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第5章ー1 義和団事件

前の話から時間が5年近く流れています。作中での時間は1900年5月です。

「斎藤一大佐ではありませんか」

 土方大尉は思わず声をかけてしまった。

 斎藤大佐は佐世保鎮守府におられるはずではなかったか?

 何故、海兵本部に?

 まさか中国情勢絡みか?

 土方大尉は考えを思わず巡らせてしまった。


「土方大尉も元気そうで何よりだ」

 斎藤大佐は笑顔で答えた。

「定年ぎりぎりまでこきつかってくれる。海兵隊は人使いが本当に荒い。土方は海兵本部に今は勤務しているのか」


「そのとおりです。斎藤大佐は今は佐世保鎮守府海兵隊長でしたよね?」

「先日まで、その佐世保鎮守府海兵隊は台湾勤務だったよ。朝鮮から海兵隊が撤兵できたと思ったら、今度は、台湾の住民運動鎮圧のために陸軍に協力しろ、ということで台湾に海兵隊が行くなんてな。台湾から土方と一緒に帰った5年前には思いもしなかったことだがな」


「それを言うなら、斎藤大佐が今でも現役の方が驚きですよ」

「確かにな。今日、海兵本部に来たのは、その帰朝報告を直々にするように本多海兵本部長から指示があったからさ」


「そういうことですか。海兵本部長への帰朝報告が済んだら、台湾情勢等について話してもらえませんか。いい店を知っているので、そこで、酒でも飲みながらだとありがたいです」

「分かった。話せる範囲で話してやる」

 斎藤大佐は、海兵本部長室に入って行った。


「済まんな。台湾から呼び戻して早々、北京へ向かってもらうことになりそうだ」

 斎藤大佐は、本多海兵本部長への帰朝報告をしようとしたが、いきなり、本多海兵本部長から止められてしまった。

 帰朝報告は後から書面で出せばいい、直接、話したいことがある、と本多海兵本部長が言いだし、冒頭の科白を斎藤大佐は聞かされたのだった。

 斎藤大佐は、思わず目を白黒させた。

 一体、何事があったのだ。


「今、順次、横須賀、呉、舞鶴の各鎮守府の海兵隊長を個別に呼び出しているところだ。臨時に各鎮守府の海兵隊を連隊編制に拡大して、それにより海兵師団を編制する。各鎮守府海兵隊はその準備にかかる必要がある。目的は北京等の華北にいる日本人等の救出だ」

 本多海兵本部長は深刻な顔をして言った。

 斎藤大佐は気を整えてから質問した。

「一体、何事が起ったのです」


「清国で大規模な排外暴動が発生している。当初は山東省内で収まると考えていたが、山東省内で収まるどころか、華北全体に排外暴動が拡大しつつあり、収まる気配が全く立たない。とりあえず、内山大佐率いる横須賀海兵隊を天津に派遣して万が一に備えさせるつもりだが、とてもそれでは済みそうにない。予備役まで総動員して、海兵隊を戦時編制とし、海兵師団の編制の準備を検討する段階に達したと思う」

 本多海兵本部長は言った後、一呼吸おいて更に続けた。


「日清戦争後に海兵隊の規模が拡大されて以降、最大の戦時体制として海兵師団の編制は検討され、準備されてきたが、まさか、清国の大規模な排外暴動で海兵師団の派遣を検討することになるとは思ってもみなかった」

 本多海兵本部長は苦渋の表情を浮かべた。

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