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第1章ー9

 こうして戦雲は急に高まった。


 袁世凱は、一連の日本との交渉を思い返して憤慨した。

「日本に騙された。5月31日に朝鮮政府から内々の清国軍出兵依頼を受けて、6月1日、3日と日本公使館と話をした際には日本の居留民を保護するために海兵隊1個中隊しか派遣しないと言っていたのに、実際に6月10日に来たのは3個中隊、しかも砲兵まで揃えていた。更に続々と増援が駆け付けてきた。そして、大鳥公使は日清双方ともに一旦、撤兵しましょうというので、それに応じて公電まで本国に打ったところ、6月16日になって日本本国が言ってきたのは、日本は撤兵せずに、清国と共同で朝鮮の政治改革を行いたい、清国が拒否するというのなら日本単独で朝鮮の政治改革を行います、ということだ。清国の面子は丸つぶれだ。こんな次から次へと提案を翻し、現地と本国が言うことが違ってくる信義の無い日本とこれ以上、交渉しても時間の無駄だ」


 袁世凱は日本との開戦は避けられないと判断し、清本国に覚悟を固めるように電文を送った。

 一方で、大鳥公使も最早これまでと覚悟を固め、朝鮮政府も日清双方の態度を見て、戦争は避けられないと判断した。

 だが、すぐには戦争は始まらなかった。

 こうした情勢を見て、朝鮮や日清と国交のある欧米諸国が介入してきたからである。


 まず介入してきたのはロシアだった。

 ロシアにとって朝鮮は隣国であり、何れは朝鮮国内の不凍港を手に入れ、更に植民地にあわよくばしたいと考えていた国である。

 そういった国が日清どちらかの勢力下に完全に収まるのは望ましくなかった。


 ロシアは日清双方の撤兵を要求した。

 これに清国は前向きの姿勢を見せたが、日本は断固拒否した。

 ロシアに軍事介入をすぐに行える力がないと判断されたし、ここまで来た以上、戦争しかない。

 だが、ロシアの機嫌を損ねるのも今後のことを考えるとまずかった。


 結局、現在、日清共同で朝鮮の政治改革を行おうとしているところである、今、撤兵しては朝鮮の政治改革がとん挫する。

 朝鮮の政治改革が済み次第、日本は撤兵するが、今のところは、清国から発砲しなければ、日本は開戦まではしないという言質をロシアに与えざるを得なかった。


 次にイギリスも介入してきた。

 イギリスにとっては、長江流域の自国の権益が日清戦争の戦火にさらされて損なわれることが心配だった。

 日清間の交渉成立のためには日清がまず同時に撤兵してはどうか、とイギリスは提案してきた。

 

 ロシアには現実の軍事力の後ろ盾がなかったが、イギリスには現実の軍事力があった。

 従って、日本はイギリス案を呑むことを検討せざるを得なかった。

 だが、この日本の窮地を清国が救ってしまった。


 清国の光緒帝の周囲では袁世凱からの電文を見て、日本との戦争止む無し、との声が高まっていた。

 そのために日本がまず撤兵するのが第1条件であるとの回答をしてしまった。

 日本の撤兵が完了次第、清国も撤兵する。


 この時点ではロシアの介入が完全には終わっていなかったので、清国の判断は誤りだったとは言えないが、結果的には大失敗になった。

 これはイギリスに清国は戦争回避の意思がないとの印象を与え、長江流域に日清間の戦火が及ばない限り、日清戦争にイギリスは介入しないとの声明を出させてしまったのである。


 最後にアメリカも介入してきたが、アメリカは一応、戦争が起こらない方が望ましいとの一般論と朝鮮政府の日清戦争を回避したいとの懇願を受けたことから、日清間の仲介の労を執ろうとしただけだったので、日本の事情を尽くした説明を受けると、これは介入しても無駄で、下手をするとアメリカの国威を損なうだけだとアメリカは判断し、あっさりと日清間の仲介から手を引いてしまった。


 こうして、欧米諸国の介入は結果的には戦争回避にはつながらなかった。

 最早、日清間の戦争勃発は時間の問題である。

 後は、どちらが第一弾を発射するか、それとも宣戦布告するかだった。

 何だか日本が悪いという印象を与える描写になってしまいましたが、史実でもほぼ同様の行動を日本はしています。

 私としてはそれに沿った描写をしました。

 もう少し日本が良く見える描写が出来ればよかったのですが。

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