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第2章ー12

 東学党農民軍の主力の動向が分かったのは、11月10日になっていた。

 更に同時多発的に東学党農民軍は挙兵していること、東学党に入信していない農民まで反日、反傀儡政権を叫んで東学党農民軍に参加していること等が分かった。


「ここまで嫌われると却って清々しくなってくるな。自分も新選組の一員として、幕末の京の街では余り好かれるどころか、嫌われていたからな」

 斎藤大尉が言った。

「そうだったのですか」

 土方少尉が尋ね返した。


「てっきり、幕府に忠誠を尽くす存在として人気者だったのかと」

「そりゃ、幕府寄りの一部の人からは好かれていたさ。でも、京の街は天皇のおひざ元で幕府関係者は好かれていなかったよ。土方の場合は、副長から教えてもらう前に副長が亡くなっているから知らなくても仕方ないがな。岸なら伯父から聞いているのではないかな」

「そうかもしれませんね。それにしても公州へ移動して主力を迎撃、佐世保海兵隊と協同して崩壊させるですか」

 土方少尉は首をひねった。


「うまく行きますかね。有線通信は片っ端から東学党農民軍に妨害されそうですよ」

「おいおい、有線通信がない時代でも包囲作戦はやっていたぞ」

 斎藤大尉は笑った。


「こっちは包囲作戦をやられた側だがな」

「そうなのですか」

「戊辰戦争の時に白河口でな。全く兵力が劣勢な薩長側が更に分散して包囲作戦をやってくるとは思わなかった」

 斎藤大尉の顔に追憶と悔恨をない交ぜにした表情が浮かんだ。


「それに作戦は我々全員で何回も見直しをしたじゃないか。幾つも案を立ててはな」

「そうですね」

 土方少尉は肯いた。

「さて、全力を尽くして、速やかに終わらせよう」

 斎藤大尉は真剣な顔になって言った。


 11月12日、完全に準備が整い、海兵隊は動き出した。

 林大佐が直卒する横須賀海兵隊は公州に速やかに向かい、そこに堅陣を構えて、東学党農民軍の主力を迎撃することになっている。

 実戦を戦う海兵隊員は約1200名、補給物資を運ぶために軍夫が約800名、ばん馬を250頭も備えている。

 砲兵中隊等のためにもばん馬がいるので全部でばん馬は300頭近くに増えていた。


「それにしてもすごいばん馬の数だな。全部で運ぶ補給物資の量は200トン以上か」

 土方少尉は思わず首を振った。

 馬糧も運ぶ必要があるからふくらんだとはいえ、それでも優に2か月は無補給で戦えるだけの準備が整えられている。

 東学党農民軍がゲリラ戦を展開し、補給線が絶たれることを懸念したためとはいえ、充分すぎるくらいの物資の量だった。

 これを見た斎藤大尉もあらためて驚嘆している。


「西南戦争の頃とは全然違うな。これが今どきの海兵隊の戦い方か」

「1頭立ての馬車ばかりですけどね」

 それを聞いた兵站担当の将校が苦笑いをした。


「本当は6頭立ての馬車で物資を運びたいところです。そうすればもっと運べるのですが」

「おいおい本当に昔の戦い方じゃないな。朝鮮の悪路から1頭立ての馬車になるのはやむを得ないのか」

「朝鮮の悪路というより、山岳地帯の細道を運ぶことを考えたためです」

「なるほどな」

 斎藤は納得した。

 1頭立ての馬車なら何とか工兵が臨時に道を拡張等することで対処できるからだろう。


「行くぞ」

 林大佐の号令が聞こえた。

 斎藤大尉や土方少尉は公州へ向けて出発した。

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