プロローグ 妹
気付けば… 妹に手を引いかれていた。
…妹?
良くわからないが… 彼女の事をそう認識できる。
その手はとても暖かく、放してしまうと体が凍える様な気がした。
だから、彼女の手を離さない。
いや、彼女が手を離してくれない。
意識が朦朧とする中、手を引かれ僕達は道なき道を進んでいく。
足が… 痛い。
痛みで意識が覚醒し、周りを見渡す余裕が出てきた。
そして、その孤独は始まる。
辺り一面の木。 木。 木。
僕達、兄妹を包むように深い森林が行く手を阻んでいた。
木々から茂る葉に邪魔され、辺りは薄暗い。
もしかすると、今は夜なのかもしれなかった。
いや、そんな事より。
「クスラ! ここはどこ!」
妹の名前と疑問を叫ぶ。
「お兄ちゃん。 大丈夫だよ。 向こうに人の反応がするから」
人の反応… 何を言っているんだ? 妹よ…
…妹が、電波な事を口にしている。
森の中を歩き続けて、気でも狂ったのだろうか?
お兄ちゃんが何とかしないと…
「クスラ!」
慌てて、妹の肩をつかんだ。
それは、とても小さな肩。 力を込めれが崩れてしまいそうな、そんな肩だった。
手をつないでる時点で気付くべきだった。
妹は… とても幼かったのだ。
そして、その幼い体に目線が合う僕も… とても幼かった。
状況が分からない…
分かるのは妹の存在と、今の状況が不味いと言う事だけ。
周りには父と母の姿はなく。
僕達は完全に孤立している。
あれ…、父と母ってなんだっけ?
言葉の意味を理解してるのに、実感がわいてこない。
それはとても、空虚な気持ち。
考えるだけで、寂しさが浮かび上がって来る最低の行為だった。
青ざめる僕を妹が見ている。
そして…
「大丈夫。 お兄ちゃんは私が守るから」
妹から抱擁を受けていた。
それはとても、落ち着く行為。
手をつないでいた時のぬくもりが、そこにはあった。
自然と涙が溢れだしていた。
胸を締め付ける孤独が少し和らいでいく気がする。
この温もりを信じてみよう、そう思う事が出来た。
ただし… お兄ちゃんにだって意地があります。
妹に進む方角を教えて貰い、先を歩く。
それは僕の役目だ。
僕が彼女を守る、そんな意識が芽生えていた。
思えばこの時、僕は強さを意識する様になったんだと思う。
それは傍から見ていると微笑ましい光景。
しかし、僕は真剣だった。
暫く歩くと、光が差してきた。
森の葉の隙間が広がり、日の光を受け入れている。
僕と妹は駆け出した。
森の切れ目に向かって行く。
その先に待っている、出会いがあるとも知らずに…
巨漢… そして、一つ目。
そこには、想像だにしない化物が存在していた。
こちらを睨みつけ、何かを唸っている。
とっさに妹の手を握り、僕は彼女の前に出ていた。
2016/1/11 修正
●サブタイを修正
出会い → 妹
次の話のタイトルと間違って投稿… 申し訳ございません。