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プロローグ 行く先

「お兄ちゃん… 何やってるのかな…」

「腹筋!」

「見ればわかるよ!! どうしてそんな事してるの?」

「強くなりたいから」

「…」


 妹の質問攻めを振り払い。

 筋トレを続ける。


 今は強くなる為、誘惑を断ち切る。

 イメージするのはワグナリアが見せた肉体美。

 あれに近づく事。 いずれはあれを超える事である。


「さっきも言ったけど、そんな事しなくても強くなれるよ。

 お兄ちゃんは私と同じ神の血を引いているの。

 そんな事しなくたって最強とか目指せちゃうんだから!」

「それは違う! こういうのは積み重ねが大切なんだ。

 見てみろこの体… 貧層にも程がある。

 この何処が最強だって言うんだ?」


 服をずらし腹をクスラに見せる。

 そこには、幼い少年に良く似合う、ぷっくらとしたお腹が姿を見せていた。


「な、なにするの! お兄ちゃん!」


 声を上げ抗議するクスラ。

 その顔が、ほのかに朱に染まっている。


「悪い、こんなみっともない体、見たくもないよな…」

「別に… 見たくない訳じゃないけど…」

「何か言ったか?」

「何も言ってません!!」


 そんな、くだらない会話を他所に僕は筋トレを続けていた。


 今、僕達が居るのは荷馬車の中。

 それを引くのは大きな一つ目が特徴的なワグナリアさん。

 彼はもくもくと歩みを進め、目的の場所を目指している。


 男は背中で語ると言うが… 

 ワグナリアさんの雄姿を目に焼き付けながらの筋トレ。

 それは、なかなかに乙な物であった。





 …僕の正体。

 妹から聞かされた話。


 邪神ノクスラ… その忘れ形見。

 神の力を持つ人間。 半人半神。 それが、僕ノクスの正体。

 そして、妹クスラの本性である。


 と… 言われてもな。

 実感が湧いてこない。


 自分を見渡す。

 身長や体型から想像するに10歳にも満たないのではないだろうか?

 そんな幼さで、こういった思考や知識が有る事自体、特殊な事例なんだろうが、それでも神とは程遠いと思う。


 でも、ワグナリアさん。

 彼は妹に顎で使われていた。

 今もクスラの命令で荷馬車を引いている。

 それを当たり前のようにこなしている。


 彼は魔族だ。 母さんの残骸から生まれた種族。

 妹が言うには、母さんの因子により、僕達に服従する様に出来ているのだとか…

 まるで魔族が物であるような言い方をする妹。

 僕はその話を聞いている間、あまり良い気持ちがしなかった。



 荷馬車が向かっているのは、クスラが造った隠れ里。

 僕は目覚めたばかりだが、クスラは少し前から活動を開始していたらしい。

 クスラは僕が眠っている間に魔族が中心に生きる里を造っていたそうだ。

 詳しい目的までは教えてくれなかったが、全ては僕の為と語ってくれた…


 妹の献身に感謝が絶えない。 寝坊助な兄を許してほしい。

 せめて、これか送るクスラとの生活では、彼女の支えに成っていきたい。

 苦労するかもしれないが、家族水入らずの生活。 

 ヒッソリとした隠れ里での生活。 良いじゃないか。

 期待に胸が膨らむ。

 腹筋のペースも上がると言うものだ!!






 しかし、僕の期待は見事に裏切られる事になる。

 荷馬車が進む先に待っていたのは、ヒッソリとした隠れ里での生活… ではなかったのである。

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