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エピローグー4

「やっと帰って来られてよかったな」

 ほぼ同じころに本多幸七郎海兵本部長は満面の笑みで海兵本部に帰ってきた北白川宮殿下と林忠崇提督を出迎えていた。

 2人も笑顔を浮かべて歓迎を受けた。


「危うく2回も北京で正月を迎えることになるかと思いましたよ」

 北白川宮殿下が言った。

「一度、日清戦争で大陸の冬を経験したとはいえ、やはり大陸の冬は日本と違って寒い。日本の冬が暖かく思える。年内に日本に帰って来れて良かった」

 林提督も笑いながら言った。


「北京に海兵隊を駐屯させる羽目にならなくて良かったな。もっとも、今回の反省からできたら連隊規模で、少なくとも2個大隊で北京駐屯軍は編制されるという話が出た瞬間にどうにも海兵隊では無理になったが」

 本多海兵本部長が言った。

「それは無理ですね」

 北白川宮殿下が笑いながら言った。


 林提督も肯きながら言った。

「我が海兵隊は平時は4個増強大隊基幹の部隊に過ぎません。戦時なら1個師団が編制できるまで拡大されますが、北京駐屯軍を海兵隊でと言うことになったら、平時の規模を少なくとも2倍に拡大する必要があります。日清戦争に続いて戦時の規模を平時でも維持するような拡大をすることになったら、焼け太りだという批判が起こって、世論がいい顔をしないでしょう」


「桂首相も同じようなことを言ったよ。それに陸軍もいい顔をしないから、海兵隊の規模拡大は駄目だとな。海兵隊の規模を拡大し過ぎになる。必要なら陸軍の規模を拡大すべきだと圧力を陸軍が掛けてきたらしい。さすがの桂首相も迎えきれなかったとか」

 本多海兵本部長がこっそり裏話も教えてくれた。

 他の2人の笑いは苦笑いに変わった。


「ところで北京で思ったのですが、やはり露との戦争は避けられないのでしょうか。桂首相らはどのように考えているのです。北京だとそう言ったことが分からなくて気になっていました」

 北白川宮殿下は本多海兵本部長に尋ねた。

 林提督も興味津々という顔をした。


「強硬派の世論の多数派は対露戦を主張しているが、今のところは両睨みだな。日本としては朝鮮半島が日本の完全な勢力圏におかれるのなら、露が満州を確保するのは黙認してもいい。だが、朝鮮半島まで露が手を突っ込むのなら、戦争も辞さないと言ったところだ」

 本多海兵本部長は言った。


「世界情勢的に日露戦争となると列強はどう動きますかね」

 林提督が言った。

「英国は日本の味方になってくれそうらしい。日英同盟の動きもあるらしいな」

「それは心強い」

 北白川宮殿下が言った。

 元々、英国に留学していた北白川宮殿下は親英的だった。


「しかし、仏は露の同盟国ですからね。それに独等の動向は読めませんし」

 林提督はやんわりと釘を刺すような言い方をした。

 陸軍からは立見と並ぶ旧幕府系の戦場の名将と目されている林提督だが、戦場往来ばかりの猪武者ではない。

 本来は譜代大名と言う出身で、将来は幕府の老中を任せてみたいと十代で周囲に評価されたこともあり、政治家としての才能もそれなりにある。

 本多海兵本部長がいるから、もっぱら戦場に行かされているところがあった。


「我々は軍人だ。いざという場合に備えるということでよいのではないか。対露戦となると旅順要塞が目障りなことになるがな。海軍本体からも旅順要塞攻略を研究してほしいと言われている」

 本多海兵本部長が言った。

「休む間もないとはこのことですな」

 北白川宮殿下が言った。

 林提督は苦笑いをした。

 本多海兵本部長もつられて笑い出し、それを見た北白川宮殿下も笑い出した。

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