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妖精は薔薇の褥で踊る  作者: うさぎのたまご
一章 妖精が踏みしだくは薔薇の花
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永遠に

  すいません! 投稿ボタンを押し忘れていました(土下座)

  今回の視点はレオンの姉です。

  甘いのは次から、




母様が、亡くなった。


 それは唐突で、誰も悲しまなかった――私とレオン以外は。


 母様は、父様の子供を殺そうとしたらしい。


 誰も、まさかなんて言わなかった。


 なぜなら皆見ていたから、レオンの傷を。


 聞いていたから、レオンの悲鳴を。


 知っていたから、母様の歪んだ思いを。


 全部知っていて、それでも誰も何も言わずに知らないふりをした。

 私も……。


 怖かったのだ。そう、母様が怖かった。


 レオンに振り下ろされる手がいつこちらに向くのかと、光に反射するナイフの刃がいつ自分を捕らえるのだろうと……父様は私たちに関心がなかった。


 誰も止めない。何も言わない。


 私たちは全てに耳と目を塞ぎ、レオンの存在を無視し続けた。


 レオンはそれでも暴力に耐え、ただ一心に自分に伸ばされる手を欲していた。だから母様が亡くなった後、彼は毎日のように花を持って出かけている。


 顔色が悪く、元々細かった食も更に細くなった。


 母様のことが好きだったのだと、悲しんでいるのだとずっと思っていた。


 今なら――それが間違っていたことだと分かる。


『ね、レオン』


 三日前――私はレオンの部屋を訪ねた。


『母様のとこに行くのだったら……私も一緒に行きたいのだけど』


 いいかな? と言う言葉はレオンに腕を振り払われて口の中で消えた。


 冷たい目に映るのは明確な嘲りと蔑み、嫌悪、そしてほんの少しの憐憫

『なにを……言っているんですか? 今更、家族のように馴れ馴れしい態度で接してこないでください』


 そのまま早足で部屋から出て行ってしまう。ぺたんと床に座り込んだ。


 意味が、分からない。なんてことはない。


 でも分かりたくなかったのだ。


 どこかで、自分は自惚れていた。レオンのことを甘く見ていた。


 レオンは私を拒絶することがないと……一つ年下のいつもにこにこ笑っていた弟レオン、食事を抜かれてもお皿を投げつけられてもただ黙っていた。ただ笑っていた。


 私は時折投げかけられる、縋るような視線に気づかないふりをして――あぁそうだ。


 今更何を、本当にそうだ。


 助けてほしかったときには視線すら合わせず、いらない時に馴れ馴れしく寄ってくる。


 確かに――醜い。


 こっそりとレオンの後をつけて行き、やがて彼は奥まった部屋の中へ入っていく。出て来た時には花束を抱えてなくて、母様のお墓に添えたのではないのだと落胆し、自分の勘違いに笑いさえこみあげてきた。


 その部屋に誰がいるのか知ったのは今日、侍女にやっとのことで聞き出して、あそこの部屋には母様が殺そうとした子供がすんでいると知った。


 入ろうかどうか悩んでいたら、突然大きな音がして、物陰に隠れた瞬間ドアから誰かが飛び出してきくる。


 長い水色の髪が印象に残り、他はよく見えない、しかし私は大きく目を見開いた。水色の髪、それはまだ母様がやさしかった頃、話してくれたものだ。


 それは神様に愛された証、ふわふわとした足取りで付いていくと、女の子が転びそうになり、息をのんだ時には父様が優しく抱きかかえていた。


 心臓が嫌な音を立てる。


「なん、で……」


 優しそうな顔、声、手つき、一度も私にはしてくれたことなかったのに……


「どうして……?」


 水色の髪に銀の目は神様に愛された証、


 だから少女は父様にもレオンにも愛されるのだろうか?


 私と違って愛されるのだろうか?


 ――ずるい。


 顔が嫉妬に歪む。


きっとこの先、彼女を愛してくれる人間はいっぱい居るのに、少しくらい分けてほしい。少しくらい私に――。


 お人形のように整った顔がこちらを見ている。


「あの子は、だれ?」

「君が知る必要のないことだよ」


 聞こえてきた会話に心がバラバラになるかと思った。

 軽く目を見開いた彼女の顔は白い。


『ずっと意識が戻らなくて――』


 侍女が言っていた言葉が頭の中で反響する。


 少女の顔が曲がり角の向こうに消えた。


 黒い感情が胸を支配する。


 ずっと意識が戻らなかったのなら――これからもずっと、永遠に、


「眠り続けていればよかったのに……」


 頬に涙がこぼれ落ちた。




  


  ボタンもだけど容量が……

  次はアルトレルがフェルニアの血を吸います。

  投稿は今日の午後4時です。

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