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妖精は薔薇の褥で踊る  作者: うさぎのたまご
一章 妖精が踏みしだくは薔薇の花
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傷ついたもの

――……思い、出した。


 フェルニアは父の腕に抱かれて、廊下の陰からこちらを見ている少女を見つめた。


 茶色いふわふわとしたくせ毛に、淡いピンク色の目尻が垂れた可愛らしい顔立ち、彼女の名はリゼリア・ブラッドベリーだ。


 ゲームの中ではライバルキャラになっていて――このゲームの中では何人か悪役がいるが、悪役の中では一番人気が高かった。なぜなら彼女がライバルになるのは婚約者の王太子と弟のレオンのルート、逆ハーレムを選んだ時だけ、他の人のように相手に歪んだ愛情を押し付けてもおらず、かといって愛してないわけではない。


 主人公に嫌がらせをするのも、本当は彼女ではなくその取り巻きで、ハッピーエンドでは自分で責任をとって家名を捨てる。しかし、ヤンデレてしまうとヒロインを殺そうとし、それを止めようとした王太子かレオンに殺されるバッドエンドとなる。


そしてヒロインを守るためとはいえ仮にも婚約者、姉を殺してしまった彼らはヒロインと結ばれずに別の国に留学、あまりにも可哀想すぎる。


主にリゼリアが。


 だってこれ、彼女は全く悪くない。


 ずっと思い続けていた婚約者に恋人、それもぽっと出の女がなったりしたら、取り巻きが騒ぐのも当たり前だし、彼女の知らない所で巧妙に行っていたので、最後の最後にしかリゼリアには分からない。


弟のことだってずっと大事にしていたのに、突然恋人を作ったりしたら、気になるのも当たり前。


 取り巻きはリゼリア様の為にと言う免罪符を振りかざして、本心は自分以外の人間が憧れのあの人に近づくなんて許せないわ。と幼稚な嫌がらせを行っていたに過ぎなく、責任を取る必要なんか微塵もないどころか、慰謝料を請求してもいいくらいだ。


 詰めが甘いとか監理ぐらい徹底したらとか、人を見る目がないとか責められる点は多々……少し自業自得な面もあると思うが、この結末はそれを踏まえても微妙だ。


 しかしそんな健気な彼女の他にもライバルは後三人、この三人はヒロインのことを殺したいほど憎む正真正銘のライバルキャラ。逆ハーレムエンドではリゼリアを含む彼女たち四人を一度に相手にするので、必ず一回は誰かに攻略対象を奪われてしまうという現象がおきてしまう。


 そんな彼女の過去、ヤンデレになった時ついに明かされるのだが、確か幼い頃に深く両親の言動に傷ついた……と、確かゲームの中で彼女はブラットベリー家の一人娘で、父親にも母親にも相手にされず弟を可愛がることで自分の心のバランスをとっていた……。


 ゲームではレオンに対するエヴィータの暴力は殴る蹴るなど、そこまで行きすぎてはいなかったのに、ナイフで刺す――なぜここまで激しくなったのだろう? 少し疑問に思うが、理由が、レオノールがもともと愛していた亡くなった女性をいまだに愛していて、自分を見てくれないからだったので、その娘の自分がいたことで酷くなったのだろうと納得した。


 じっとその顔を見つめ、その目が深く澱んで傷ついたように揺れているのが分かった。もうイベントは済んでしまったのだろうか?


 しかしその姿も角を曲がったために消えてしまい。


 今はアルトレルに以上に重要なことはないとフェルニアは考えることを放棄した。


 まさに今この瞬間、彼女の心の傷になるイベントが進行しているとも知らずに……。


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