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意志をつぐ者  作者: 花咲 匠
混沌の始まり
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第六話 訓練所へ帰ろう

 「おーい、連れて来たぞ~」


 ワタルが開きっぱなしのドアをくぐりながら、コータに向けて呑気に言う。誠二もその隣で疲れた顔をして立っている。ここに来る間に、3年生の先輩方に質問攻めにされていたのだ。その点、ワタルは説明を端折って見たらわかると言っていて、賢い選択かもしれない。

 説明をされた人もそうでない人も、後ろの1年生や3年生は、破壊された向かい側の壁を見てヒソヒソと後ろでざわめきを漏らす。

 本来なら窓があるはずのその場所には何もなく、空が広がっているだけだ。

 曇天だった空は、ウェンティを倒したからか雲の切れ間から紅い夕日の光が差し込んでいて幻想的だった…………壁が破壊されていなければの話だが。


 「おい、なんだアレ?」


 「怪物の襲撃があったんじゃない?」


 「にしても、ヒデェな。俺たちと当たらなくて良かったぜ」


 「それな。つーか、アイツ誰だ?」


 「あ、ホントだ。誰だ、あれ?」


 ざわめく生徒達の声が聞こえたのか、斉藤が一歩前に踏み出し、優雅に手などを添えて挨拶をする。確かに、斉藤も真っ白なスーツなど着ているものだから相当に目立つのである。


 「初めまして、訓練生の皆さん。私はシスティーナ遊軍の少将、斉藤と申します。ココの結界を張っていた者です。以後、お見知り置きを」


 その自己紹介に、生徒達はまたざわめく。遊軍とは友好的な関係を築いているとはいえ、ここにいるほとんどが関わり合いなどないのだ。悪感情ではないにしろ、困惑はするだろう。訓練所にいない少し年上の世代なら共に肩を並べて戦っていたので、そんなこともないだろうが。

 中には、明らかに猜疑心まみれの視線を浴びせる者もいた。

 そんな彼らに、コータが誤解を生まないように声を掛ける。


 「みんなっ! 斉藤さんは僕達の味方だから、安心していいよ! 僕が保障する!」


 懐疑的な視線から斉藤を庇うように、性別年齢構わず絶大な信頼(というか、好意)を持たれているコータが何度も頷き、真剣な顔で保障するので一応は敵愾心を消す。

 その空気に、心から安堵するコータ。


 自分では気付いていないが、コータは相当訓練所のメンバーに信頼を寄せられている。

自身ではそんなこと思っていないので、いくら自分が安心だと言っても、このまま争いに発展するかもしれないと危ぶんでいたのだ。


 (なんで、これだけ慕われてるのにコイツは全く気付かないんだ?)


 そんなコータを不思議そうな目で眺めるミツル。その後ろでは、ユキがコータのことをぼぉっとした顔で見つめている。


 そんなユキをミツルだけが見ていたが、見なかったことにしてそっと胸の内にしまい込む。これでユキをいじるネタができたと上機嫌で。その上機嫌は誰にも悟られることなく、年長者の中で指導者的な立ち位置にいる男子生徒が前に進み出る。


 「わかった。コータがそこまで言うのなら信じよう。みんなもそれでいいよな?」


 別に集まった他のヒトが信じないとは言っていなかったが、皆に聞こえるようにあえてそう言う。そして、全員に視線を合わせながら、みんなの方に振り向きながら確認を取りつつ言う。


 言葉を発した後でコータに微笑む、一つ上の先輩である岡田蓮(おかだれん)は《戦いの意志をつぐ者》の総長である。コータの剣の師で、かなりの実力者だ(今は、元々に天才的なセンスがあったコータに腕を抜かれたのだが)。

 正面で向き合うと女性が赤面するような、ミツルとは違ったおもむきのイケメンで非常に温厚な性格である。

それ故に、初対面のヒトには《美の意志をつぐ者》とよく間違われる。

因みに《美の意志をつぐ者》というのは、総じて見事に美男美女だらけで、よく新人相手にイイ話ネタとして扱われるのだ。


そんな蓮が、コータに同調したとあれば、イヤと言うヒトはいない。


「…………コレにミツルがいれば、軽い詐欺ならいくらでもできそうな気がするんだよなぁ」


 (シャレにならないよ、その例え…………)


誠二がボソッと呟いたが、その声が聞こえたコータは聞こえていないフリをして話し出す。


「みんなっ! 急で悪いけど、斉藤さんを訓練所まで護衛するから5,6人の班を作ってくれないかな? まず、俺とユキと蓮兄れんにぃとミツルとミホ、それにカオリは斉藤さんを直接守る部隊ね! それから―――」


声を張り上げてしっかりと全員に聞こえるように言い、ここにいるメンバーの中で実力のある者を同じチームにする。

 次々とチームを決めていくコータの決定に、皆それぞれ頷き、周囲の人達とチームを組み始める。基幹となるメンバーだけを決めて、他のメンバーを充てる方式だ。

 普段のチームだと戦力的に不安なチームも何個かあるので、それをばらけさせて戦力の均等化を図るためだ。基幹となるメンバーだけ先に決めるのは、他のメンバーと連携が取りづらく、同じチーム同士でないと戦えない者を一緒にするためだ。

 訓練所では、誰とでも一緒に戦えるように訓練をするのだが、それができない者もいるのだ。


 「わかった。じゃあ、全体の指揮は俺が執る! 副官はカオリだ」


 「りょーかい」


 「「「わかったっ!」」」


 訓練所の決まりにより、こういう臨時のチームを組むときは、一番の年長者の総長が全体の指揮を執ることになっていて、副官はその指揮官が自分で決められるようになっている。


 カオリは戦術を立てるのが上手だと自他ともに認めているので誰からも反論は出なかったが、その気の抜けた返事に顔をしかめる女子が何人かいた(ミツルと違い人当たりのいいイケメンの蓮を軽んじたような返事だったため)もっとも、本人は気にしていないようである。


 だが、ここで思わぬトコロから反論が出た。


 「ちょっと、待てぇぇぇぇいいいい!!!!」


 ワタルが憤慨した様子で叫びながら、ずかずかと肩を揺らしながらコータの前に近寄ってくる。

 そして、コータの胸の中心に指をあてて、一言一句、強調しながら言う。


 「なんで、俺が、ミホと、同じ、チームじゃ、ないんだっ!!」


 「えぇっ!? そんなコト言われてもなぁ、だって、ワタルはミホより弱いじゃん?」


 魂からの叫びを発するワタルに、悪びれも無く言ってのけるコータ。

 その言葉にはこの場にいる斉藤を除く全てのヒトが頷く。中には、そりゃ仕方ないだろう、というカンジで憐れみの目も見える。

 そんな視線の中、ワタルよりも早く動いたのはミホだった。素早く近寄り、簡単にワタルの後ろを取る。


 「仕方ないよ、ワタルなんだから」


 肩に手を置いて、真面目な顔で言うミホ。

 そんなミホに、振り向いて目尻に涙を浮かべ泣きそうな顔をしたワタルだったが、なにやらミホに小さく耳打ちされた。

 その直後、ワタルの顔が喜色満面の笑みになり、嬉しそうに頷いている。


 「単純なヤツだな」


 「いつも通りだろ」


 「あぁ、確かに」


 バカにしたように言うミツルに呆れて返す誠二とコータ。

 どんな内容かはわからないが、ワタルにとってはイイことがあったに違いない。みるからに回復したワタルは、チーム決めを嬉々としてやっている。


 「さてと、俺も向こうで決めてくるわ」


 誠二がそう言い、チームを決めているメンバーの下に走り、自分もその中に入る。


 その後、約5分後に全チームが決まった。

 基本は同じ学年の仲のいい者同士で集まってチームを組んでいる、もしくは元々同じチームのメンバーが揃っている。

だが、誠二とワタルはコータとミツルと同じチームなので、自然と仲の良いヒトとなるはずだったが、どうゆう運命の悪戯か、二人とも女子だらけのチームに入ってしまったのだ。

 それだけなら、まだ良かったのだが…………。


 「なんで、俺だけじゃなくて、コイツもいるんだよォォォォ!!!!」


 「なんだと、テメェェェ!! 俺が敵さんを倒してやるんだから感謝しろよな!!」


 同じチームのくせに犬猿の仲の誠二とワタルが口論を始める。

 それは誠二とワタルだけでなく、ミツルも同じく二人とは犬猿の仲であり、いつもは三つ巴の戦いみたいになっている。


 このチームのリーダーであるコータが上手く取り持っているからいつもは大丈夫なだけ(たまに、コータでも抑えられない時があるが)であり、各々で一緒になるとこのような状況になる。

 コータは常々、よく同じチームで何年もやっていられるなと思う。

 いや、ホントに。


 「弱い犬ほどよく吠えるってな」


 「んだと、ごらぁっ!!」


 「もういっぺん、言ってみやがれや!!」


 口論を始めた誠二とワタルの二人に、ミツルが皮肉を言う。

 そして、それを見過ごすわけのない二人がミツルに殴りかからんとする。

 ワタルなんかは、普段の軽い調子が嘘のように消えて、殺気の篭った目で誠二とミツルを等分に眺めている。蛇ですら睨み殺さんばかりだ。


 それは、誠二も同じであり、いつ喧嘩に発展するかわかったものじゃない。

 ミツルだけはいつもの無表情だが、どこか飄々とした態度なので、余計に二人を煽っているように見える。実際に煽っているのだが。

 そんなワタルと誠二の二人と同じチームになった4人の女子生徒(全員が1年生)はおろおろとしており、しきりにコータに救いを求める眼差しを向けてくる。


 「俺は何度でも言ってやるぞ」


 「ああん?」

 「その生意気な口を聞けなくしてやろうか…………」


 ミツルが小馬鹿にしたようにさらっというので、ワタルと誠二は今にも飛び掛らんばかりだ。

 そして、その状況に止めを刺すようにミツルが言う。 


 「もっとも、俺が弱者の相手などする気はないが」


 次の瞬間、ワタルと誠二の二人が先程のウェンティとの戦いのときよりも素早い動作で動き、二人が同時にミツルに拳を当てようとする。

 ミツルは動けずに、美しい彫像に必殺の拳が迫る。

 だが、その二人の後ろに現れた影により、二人は地面に潰えた。


 「全く、バカやってないで、早く訓練所に帰るわよっ!」


 現れた影、もといミホが両の拳を握り締め、振り切った状態で姿を見せる。

 あまりの速さに、ワタルと誠二の二人は全く反応できず、ただ強かに教室の床へと沈んだ。

 ミツルはこの女豹の出現を予測していたのだ。動けなかったのではなく、動かなかったのだ。


 「はぁ、ありがとう、ミホ。おかげで面倒ごとが回避されたよ」


 「いいのよ、これくらい。コータはいつも大変そうだしね」


 溜め息を吐きながら疲れた声音で、ミホに感謝の意を伝えるコータ。

 コータを労うように、優しい言葉で返すミホ。

 そんな状況の中、斉藤だけは驚きで目を白黒させていたが、周囲のメンバーが全員呆れたような顔つきで地面に潰えた二人を見ていたので、こんなことは日常茶飯事なのだろうと、無理やり納得する。


 「全く、おまえらは…………コータもホントに大変だな。こんなチームよくまとめられるよな」


 蓮が呆れ半分、感嘆半分といった声音でコータに言う。


 「あは、あははは」


 コータとしては複雑な気持ちなので、渇いた笑みしか出ない。場の空気が一気に緩みだすのが感じ取れる。

 この空気を払拭するように、ユキが張りのある声を発する。


 「みんなっ! 早く出ないと、夜になっちゃうよ!」


 「おお、ホントだ。もう、こんな時間か」


 「ヤバッ! …………ていうか、この壁どうするの?」


 ユキの、夜になると怪物の凶暴性が増すという習性を気にした言葉にコータとカオリが応える。怪物の中には夜間はまるで動かないものもいるが、基本的に昼間とは別物の強さを誇るのだ。

既に時計の針は4時半を指しており、いくら夏とはいえ、ここから一番近い入り口には徒歩で30分はかかるのだ。

 それに、もしかしたら怪物の襲撃もあると考えるとなるべく早くココを出たほうがいい。


 「あぁ、それなら私の部下が直しますので、あなた方は心配しなくて大丈夫ですよ」


 カオリの疑問に、斉藤が答える。

 部下がどこにいるのか不明だが、実力派集団であるシスティーナ遊軍のことだから、気配を悟らせないようなところにいるのだろう。

 そうゆう不気味なところが、避けられてしまう一因でもあるのだろうが。


 「そうか、ありがとう。じゃあ、今すぐにでも出ようか」


 コータが代表して斉藤にそう言い、自分が先に教室を出る。

 その後にチームのメンバーと斉藤が続き、他のチームも後ろからついてくる。



――――――――――――――



 階段を下りて昇降口にある自分の靴を履いてから、斥候のチームから校門を出て行く。

 チーム同士は、ミツルの情報伝達魔法コミュニケーションラインによって、連絡が取れるようになっている。

 ここにいる全員に通信チャンネルを広げることもミツルの魔力量なら可能だが、そうすると通信が混雑するので各班の班長にしか通信は繋げていない。

 雑多な通信は指揮系統を混乱させるというのは戦場の常である。

 次々と間隔をあけながら(しかし、すぐに駆けつけられる距離で)チームが出て行ったが、最後の1班が辺りをキョロキョロしながら、立ち止まっていた。

 女の子が4人だけで固まっていて、そんな班はさっき作られていなかったハズだと思い、コータが不審そうに近寄った。


 「アレ、君たちはどうしたの?」


 「あの~、それが誠二さんとワタルさんがどっか行っちゃって」


 確かに良く見るとさっき誠二たちと同じチームになった女の子達だった。

 その中のおろおろと困惑している女の子を抑えて、責任感の強そうなキリッとした目の黒髪の長い女の子がコータの前に進み出てきた。


 「ちょっと! なんで、あの人たちがいないのよ!」


 「ちょっ、やめなって、サキちゃん」


 外見から示されるように責め立てるようにコータに言うサキちゃんと呼ばれた女の子に、近くにいた大人しそうな雰囲気の子が腕を掴んで止めさせようとする。

 コータといえど、訓練所全員と仲がいいわけではない。さすがに顔は全員知っているが、名前もわかるかと言われれば、必ずしもそうではない。

 そもそも、コータは名前が覚えるのが苦手なのだ。


 「なんでって、僕に言われてもなぁ。もしかして、まだあそこでノビてるんじゃない?」


 優しく、諭すようにサキちゃんに言うコータ。落ち着かせるために殊更に優しげな口調にしたが、逆効果だったらしく、またも責め立てるような言葉が返ってくる。


 「なんでって、あなたは同じチームのそれも隊長なんでしょ!? それぐらい把握できてなくてどうするのよ!」


 「いやぁ~、それは面目ないです、はい。でも、なんだかんだいってちゃんと来るから大丈夫だよ」


 サキのごもっともな意見に、頭を掻くコータ。正論を言われると耳が痛いのだが、それはコータにではなく当事者たちに言って欲しいとどうしても思ってしまう。

 その態度が気に食わなかったのか、さらに何か言おうとする。


 「くぅっ!! これだから――」


 「サキちゃん、そのへんにしてあげて? コータだって悪気があるわけじゃないのよ」


 「でも…………」


 尚も言い募ろうとしたサキにユキが間に割って入る。男子だけじゃなく、女子からも人気の高いユキが入ってきたことで、サキの勢いは減じられる。

 そのコータを庇うような姿勢に、心を囚われたコータは無意識のうちに視線が釘付けにされる。コータは見た目も良いし、周囲から信頼もされているので、周りから悪印象を持たれることはない。これがそこらのちょっと冴えない男子とかだったら、女子達から蔑むような視線を向けられること間違いなしだ。

 それほどユキが美人だということもあるのだが。


 (うわっ、女神だっ!?)


 考えるまでもなく、ユキを形容するにふさわしい言葉が浮かび上がるコータ。至近距離でユキを見つめていたため、軽い硬直にかかる。こうしていると夢のような幻のような最高の時を過ごせるのが、上から降ってきた二つの聞き覚えのある声に現実に引き戻された。


 「うわああぁぁぁ!!!?」

 「テメェらァァァァ!! 俺を置いていく気かぁっ!?」


 上空を見上げると、窓から飛び降りたのか、上から降ってくる誠二とワタル。

 その二人を視認してから、悪戯っぽい顔をしてサキを見る。いくら温厚なコータといえども、たまには意趣返しをするのである。


 「ほらね、ちゃんと来たでしょ?」


 「―――っ!!」


 「痛いっ! 何でっ!?」


 笑顔と共に発せられたコータの言葉に、顔を真っ赤にしたサキがコータの腹めがけてパンチを繰り出し、肩を揺らしながら早歩きで去って行ってしまう。

 避けることもできたが、後が怖そうなので素直に喰らったが、やはり痛いものは痛い。


 「オイ、テメェら! なんで、俺たちを起こしてくれなかったんだよ!」


 「あぁ、すっかり忘れてたわ」


 「忘れてたっ!?」


 「早く行かないと遅れるよ?」


 見事に空中で一回転をして危なげも無くコータの眼前に着地したワタルが、開口一番、怒鳴り声を上げる。

 その怒鳴り声に、後ろにいたミホが平板な声音で答え、コータが前に既に歩き出したサキのチームを指差しながら忠告する。


 「あっ、ヤベっ! 行くぞ、ワタル!」


 「お、おう! じゃあ、また後でな、ミホ!」


 「はいはーい」


 駆け出した誠二の後を、慌てて追いながらミホに別れの挨拶をするワタル。

 そして、それに適当に答えるミホ。ワタルはぞんざいに扱われたことにより少しショックを受けていたようだったが、いつも通りなのでミホは歯牙にかけない。

 ワタルたちが出て行くのを確認してから、蓮が自分のチームに声をかける。


 「よし、じゃあ行くか。いつも通り、俺とコータが前衛でミホとユキが中衛、後衛はミツルとカオリに任せる。斉藤さんは中衛に入ってください」


 自らのチームのバランスを考慮して配置を決めていく蓮。相変わらず無難でお手本のような配置である。

だが、淡々と配置を決める蓮に意外そうな声音で斉藤が意見を申し出た。


 「私も戦列に加わるのですか? 部外者の私なんかを入れて、連携は大丈夫ですか?」


 斉藤は、自分が戦闘に加わざるを得ない配置になって、元々の知り合いなメンバーの連携の邪魔にならないかと危惧しているのだ。

 その危惧は当然である。《意志をつぐ者》たちの中で実力者が揃っていて、かつシスティーナ遊軍で少将に就いているとはいえ、いくら個々の力が強くても連携が上手くいかなければ、その真価が発揮されることはない。

 場合によれば、独りで戦った方が強かったりもするのだ。

 だが、そんな当然の危惧に、蓮は笑って答える。


 「大丈夫ですよ。俺たちは遊軍のマニュアルも全て学んでいますから」


 「なるほど。なら、こちらこそよろしくお願いします」


 遊軍全体の兵士が学ぶ「動き方」の訓練書(マニュアル)を学んでいるという言葉を聞いて、安心して律儀にもお辞儀をする斉藤。

 コータとしては、彼の上司にあたる鷲目(わしのめ)大将を知っているのだが、眼前の律儀で誠実そうな彼とは似ても似つかないので、終始驚きっぱなしである。

 その鷲目大将というのが、お調子者で人格者とは言い難く、遊軍という組織そのものを疑うほどの人物なのだ。それがごく一部であると知ることができただけでも今日の邂逅は意味があったと思える。

 驚いているコータを尻目に、蓮が歩を進める。


 「いつでも、抜刀できるようにしておけよ」


 臨時パーティーのリーダーである蓮が皆に注意喚起をして、頷くの確認してから、校門の外へと足を踏み出す。

 


~ワタルと誠二~


ワタル「うぅ~ん…………はっ!」

誠二「うぅ、頭が痛い痛い」

ワタル「オイ! 誠二、起きろ!」

誠二「んん? アレ、ここドコだ?」

ワタル「俺たちはミホに殴られたんだよっ!」

誠二「あぁ、思い出した。 で、何で誰もいないのさ?」

ワタル「わからないけど……あっ! 外にみんないるぞ!?」

窓に近寄り、下を見下ろしながらワタル。

誠二「あっ!? ホントだ!」

ワタルの隣に立ち、下を見下ろす誠二。

ワタル「これって、早く行かないと置いてかれるんじゃない?」

誠二「うん、そんな感じだ」

ワタル「よし、飛び降りようか~」

誠二「えっ? わわっ、腕を掴むなァァァ!!」

ワタル「えいっ(誠二を窓の外に放り投げる)」

誠二「うわああぁぁぁ!!!?」

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