表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妖精は薔薇の褥で踊る  作者: うさぎのたまご
序章 薔薇は水がないと生きていけないように……
1/38

ある女性が言った


ある女性が言った。

『これは呪われた子よ』と

赤子はそれをまどろむ意識の中で聞いていた。

乳母はそれに赤子を取り落とし、

賢者は祈るように目を閉じた。

床に落ちた赤子はそれでも泣き声一つ上げない。

これがこの世界に来て初めて聞いた声

そしてこの先、一生聞くことのなかった声でもあった。


**************************


鏡に映るのは腰までのばした藍色の髪に金と紫のオッドアイの目を持つ少女、顔立ちは妖精も恥じ入るほど美しいのに雰囲気は暗く沈んでいる。


その姿を見て、私、フェルニア•ブラッド

ベリーは小さく溜息を吐いた。




『母様はなぜ会いに来てくれないの?』


以前父に聞いたことがある。父は困った顔をして無理やり微笑んだような顔を形作った。


『母様は体が弱い人なんだ。だから無理をさせてはいけない』

冷たい目、冷たい口調、暖かい笑顔には騙されない。


嘘だとすぐにわかった。当たり前だ。どこの世に体が弱いからという理由で一度も子供に会いにこない母親がいると言うのか、でも首を縦に振るしかなかった。


私は呪われた子らしい。らしい、というのはあまり覚えていないからだ。


私には珍しいことに赤ん坊の頃の記憶があった。だから生まれたばかりの記憶も多少は残っている。そこで、多分、母が言った。呪われた子とーー。


だから私は母に会えない。父は冷たい目で見る。友達もいない。侍女は私を恐れる。兄妹がいると聞いたが、会ったことがない。いるとしたら彼らも閉じこめられているのだろうか? 美しい朽ちることない檻にーー。

カチャリとドアが開く音がする。


「だあれ」


少し拙い感じになってしまったのはあまり喋らないから、誰だろうと思い、どうせ父様か家庭教師だろうと期待を打ち消した。


どうせここから出すつもりがないのなったら家庭教師なんていらないと思うが、他の誰でもない『父様』からの『お願い』だ。

振り返って大きく目を見開く。


そこにいたのは息が止まるほど美しい顔をした少年だった。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ