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わたしは教師、アスティア・ルッケンブルム(1)

更新が遅い

「・・・・・」


 木漏れ日差す森の中、小さな小川の側でわたしは切り株に腰掛けて静かに読書にふける。

森の外は刺すような太陽で鬱陶しくなるくらい暑いがここは森の中に加えて側に小川があるので涼しく感じる。

僅かに差し込んでくる強烈な日差しも唾の広いよれよれの尖り帽子のお陰で全然気にならない。今、この時間は読書に持ってこいの時間といえよう。

 ちなみに今読んでいるのは私が月5日ほど教鞭を奮っているダルタニア学院の教科書。どんな内容なのかなと興味を持ったので学院の教授から借りて読んでいるのだけど。


「・・・・半分くらいいらない内容ね」


 内容はほんとどうでもいいモノだった。

 基礎系統についてや、それをイエステンで正式に纏めた経緯はまぁ良しとしよう。この国での系統確立を知るのも魔導を納める為に必要な事だと思うし、神に供物(魔力)を捧げて魔法を発動するというのもイメージを確立を事象と成す為に必要な事だ。

 王家特有と言われる系統外魔法である時間干渉魔法の紹介も系統外魔法でこういうのもあるという例として記載しても文句はない。


 問題なのは記載されている魔法の創造者の経歴が教科書の半分以上を占めていることである。

 学院に学びに来て興味もない他人の経歴を延々と学ばされる。これでは魔法学を学んでいる意味がない。

 さらに私を驚愕させたのは


「ニブルヘルムのDランク魔導士が使う魔法がこの学院で教える卒業規定の魔法だなんて・・・」


 ぼったくり学院のレベルの低さだ。

 ダルタニア学院を卒業するためには教師に勝ってなおかつ下章

第一節の魔法が扱える事が条件となっている。


 魔法には低級から順に『始章』『下章』『中章』『上章』『終章』といった区分がされている。これの始まりはイエステンが始まりとされ、魔法を一つの物語に例えた等級区分どある。

 そして第○節とは魔法に持たせる事象についてである。詳しいことはまたおいおい話すとして 


「そろそろ作戦会議終わったかな?」


 パタリと読む気の失せた教科書を閉じてわたしは座ったままに周囲を見渡す。

丁度森の方に視線を向けた時、キラリと何かが光った。

それに合わせて私は立て掛けておいた杖を取り


阻め(シーリア・)水よ(ウル・ディーネ)


 “下章第一節水系統魔法”を詠唱した。

 杖の先に集まった水分は水球となり、私を覆い隠す程の大きさの円盤、盾となった。

 直後、水の盾にぶつかってきた火球。水を僅かに蒸発させて消えたそれを見て私は小さく笑みを浮かべる。

 成長してるなぁと物思いにふける間もなく今度は背後の小川から水柱が上がった。それはまるで蛇の如くわたしに向かって襲い掛かる。


凍れ(セシリア・)形なきモノよ(デミ・ディーナ)


 しかし慌てない。冷静に私は襲い掛かる“下章第三節水系統魔法”を“中章第一節氷系統魔法”で凍らせ


貫け(スピニア・)大地よ(ギガ・ダイナ)


 さらに“中章第一節地属性魔法で砕く。


 空気中に舞う粉々となった氷。それを確認した後に私は一周するように杖を奮い


水よ、矢となりセシルート・アルテミシア・迎え討て(テムス・ウォーリア)

 

 魔力にモノを言わせ大量に作り上げた水の矢を隠れているであろう“生徒達”向けて放った。








 






「ティア先生!あれほど無差別に魔法は打たないでっていったじゃないか!あれは死ねるから!ホントに死ねるから!てか見学組に死にかけた奴出たから!!」


「あっはっは。まぁ死ななかったからいいじゃない。というか無差別じゃないし、ちゃんとギリギリを狙ったし」


「ダメだこの人・・・」


 私は切り株に腰掛けながら目の前に座る生徒達から批難の眼差しを受けながら高笑いしている。

 先程までやっていたのは魔法による模擬戦。私、アスティア対生徒3人一グループの魔法戦だ。

 只の撃ち合いだったら魔法の練習にもならないのでこうして様々な地形で本番さながらの模擬戦をしているのだ。

 ちなみに今、私に文句を言ってきているのはクラストップの秀才で名前をロイ。風系統以外の基本系統を使え、先程の下章第三節水系統魔法である水の蛇は彼の魔法である。


「というか先生。全員が詠唱を終わらせる前に仕掛けてきましたね」


「全員の詠唱を待つなんて只のバカのやることよ。大方セリスの風系統魔法が詰めだったんじゃないの?それに二人分後手に回ってあげたじゃない」


「いや、二人分ぐらいじゃ先生に一発は無理ですよ」


 私の言葉に小さくなったのはクラス委員長的存在である女の子。名前をメイ。ロイの双子の妹で風系統に特化している。


「アルベルトも最初だけじゃなくてもっと前に出てこないと」


「はい」


 小さく返事をしたのは前髪で目元を隠した男の子。名前をアルベルト、彼は火系統と剣術が得意なのだか性格なのかあまり前に出ようとしない。


「アルベルトはクロアから剣術に関して及第点もらってるんだから魔法剣を駆使して攻めていいのに」


「先生に白兵戦挑むのは自殺行為」


「まぁ、突っ込んできたら遠慮なく焼き払うけど」


「教師の台詞じゃねぇ」


 そんな特徴ある三人だが彼らは私が見積もるに学年トップの実力者。教科書に載っていない魔法を教えたらロイは三属性を直ぐに覚え、メイは風の中章を操り、アルベルトは剣を奮いながらの下章三節を行使するまでになった。

 他の生徒も下章二節までなら楽々と行使できる。

 魔法面においてはおよそ半月の時間で卒業水準に達してしまったのである。

 それがどういう事を意味するのか。

 名門と呼ばれるこの学院の指導方法、教育理念に問題があるとしか言えないのだ。


「ま、冗談はさておいて皆わかってると思うけど、使えるからって無闇に自慢したり人に向けたりしたらだめだからね?」


「わかってるよ先生」


「私達も魔法師団、騎士団の受験資格は欲しいですから。貴族の人達から何を言われても我慢します」


「いや、それもそうなんだけど―――」


「大丈夫ですよ先生」


 ニコニコと笑う生徒達。

 私は苦笑しながら小さくため息をつき、全員に向けて今日の授業の終わりを告げる。



「それじゃ今日の授業はおしまい。次に来るのは来週になるからそれまでに魔導士組は等級は問わないから新しい実用性のある魔法を一つ覚えること。魔剣士組は魔法剣、及び付与魔法の錬度を上げておくように」


「「はーい」」


 笑顔での返事をした後に生徒達は自分達のグループ毎に真っ直ぐ自分達の住む街へと向かう。

 これも私が街の外での動きかたとして教え、実践させている。

 いくら魔法の、魔法剣の手札が増えても所詮実戦経験のない子供。ゴブリンの群れや、野党に単独で敵う訳がなく。故に学外ではスリーマンセルを組ませ、トラブルの時は真っ先に逃げるように言い聞かせた。その為、始めに目眩ましの魔法や土煙をあげる魔法も教えある。

 また、その他保険も掛けてあるがそれはおいおい話すことになるだろう。


「先生、明日帰るんでしょ? だったらウチに来てよ」


 街に向け歩く私に歩幅をあわせて顔を覗き込んできたロイが提案してくる。


「ぜひウチの宿に泊まっていってください。お母さんも先生に会いたがってました」



 反対側をメイが陣取り兄の提案に乗っかって。


「親父も先生に挨拶したいって」


 背後にアルベルトが立つ。


「あんた達レディを取り囲むのはやめぃ。まぁ、学院が用意した宿に泊まるよりはメイ達の実家に泊まった方が楽しそうよね。分かったわ、学院に挨拶してから向かうからあんた達は先に行ってらっしゃい」


「わかった。それじゃ先に行ってるから」


「お待ちしてますね」


「また後で」


 笑顔で走り去っていく三人を見送る私。さてさて、生徒のお宅にお邪魔するのだからお土産でもと考えながら歩みを進めた時に首筋をチリチリと不快な感覚が襲った。


「アンタ、ニブルヘルムにいたんじゃなかったの? てかこの不愉快なモノさっさと退けなさい。消し飛ばされたいの?」


 杖の先で地面を叩く。同時に足元から噴き出す白銀の光。


『ギャアアイアアアア!?』


 その光は私の首筋にすがり付いていた“不快”を断末魔と共に消し飛ばした。


「オイオイ! 問答無用に消し飛ばしてんじゃねぇか!?」


 光が収まった後に森の奥から現れたのはグレーのフードつきコートを身に纏った男性。


「今の只の地縛霊に使う威力の浄化魔法じゃねぇぞ!?」


「私の憩いの時間を邪魔した奴が悪い」


「すまねぇ、名も知らぬオッサン。強制成仏は辛かろうに」


「どうでもいいけどなにしにきたのよブーゼル・ヴァンフォーレ」


 かつて大陸を火の海に包んだ魔帝の一角、死霊公爵その人だった。


「どうでもって・・・まぁ、いいか」


 納得いかな気な彼は頭を軽く掻いた後、真剣な表情で私を見つめ言った。








―――― (死霊公爵)の存在がバレた

こんなのでも読んでくれてる人に感謝を

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