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意志をつぐ者  作者: 花咲 匠
混沌の始まり
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第三話 いきなり襲撃

 職員室にワタルと誠二が呼び出された後、コータとミツルはもう既に皆帰ってしまい、さびしくなった教室で二人っきりで話しながら待っていた。

 日がだんだんと落ちていくと、もうすぐ冬の訪れを感じるような冷たい空気があたりに立ちこめる。もっとも、それは彼ら《意志をつぐ者》目線であって、暦の上ではすでに冬に入っていて、教室では時々エアコンで暖房が入るほどだ。

 しかし、HRも終わってしまうような時間になると、エアコンは止められてしまい、教室には24時間常時稼働している換気扇の音が響く。

 物静かなコータとミツルの二人では会話を交わしていても、教室が静まりかえっており、時折吹く強い風が窓を揺らす音まで聞こえる。


すると、その静かな教室に見知った女子生徒がやってきた。


 彼女は、教室のドアを勢いよく開けたのにも関わらず、ひょっこりと顔だけ覗かせると知り合い二人を見つけ、嬉しそうな顔をしながらこちらに近付いてくる。

 他の人間よりも感覚が鋭敏(意志をつぐ者は総じて、ヒトよりも能力が高いが、この二人は意志をつぐ者の中でも更に高い)な二人は教室の前の廊下に彼女がいることに気付いていたが、あえて声をかけなかった。


 なぜかといえば、彼女の目当ての人物がすでにわかりきっているからである。


 「やあやあ、お二人さん! おはようっ!」


 声をかけられてようやく、この無駄に明るい声の主に視線を動かす二人。

 ショートカットの黒髪に、大きな瞳、そして明るい笑顔。女性としては平均的な身長に、クラスの男子どもを釘付けにする豊満なバストを備え、そのくせにくびれをも併せ持つグラマラスな四肢。傍からみたら、明るく活発な美少女との印象を受ける仲間の一人、《雷の意志をつぐ者》の神田かんだミホが話しかける。


 「もう夕方だぞ。おはようじゃなく、こんにちはだろう?」

 「やあ、ミホ。相変わらず元気そうだね」


 誰に対しても素っ気無いミツルの返事と冷たい視線、というか無機質な視線。

 それとは対照的に、優しげに微笑みながら返事を返すコータ。内容が皮肉染みているが、本人は全くの無意識である。


 「そういえば、ワタルはどこにいるの? ここにいないみたいだけど」


 この少女は、近くにワタルがいないときには決まって二言目にはワタルの所在を聞いてくるのだ。

 そう、この見目麗しいミホと、奇跡の大バカであるワタルは付き合っているのだ。

 だから、仕方の無いコトなのかもしれないが、もう少し自制してもいいのではないかとコータは常日頃から思っている。

 前に言ったことがあるが全く効果がなかったので、もうその手の話はしない。諦めたのである。


 「あぁ、ワタルなら、さっき先生に呼び出されてたよ? 誠二も一緒だったから、特になにか問題を起こしたワケじゃないと思うけど」


 コータが懇切丁寧に教えてあげる。ミツルは興味がないらしく、何も言おうとしないので。

 そんなミツルの態度も慣れたものなので、二人とも特に何も言わない。


 「そうなんだ? なんの話だろう……まぁ、いっか。ココに来るって言ってたんでしょ?」


 少しの間考える素振りを見せるが、すぐにコータに質問する。


 「うん。カバンも置いてあるから、戻ってくると思うよ」


 「そっか、じゃあ、あたしもココで一緒に待とう、っと」


 そう答えたコータに、誠二の席の椅子を持ってきて、ミツルとコータの席の真ん中に置きながらミホが言う。


 「好きにしろ」


 誰にでも愛想が無いミツルがボソッと、しかし、ちゃんと耳に入る音量でそう言う。コータとの話は終わったのか、自分のバックの中から文庫本を取り出して視線を落とし、読み始める。

 ミホは昔から彼らのコトを知っているので気を悪くしたりはしないが、ミツルの言いようはどこか他人行儀でヒトから誤解されることが多々ある。

 本人は全く気にしていないので、尚更タチが悪い。


 「そういえば、今日は他の女子達は? いつも一緒に帰ってるでしょ?」


 「うーん、なんか勉強してから帰りたいからちょっと待ってて、だって。だからそれまではワタルといようかと思って」


 「ミホは勉強しなくていいのかよ。この間のテストの点数悲惨だったんでしょ?」


 素朴な疑問を呈したコータに、ミホが答え、それにコータがニヤニヤと笑いながら言う。


 「なっ! なんで、それを知ってるのよ!?」


 「あはは、それはこの間ワタルが『俺よりも点数低かったんだぜ~?』とか自慢してたからね」


 驚愕した顔になったミホに、ワタルの声真似こえまねをしながら真相を明かすコータ。

 ワタルは「奇跡のバカ」の称号を持ってるだけあって、テストの点数もそれはそれは見るに耐えない。

 勉強をしろと周りが促しても、本人は「俺はこの体、かっこあたま除くかっこ閉じ、を使って将来生活していくからいいんだ!」とか堂々と宣言しているのでそれでいいらしい。


 「なっ、ワタルのヤツ…………これは、後でお仕置きね」


 「あはは、僕からバラしたって言わないでね? 後が面倒だから」


 「はいはい、わかってるわよ」


 お仕置きを宣言したミホに、自分がバラしたと知られると色々と騒ぎ出して面倒なので、笑いながら口止めも頼むコータ。

 そして、ミツルが本から顔を上げずに、静かに話し出す。


 「俺、この間、夢をみたんだ」


 「夢? どんな夢さ?」


 自分から口を開くことが少ないミツルの発言に、少々驚きながらも、聞き返すコータ。

 しかも、なぜか一言一句噛み締めるように言っているので尚更だ。


 「…………今みたいに、この3人で雨が降り出しそうな天気の中、教室にいたら怪物に襲われる夢」


 「…………それって、ヤバくないか?」

 「ちょっと、ヘンなコト言わないでよねっ!」


 言葉少なだが、簡潔にかつ恐ろしいことを言ってのけるミツル。

 それに、声音が警戒態勢に入ったコータがあたりをそっと見渡しながら誰にとも無く言う。


 僕たち、意志をつぐ者の間では、夢は大変危険な存在なのだ。

 ありえないような夢でも現実に起きたりするコトが少なからずある。

 それに、ここにいる3人のように、自然系列(ナチュラル)の意志を継いだ者達にはその傾向が強く現れるのだ。

 ミホだけは笑って誤魔化していたが、ミツルとコータの二人は辺りを警戒し始める。


 「…………いつでも、抜刀できるようにしておいた方がいいかね?」


 「そうだろうな。夢のままでいくと、そろそろ来るぞ」


 椅子からゆらりと立ち上がり、密かな闘志を燃やしながらミツルに静かに聞くコータ。

 それと同じく、ただ静かに凪いだ海のように気配を鎮めて立ち上がったミツルが応える。

 そんな二人を見て、実にヤル気の無さそうなカンジで立ち上がりながらコータのうしろに付くミホ。

 実力的にコータのほうが上なので、戦闘の邪魔にならないようにするためである。


 「えぇ~、ホントに敵来るの?」


 「あぁ、来たぞ」


 心底嫌そうな声音でミホが言い、それにミツルが応える。


 そして、そのミツルの声に反応するかのように窓の外に眩い光が溢れ、辺りを轟音と凄まじい揺れが襲う。その揺れに耐えきれなかった天井の漆喰がパラパラと埃と一緒に落ちてくる。

 天井に埋め込まれている蛍光灯が何本も割れて、気持ちのいい音を立てて重力に従って地面に向かう。落ちた衝撃でさらに小さく割れて、あたりにキラキラと破片が散乱する。


 「わわっ、ちょっ、何よコレっ!? もう、最悪!」


 「騒ぐな、シールドは張ってある」


 「さて、敵は誰かな?」


 いきなりの攻撃に驚いて悪態を付くミホに、冷静に返すミツル。

 確かに、いつの間にシールドを張っていたのか、半透明に青白く輝く魔法の障壁が眼前に展開されている。

しかし、その先は粉塵にまみれており、5メートル先すら見えない。


 だが、校舎の壁まで守る気はなかったのか、光が溢れているところに近い窓側の壁がどんどん破壊されていく。教室に音を響かせていた換気扇やエアコンが一緒くたに破壊され、瓦礫と化す。

 窓ガラスも小気味良い音を立てながら割れていき、近くの机と共に破壊されていく。


 「ちょっと! どうせなら校舎も守りなよ!」


 「あぁ、すっかり忘れてた」


 非難めいた口調でコータが言うが、ミツルはサラッと返すのみ。口では忘れていたと言ってるが、ホントは校舎を守る面倒を避けたのだろう。

 言い忘れていたが、ミツルは魔法の天才で、魔法がこの世界の表舞台から消え去って久しいというのに、独学で魔法を学んだ魔法使い(ルーンマスター)である。


 とはいっても、《意志をつぐ者》はほとんどが魔法を使える。規模の大小、種類は様々だが。基本的に、それぞれの《意志》によって使いやすい魔法などがあり、魔法適正が高くないと他の魔法は使えなかったりする。

 しかし、物事には必ず例外というものがあり、たまにコータのように魔法を全く使うことができない者もいる。


 コータの場合、ちゃんと習ってはいるのだが、なぜか魔法を発動できないのだ。

 だが、元々の身体能力がすこぶる高いので、これまで他のヒトに遅れをとったことはあまりない。むしろ、戦力的に見れば比肩するものはそうそういないレベルだ。

 それだけの実力もあるので、こういう風に襲撃されたときも呑気な声を発することができる。

 この油断で命を落とすかもしれないが、多少は余裕を持って戦闘に望むほうがいいのだ。

 気を張っているよりかは多少油断している方が生存率が上がるという学術的な見解もあるらしいし。


 「コータ。お前はいつも通り前衛でな」


 「わかった。じゃあ、お二人さん援護よろしく」


 「あいよ!」


 《意志をつぐ者》は総じて、訓練所で戦闘訓練を受けているので、このように急な襲撃にも対応できるように訓練されている。

 そうでもしないと、生きていくことができないので。


 既に、コータの手には天上の金属である青銅で作られた両刃の長剣が握られている。この剣も例に漏れず魔法の武器であるが、他の魔法の武器とは少し違い特殊らしい。らしいというのも、この剣は人からの貰い物であり、そのときに前の所有者がそう言っていたというだけで、コータ自身詳しくは知らない。

見た目は普通の剣だが、溢れ出る純白のオーラを纏っている、見るからに魔剣である。そこが普通とは違うかもしれない。

 後ろでは、転移魔法により呼び出した長剣を構えながら呪文を詠唱しているミツルの声に応える。

 コータの持っているこの青銅製の長剣は、普段はボールペンの形をしている。

 ボルトという名の普段はアナログ式の腕時計の盾(スクトゥムと呼ばれる全長80cmほどの四角盾)もあるが、今はまだ使わない。

 この先、何があるかわからないので、わざわざ手の内を晒す必要もないだろうと判断して。


 この剣の銘は「ライトニング」といって、かなり大昔からあり、使用者が後継者と決めたものにしか使えないという由緒正しき剣だ。

 ミホもミツルと同じように転移魔法を使い、自分の愛用のバスタードソードと呼ばれる比較的大型で両手でも扱えるように設計されている剣を引っ張り出した。

 女性として平均的な身長の彼女の身体には長大なバスタードソードは不釣り合いに見えるが、その剣を自分の手足のように扱うほどの技量がある。近接戦に限って言えば、訓練所でも5本の指に入る。


 「全く、今度の怪物は一体何者だ? ミツル、わかったか?」


 「恐らく、嵐の精(ウェンティ)だ」


 やれやれといったカンジでミツルに問いかけるコータに冷たい声音で応えるミツル。

 これは別にコータが嫌われているわけじゃなく、ただ単に相手がイヤな相手が来たという感情の表れだと思う。…………多分。


 「ほうほう、嵐の精とな? じゃあ、ミツルちょっと不利じゃない?」


 ミホがそうからかうように言うので、ミツルはそれを言葉だけではなく、行動で否定する。

 意志をつぐ者は、それぞれの意志の魔法が得意で、かつ威力が強力なので、ミホはそう言ったのだ。


 「別にそうでもない。 それならば、火炎魔法を使わなければいいだけだ」


 そう言って、手をかざして展開していたシールドを消滅させる。

かざした手をそのままに、大きな氷の刃を出現させ、無造作に投げる。明らかに軽く投げられるほどの大きさではなかったが、そこは魔法という未知の力が働いているのだろう。

 さっきまで視界を覆っていた攻撃の余波で作られた戦塵や、地面に散らばっていたガラスの破片、エアコンのなれの果てが吹き飛ばされる。

 今の氷は、攻撃のためではなく、視界を良くするためのものらしく、周囲を覆っていた粉塵が晴れていた。

 視界の先には、相変わらずの曇天の中に小さな灰黒い竜巻トルネードが浮かんでおり、その中にヒトの顔らしきものが見える。

 身体はないみたいで、竜巻に生首が浮かんでいるように見えるので、夜に見たら泣いて逃げ出しそうな相手である。


 「かっかっかっ、こんなトコロに隠れていたなんてなぁ? これじゃあ、お館さまも気付かないわけだぜぇ」


 ウェンティは風が吹き荒れるような非常に聞き取りづらい声で、下品に笑いながら言う。


 「お館さま? なんだ、それは?」


 全ての五感に優れているコータは聞き取れたので、不審な単語を反芻するようにウェンティに聞く。

 その後ろでは聞き取れなかったのか、不機嫌そうな顔のミホと相変わらずの無表情のミツルが攻撃のチャンスを窺っていたが、コータが敵に向かって言葉を発したので、そのままの状態で攻撃の機会を狙っている。

 もっとも、ミホが不機嫌なのは、ワタルから貰ったヘアピンが風で飛んできた埃で汚れたからなのだが、コータにそれに気付けるほどの対女性スキルはない。


 「かっかっかっ、それをお前に教えたところで意味がねぇだろぉ? なんせ、ここでおまえらは俺様に殺されるんだからなぁ!!」


 そう言ってウェンティは鎌鼬かまいたちにも似た風を起こす。

 なぜわかったかというと、それはもう風切り音が不吉なくらいあたりに響いているからだ。


 「流石に教えてはくれないよね。じゃあ、どうする?」


 「風には、風だろ」


 「マジで?」


 元々、期待はしていなかったので、落ち込むでもなく平板な声音で後ろの二人に声をかけるコータ。

 それに即答したミツルと、さらにそのミツルにすぐに心底驚いた声音で切り返すミホ。


 「風の怪物に風で挑むって、分が悪いんじゃない?」


 「そこらの魔法使いならな」


 当然の危惧を示したミホに、傲岸不遜な物言いで返すミツル。

 実際に、今まで何度も一緒に戦ってきたコータですら驚いて後ろを振り返る。

 普通は魔法とは、相性の問題が大きく関わってくるのだ。このセオリーを無視すれば、相手にほとんどダメージを与えられないというのも、よくある話だった。 

例えば、火には水を、水には雷を、といった具合で反撃するのが常なのだが、ミツルは真っ向から対立するらしい。

 ちなみに、風に相性がいいのは土魔法である。


 「我が刃となりて仔のみを守らんとせよ。ウィング・カッター!」


 「…………何気に上級魔法を使ってやがるし」


 言下に、風で形作かたちづくられた長大な刃が何本も生まれ、ウェンティの作った鎌鼬に突撃していく。

 そのあまりの迫力に、コータのボヤキは誰の耳にも届かなかい。


 ウェンティの作り出した鎌鼬は跡形も無く吹き飛び、逆にミツルの刃が敵の懐に飛び込んでいく。

 その刃をウェンティは慌てて避けたので、倒すには至らなかったが、相変わらず物凄い威力だ。

 さすがに、ウェンティ自身も、まさか自分の化身とも言える風の魔法を正面から打ち破られるとは思っていなかったのだろう。目を見開いて驚愕した面持ちでいる。

 そんなウェンティとは対照的に、それを打ち破ってみせた本人はしれっとした顔でなんともなく立っているので、なんかイラつく。


 「ん? どうかしたか?」


 そんなコータの視線に気付いたミツルがその美しい顔で首を傾げる。しかも、その仕草がやけに似合っており、狙ってやっているのかと思うほどだったが特に何も言わない。


 「…………なんでもない」


 「そうか」


 コータは呆れて首を振り、話はこれで終わりとばかりに前に向き直る。

 そんなコータを見て、ミツルも頓着せずに返す。


 「うわぁ、やっぱり、改めて見るとスゴイわねぇ…………」


 ミホはただ眼前の出来事に目を丸くして、素直に感嘆の声をあげる。


 「かっかっ、この程度で俺様に勝ったと思うなよ」


 「イヤ、実際もう諦めたら? 白状すれば、消滅はさせないであげるからさ」


 無理に笑いながら、声をあげるウェンティに、寛大にも降伏を勧めるコータ。

 怪物というのは、厳密には死ぬのではなく、体が消滅したらタルタロスという場所に魂だけ戻り、またいつかは復活するのだ。

 ただ、それが何年後か、何十年後か、何百年後かはわからないのだが。


 「…………かっかっかっ、すまないが、どうせ口を割ったら消滅させられるんだ。だから、お前たちにはここで死んでもらう!」


 即答できなかったところを見ると、コータの魅力的な誘いに乗りたいらしかったが、何か事情があるらしい。

 こちらが事情を聞くために口を開く前に、向こうがまた鎌鼬を発生させた。

 ただ、今度の鎌鼬はさっきのとは違い、ただの風で出来ているのではなく、灰黒い風でできている。心なしか、さきほどよりも辺りが暴風に包まれている。


 「これは勝てないな」


 「はぁっ!? ちょっと、どういうコトよ!」


 昨日の夕飯はカレーです、みたいな口調でさらりと諦めるミツルに、当然の如く抗議の声を上げるミホ。

 無論、驚いたのはミホだけでなくコータも驚き、思わず声を荒らげる。


 「オイ! どういうことだ!?」


 「お前らはアイツの魔力が測れないのか? 俺の風魔法は今のアイツには効かない。魔力量が違いすぎる。土魔法を使ったところで結果は同じだろう。それに、自分の命を削って生み出す攻撃にはシールドも効果がないだろうしな」


 バカか、お前らは?みたいな目で見つめながら冷静に分析してのけるミツルに開いた口が塞がらないコータとミホ。

 絶望的な状況に追い込まれたのと同時に、珍しくミツルが饒舌に語っているからという理由によるものだ。


 「…………じゃ、じゃあ、どうするのよ?」


 辛うじて搾り出したようなミホの声に、ミツルはその魅力的な顔でとびきりの笑顔を見せる。


 「全力で逃げようか」


 ((なんで、そんな笑顔なんだよ…………))


 コータとミホは呆れてそんなコトを心中で思ったが、足早に踵を返しドアに向かうミツルの背中を追いかける。

 この時、下から二人の人物が向かってきていたが、逃げるのに必死な3人はその気配を悟ることができなかった。


~次回予告~


コータ「そういえばさ、なんでミツルはそんなに笑わないの?」

ミツル「笑わないんじゃなくて、興味がないんだ」

コータ「何に?」

ミツル「他人の言葉に」

コータ「じゃあ、なんでそんなに点数取れるのさ?」

ミツル「? 別に教師の話を聞いてるわけじゃない」

コータ「じゃあ、なん――」

ミツル「ただ、ノート取ってるだけだ」

ミホ「うわぁ、ダメだコイツ。典型的な勉強できるだけのコミュ障だ」

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