第三話「魔術師団訓練所にて」
朝食を摂り終えた後、俺は暇なので、別に何をするわけでもなく、フラフラと宮殿の中をさまよっていた。
途中、執事風の男がいたので、試しに見取り図をくれと言ってみたら、何処からともなく取り出してくれたので、それを見ながら歩いているのだが、なかなかどうして広いものだ。
王の住まう場所と言うだけはあるようだ。
「宮廷魔術師団訓練所か・・・・・・うむ、ここで見学でもするとしよう」
俺は結構歩き回り、宮殿の後ろの方にある訓練所まで辿りついていた。
樫のドアを非力ながらも頑張って開け、やっとのことで見えてきたその部屋の内部を見て歓喜した。
訓練所内部には、名前の通りに魔法の訓練を行うところと、更に研究所まで付いていた。
「おや、これはこれは、イグルスフィア様では御座いませんか。このような所へいらっしゃるなど、珍しゅう御座いますな」
室内、というか館内に入ると、ダンディなおっさんが話しかけてきた。相手は俺のことを知っているようだが、俺はおっさんのことを知らない。
やれやれ、困ったな・・・・・・・・・・・・。
「あー、えっと・・・・・・そう! 私は魔法に大変興味を抱いているのです。ですので、少しばかり見学をさせて頂ければと思って来ました」
「左様で御座いますか。では、ごゆるりとなさっていってください」
「・・・・・・どうも」
・・・・・・案外、相手のことを知らなくてもなんとかなるものだ。学ぶことが多いな。
俺は転生してから二度目の難題を上手く切り抜けたことに安堵しつつ、先に訓練所の方から覗いてみた。
若い者からベテランまで、様々な者が魔法の訓練をしている。
ただ、室内ということもあり、あまり火力は出せていないようだ。想像してたのよりもしけてる。
「失礼、そこの方。少しよろしいですか」
土壁で水球を防いだり、砂を風で舞い上げてみたりなどという、非常にダサい訓練を見兼ねた俺は、手前にいる青年を呼び寄せてみた。
「はい、何でございましょう?」
声を掛けられた青年は、すぐさま魔法の行使を止め、俺のもとへやって来た。
「ここの訓練風景を見ると、全体的に火力が不足していると思うのですが、その辺はどうなんでしょうか?」
「え、あ・・・・・・その、やはり室内ですし、宮殿の後方に位置していますので、あまり高威力ですと・・・・・・万が一にでも火事や事故を起こしてしまったら、収拾がつきませんので。」
とても四、五歳の子供が言うこととは思えなかったのだろう。青年は俺の発言に少し動揺していた。
では、もっと壁を強化したりはしないのだろうか? 俺のラノベ経験則に基づくと、オリハルコンやミスリル、アダマンタイトなどが有る筈なのだが。
「壁の強化などは? 鋼鉄や特殊な金属などでコーティングを施したり」
「それは・・・・・・一応今も鉄でコーティングしてはおりますが、それほど信頼は出来ませんね。特殊な魔法金属、主にミスリルやオリハルコンなどがありますが、館内すべてをコーティングとなりますと、結構かかりますね」
とりあえず俺の予想は当たっていたようだが、やはり時間と労力が掛かる。そこら辺はラノベでもそういう感じだったが、まかせておけ。前世で俺はラノベを愛読していた。そしてその中でも異世界転移・転生系が一番の大好物だった俺に死角は無いっ!!
「そうですか。でしたら私によい考えがあります」
アレいくか。
「地中の鉱物を探査したりする魔法はありますか?」
「ああ、そういうのならありますよ」
これで勝てる。これさえあれば、魔法金属に貴金属、何でもござれだ。
「あることはあるのですが・・・・・・・・・・・・なにせあれは超魔級土魔法でして・・・・・・」
え、超魔級って確か・・・・・・あっ・・・・・・ふーん。
超魔級ですか・・・・・・えい↑ゆう↓ですよね。
王道を征くのか・・・・・・