永遠に
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今回の視点はレオンの姉です。
甘いのは次から、
母様が、亡くなった。
それは唐突で、誰も悲しまなかった――私とレオン以外は。
母様は、父様の子供を殺そうとしたらしい。
誰も、まさかなんて言わなかった。
なぜなら皆見ていたから、レオンの傷を。
聞いていたから、レオンの悲鳴を。
知っていたから、母様の歪んだ思いを。
全部知っていて、それでも誰も何も言わずに知らないふりをした。
私も……。
怖かったのだ。そう、母様が怖かった。
レオンに振り下ろされる手がいつこちらに向くのかと、光に反射するナイフの刃がいつ自分を捕らえるのだろうと……父様は私たちに関心がなかった。
誰も止めない。何も言わない。
私たちは全てに耳と目を塞ぎ、レオンの存在を無視し続けた。
レオンはそれでも暴力に耐え、ただ一心に自分に伸ばされる手を欲していた。だから母様が亡くなった後、彼は毎日のように花を持って出かけている。
顔色が悪く、元々細かった食も更に細くなった。
母様のことが好きだったのだと、悲しんでいるのだとずっと思っていた。
今なら――それが間違っていたことだと分かる。
『ね、レオン』
三日前――私はレオンの部屋を訪ねた。
『母様のとこに行くのだったら……私も一緒に行きたいのだけど』
いいかな? と言う言葉はレオンに腕を振り払われて口の中で消えた。
冷たい目に映るのは明確な嘲りと蔑み、嫌悪、そしてほんの少しの憐憫
。
『なにを……言っているんですか? 今更、家族のように馴れ馴れしい態度で接してこないでください』
そのまま早足で部屋から出て行ってしまう。ぺたんと床に座り込んだ。
意味が、分からない。なんてことはない。
でも分かりたくなかったのだ。
どこかで、自分は自惚れていた。レオンのことを甘く見ていた。
レオンは私を拒絶することがないと……一つ年下のいつもにこにこ笑っていた弟レオン、食事を抜かれてもお皿を投げつけられてもただ黙っていた。ただ笑っていた。
私は時折投げかけられる、縋るような視線に気づかないふりをして――あぁそうだ。
今更何を、本当にそうだ。
助けてほしかったときには視線すら合わせず、いらない時に馴れ馴れしく寄ってくる。
確かに――醜い。
こっそりとレオンの後をつけて行き、やがて彼は奥まった部屋の中へ入っていく。出て来た時には花束を抱えてなくて、母様のお墓に添えたのではないのだと落胆し、自分の勘違いに笑いさえこみあげてきた。
その部屋に誰がいるのか知ったのは今日、侍女にやっとのことで聞き出して、あそこの部屋には母様が殺そうとした子供がすんでいると知った。
入ろうかどうか悩んでいたら、突然大きな音がして、物陰に隠れた瞬間ドアから誰かが飛び出してきくる。
長い水色の髪が印象に残り、他はよく見えない、しかし私は大きく目を見開いた。水色の髪、それはまだ母様がやさしかった頃、話してくれたものだ。
それは神様に愛された証、ふわふわとした足取りで付いていくと、女の子が転びそうになり、息をのんだ時には父様が優しく抱きかかえていた。
心臓が嫌な音を立てる。
「なん、で……」
優しそうな顔、声、手つき、一度も私にはしてくれたことなかったのに……
「どうして……?」
水色の髪に銀の目は神様に愛された証、
だから少女は父様にもレオンにも愛されるのだろうか?
私と違って愛されるのだろうか?
――ずるい。
顔が嫉妬に歪む。
きっとこの先、彼女を愛してくれる人間はいっぱい居るのに、少しくらい分けてほしい。少しくらい私に――。
お人形のように整った顔がこちらを見ている。
「あの子は、だれ?」
「君が知る必要のないことだよ」
聞こえてきた会話に心がバラバラになるかと思った。
軽く目を見開いた彼女の顔は白い。
『ずっと意識が戻らなくて――』
侍女が言っていた言葉が頭の中で反響する。
少女の顔が曲がり角の向こうに消えた。
黒い感情が胸を支配する。
ずっと意識が戻らなかったのなら――これからもずっと、永遠に、
「眠り続けていればよかったのに……」
頬に涙がこぼれ落ちた。
ボタンもだけど容量が……
次はアルトレルがフェルニアの血を吸います。
投稿は今日の午後4時です。




