金色の檻
今回は短めです。
漆黒の髪に血よりも鮮やかな赤い目、顔は目をそむけたくなるほど美しく、黒い生地の服と相まってとても高貴な生まれに見える。無表情だから人形かとも思ったが、瞬きをしたので生きているのだと分かり、詰めていた息を小さく吐いた。
「……だれ?」
暫くして自分が魅入っていたことに気付き、自然と硬い声が出る。
「気に入った?」
声が聞こえて初めて父様がいることに気付いた。いつもよりも機嫌がよさそう。
しかしフェル二アが返事をせずに蹲ると徐々に不安そうな顔になる。
どうせこれも演技だと冷たい目で見やり、もう一度少年に視線を戻す。
(綺麗)
「気に入らなかった?」
父様の事が聞こえた瞬間、少年の手がぎゅっと握られたのを見て、無意識のうちに体が震えた。父様が「気に入った?」と聞くのは彼が、父様が私に与えた玩具だと言うことを証明していた。父様は私を殺す気なのだろうか?
私にはずっと色々な人が贈られてきていたが、買われて自分の傍にいる。そういう人には興味がわかなかった。結果、この間、果物ナイフで襲われたのだ。殺されかけた私を救ってくれたのは父だった。彼女があの後どうなったかは知らないが、あれ以来父様も懲りたのか彼らを部屋には置かなくなった。
「この子のこと、嫌い?」
それにはやっとのことで首を振り、床に大量にクッション敷き詰めてソファのようなものにしている所から一つ引き抜くと胸の前で握りしめる。
「怖いの?」
本当は怖かったけれど、それにも首を振る。しかし父様は後からメイドに持ってこさせた金色の檻に少年を閉じ込めてしまった。
「これなら恐くないだろう」
「……はい」
父様から金色の鍵をもらい、首から下げる。
どうせ一週間後には消える人なのだ。
今度も絶対に名前は教えない。
フェル二アは無理やり少年から目を背けた。
5話は今日の夜8時ごろ投稿します。
今回よりは長いです。