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神霊写心 プロローグ

夏も近づく八十八夜。せっかくの満月は雲に身を隠し、街は文明の光で満たされていた。君は部活の帰りにあることが思い当たって神社へと寄り道した。

「日曜日の試合、勝てますように。神社の神様お願いします!」

正直な話、神社の神様という阿保らしい言葉は言うべきか一瞬迷ったが、この神社が何を奉ったものか知るはずもなく、また、何も言わないよりはいいかと考えた君は出来るだけ元気よく叫んだ。


そして、君は今カメラを手に取っている。神社の鳥居をくぐる時、たまたま落ちていたのを見つけたのだった。

「なんだかやけに古い型のカメラみたいだ。」

そのカメラはレンズが所々欠けていて、塗装もかなり色褪せた状態だった。とても写真を撮れそうには見えないし、そもそも神社で拾ったものをお持ち帰りというのも罰当たりだと思った君は、近くの交番を目指し歩き始めていた。


パシャリ。


その時、カメラのシャッター音が夜の小路に鳴り響いた。

「あれ、どうして、シャッターには触れていないはず…」

ポンと肩を叩かれ、君は振り向く。そこには奇妙な出で立ちの人物が立っていた。人物、と言うにも理由があり、その顔付きは青年のような、老婆のような、幼子のような、とにかくこれと決めつけることのできないものだったからだ。


「誰…いや、どなたでしょうか?」

「元気な学生さん。私は君の言う、"神社の神様"に当たるものだ。」

君は驚きというよりは不信感の方が先に表れ出た。もしや、さっきの阿保の遠吠えを聞かれていて、からかわれているのではあるまいかという焦燥が、君の表情を歪ませた。

「やはり、唐突に出てきてそう簡単に信じてはくれないか」

仕方ないなと呟いたその人物はカメラを指差して話を続けた。

「私にもあまり時間が無くてね。用件だけ言おう。そのカメラを使って、様々な人の写真を撮って欲しい。それじゃ、頼んだよ」

あまりにも唐突すぎる。一体何のつもりでこんなに自分をからかうのかと、君はますます疑いの気持ちを深めてしまった。しかし、それと同時に、ただからかっているわけでも無さそうだという思いが君のなかに生まれた。


「あ、お帰りー。なんかいつもより遅かったじゃん」

さて、呆然としながら家にたどり着いた君は、手にも持ったカメラをどうする?


そのカメラで目の前の弟を撮影する→神霊写心 1へ

やっぱり交番に届ける→神霊写心 2へ


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