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第2章ー13

 公州に横須賀海兵隊がたどり着いたのは11月17日のことだった。

 陣地を設営して、東学党農民軍を迎撃する準備を整えていく。


 東学党農民党軍の主力が実際に公州に接近してきたのは19日だった。

 海兵隊に対する攻撃準備を整え、公州を奪還しようと準備を整えていく。

 20日朝を期して、東学党農民軍は攻撃してくるのだろうと土方少尉は見立てた。


 斎藤大尉も同意見だったが、半分呆れるような表情をしている。

「あいつら正気か。大砲をこちらは備えているのに向こうはない。更に火縄銃どころか、刀や槍を持っている者までいるのに、そんな装備で海兵隊に挑んで勝てると思っているのか。向こうの方が数が圧倒的に多いから勝てるつもりなのかもしれんが、こちらからしたら狂ったとしか思えん」

 斎藤大尉が独り言を言った。


「王室を救え、日本を倒せ、傀儡政権を倒せ、で集まった連中ですからね」

 土方少尉が答えた。

「熱意で何とかなると思っているのでしょう。確かにこちらは軍夫まで入れても2000人足らず、向こうはざっと見たところ4万人は集まっています。20倍以上ですね。実際の戦闘員の数で言ったら、30倍以上になります」


「全く幕末の攘夷主義者共と変わらんな」

 斎藤大尉が言った。

「数が多ければ何とかなるというものではないぞ」


 20日朝、東学党農民軍の攻撃が始まった。

 とはいえ、装備が装備なので、火縄銃の援護の下、刀や槍を持った突撃部隊が陣地に接近してくるのが精いっぱいである。


「どんどん撃て。遠慮はいらん」

 黒井砲兵中隊長が号令をかける。

 わずか6門しかないとはいえ、こちらには大砲があるのだ。

 ぽつんぽつん程度とはいえ、砲弾の雨を受けた東学党農民軍の突撃部隊に死傷者が続出し、部隊が混乱する。

 それでも勇を奮って、一部の部隊が尚も接近してくる。


「そろそろ死に間に入ったな」

 岸大尉が物騒な科白を言う。

 海兵隊の陣地はわざわざと一部をジグザグにしてある。

 ある程度、接近した突撃部隊は海兵隊の十字の銃火を浴びることになった。

 さすがにこれにはこらえきれず、突撃部隊の全てが退却を始める。


「陣地を出て追撃を掛けたいところだが、こちらの数が圧倒的に少ないからな。佐世保が来るのを待つしかないな」

 斎藤大尉がつぶやく。

 土方少尉もそれには同意した。

 

 それにこちらには死者どころかかすり傷を負った者さえいないのだ。

 完勝もいいとこだった。

 それなのに追撃をかけて死傷者を出すことは無い。


 林大佐も同意見らしく、追撃の命令は出ない。

 それどころか、戦闘が始まってから林大佐の命令は何一つない。

 部下に任せ切っているのだ。

 

 案外、昼寝をしているのではないか、そんな想いさえ土方少尉は抱いた。

 歴戦の林大佐にしてみれば、これは戦闘と呼ぶのにはおこがましいレベルの戦いだろう。

 こんな攻撃を仕掛けてくる東学党農民軍の司令部の頭を土方少尉は疑いたくなった。


「それにここの攻撃が長引けば長引くほど、東学党農民軍は困ることになる。自業自得とはいえ、気の毒になってくるな」

 斎藤大尉は退却していく東学党農民軍の突撃部隊を見ながら言った。

「全く林大佐も意地の悪いことを考える」

 斎藤大尉は首を振った。

 土方少尉も内心で同意した。

 林大佐が何をしたかは次話で明かします

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