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第2章ー1 東学党の再蜂起

 9月になり、海兵本部は多忙を極めていた。

 日清戦争がはじまったことから、海兵隊は総動員をかけている。

 予備役になっていた士官、下士官、兵を現役復帰させると共に、志願兵も募集せねばならない。

 更に予算も必要になるし、物資も調達しなければならない。

 他にも色々と事務作業もある。


 連日、夜遅くまで残業が続き、中には海兵本部内に泊まり込む猛者まで出る始末だった。

 これでは海兵本部で働く者の体が壊れるとして、現役復帰した一部の者が応援として送り込まれることになったが、その応援者がある程度、事務になれるまでは、却って周囲の負担になることさえある。

 従って、応援はいらないという者まで出るという惨状を呈していた。


 斎藤実少佐はそういった中で黙々と人事関係の事務処理をしていた。

 部下の1人は疲労しきり、目が半分死んだ顔をしている。

 激励は逆効果だな、斎藤はそう判断し、その部下の仕事の一部を自分が引き取ることにした。

 岸中尉が残っていれば、多少は楽だったのだが、と繰り言めいた思いが少しした。


 それにしても、林大佐でさえ独断専行したら、あれほどの厳罰になるのか。

 林大佐の処分については、内々の話ではあるが、少佐クラスになると噂として耳に入る。

 斎藤少佐はあらためて身が引き締まる思いがした。


 それにしても、と斎藤少佐は部下から引き取った仕事の中にあった予備役大尉の考課表を見て思った。

 この人にまで、現役復帰の声がかかるのか。

 その考課表には自分と同姓の人物が載っていた。

 この人はどこに配置すべきだろうか。


 同じころ、軍令部第3局も多忙になっていた。

 朝鮮に駐留している海兵隊のために諜報活動もしなければならないし、作戦も立てないといけない。

 もちろん、そのためには海軍本体のみならず、陸軍との協働が必要になる。

 軍令部第3局員も全員過労死寸前になりつつあった。


 そうした中で、一戸兵衛少佐は、業務の後任者への引き継ぎ準備を何とか済ませた。

 中佐に昇任した上で、佐世保海兵隊の長としての赴任が決まったのだ。

 これだけの業務を残して赴任することに後ろ髪がひかれる思いもあるが、西南戦争以来の実戦指揮と思うと体は疲れ切っているのに、精神が高揚して止まない。


「とりあえずは佐世保海兵隊と共に漢城に赴き、林大佐の指揮下に入れか」

 一戸少佐は独り言を言った。


 佐世保に着くのと同日に中佐に昇任して更に佐世保海兵隊長に就任することに事務処理上はなってしまった。

 佐世保海兵隊は、本来の海兵中隊1個に加え、予備役海兵中隊3個、屯田兵山砲中隊1個、屯田兵工兵中隊1個を総動員により隷下においている。

 規模的には先に朝鮮に赴いている横須賀海兵隊と同規模になり、併せると実質的な戦力としては1個歩兵連隊近いものになるだろう。


「うむ。林大佐の指揮下で戦うのだ。清国軍が1万あろうと怖るるに足らんな。漢城から早く平壌へ、更に北京へと進撃したいものだ」

 一戸少佐はまだ見ぬ朝鮮へ、更に中国本土へと思いを走らせた。

 同姓ということで想像できる方も多いとは思いますが、次話でその人物が登場します。

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