くじだった? あぁ、そうかもしれん。

 いや、飯は上手いけどね、飯は。

 それでも、よくよく考えてみたら、もしかしたら俺が王様になるのかもしれないし、そうでないにしろ、適当に公爵か何かにされて、領地に縛られて終わるだろう。楽しい楽しい執務生活の始まりだ。

 

 嫌だ! 俺はそんなゴミのような人生を送るために嬉々として異世界にやってきたのではない。

 違うだろ!? 異世界と言えば、もっとなんかこう・・・・・・魔法バンバン撃って、剣ブンブン振って、魔物を倒して、やったぜ。っていう感じの、科学なんぞに縛られている地球では出来ないような事をするものだろう?


 俺は感情を抑えきれなくなりそうだった。だがそれは仕方の無いことである。自らの将来を案じるのは人間として当然の事なのだから。


 「では、私は執務に戻るのでな。おやすみ」


 「少し待ってください」


 俺はさっさと部屋から出て行こうとする父親を引き留め、王位や爵位から身を引きたいという意思を・・・・・・


 「あ、えー・・・・・・・・・・・・家庭教師の方はどんな方なんでしょう?」


 「うーん、真面目な者だと聞いているな。では、さらばだ」


 伝えられなかった。そんなことが出来る訳がない。

 

 俺は父親が部屋から出たのを見ると、自分が嫌になり、ベッドにボフン! と勢いよく突撃を敢行した。


 「だあぁぁぁぁぁぁ! なんで、なんでだよ!? なんで王家? 特典だぁ? なんだそんなもの!」


 俺は枕に顔を突っ込んで叫んだ。

 俺の考える異世界ライフとは、こんなものではないのだ。


 「はぁ、もういい。寝よ・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


 転生一日目ということもあり、少し疲れた俺はさっさと寝ることにした・・・・・・・・・・・・







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