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おとぎ話 悪い桃太郎

作者: Jウォーカー
掲載日:2026/03/30

ある日のこと。おばあさんが川で洗濯をしていると、どんぶらこ、どんぶらこと、とても大きな桃が流れてきました。

「なんと大きな桃じゃろう!」

おばあさんはそう言って、その桃を家へ持ち帰りました。


家でおじいさんと一緒に桃を割ろうとすると――なんと中から元気な赤ん坊が飛び出しました。

二人はたいそう驚きましたが、それ以上に喜びました。

「桃から生まれた子じゃ。桃太郎と名付けよう」

こうして桃太郎は二人のもとで育てられることになりました。


しかし、この桃太郎、少し変わった子でした。

優しくはありましたが、何よりも「お金」が大好きだったのです。

きらきら光る小判や宝石を見ると、目を輝かせて言うのです。

「世の中はお金だよ。お金があれば、なんでもできるんだ」


やがて桃太郎はあっという間に大きくなり、ある日、おじいさんとおばあさんに言いました。

「鬼ヶ島に宝がたくさんあると聞いたよ。ぼくはそれを取りに行く」

「鬼退治ではないのかい?」とおじいさんがたずねると、

「違うよ。宝をもらいに……いや、取りに行くんだ」


おばあさんは心配しながらも、きび団子を持たせました。

桃太郎はそれを袋に入れて、意気揚々と旅に出ました。

剣を五本背中に背負い、軽い鎧を身に付けています。


道の途中、桃太郎は一匹の犬に出会いました。

その犬は、きちんとした姿勢で立つ、真面目そうな女の子でした。小麦色の着物を着て、黒縁の眼鏡を付けています。

「桃太郎さん、その袋には何が入っているのですか?」

「やあ、シバちゃん。これは、日本一のきび団子だよ」

「一ついただければお供します……ですが、その前にお聞きします。本当に鬼ヶ島へ行く理由は正しいのですか?」


犬は、正義感の強い優等生でした。

桃太郎の目的が「宝を奪うこと」だと知ると、眉をひそめました。

「それはいけません。盗みは悪いことです。私はあなたを止めるために同行します」

桃太郎は笑って、きび団子を一つ渡しました。

「好きにすればいいよ、シバちゃん。でもぼくは行くからね」


さらに進むと、今度は猿に出会いました。暗めの赤褐色の着物を着た女の子です。

桃太郎よりも縦も横も大きな女の子です。

猿はお腹をさすりながら言いました。

「その袋の中、おいしいものだよね?ちょうだい!」

「いいよ、さっちゃん」

桃太郎がきび団子を見せると、猿は目を輝かせました。

「その一番大きいのくれるの?じゃあお供する!お金があれば、ごはんもいっぱい食べられるでしょ?」

こうして食いしん坊な猿も仲間になりました。


しばらくすると、空からキジが舞い降りてきました。

オレンジの着物で、真っ白なスカーフを巻いている小柄な女の子です。

「ねえねえ、何してるの?面白そう!」

「あのね、ケンちゃん」

桃太郎が鬼ヶ島の話をすると、キジは楽しそうに笑いました。

「鬼を困らせるの?それ絶対面白いじゃん!私も行く!」

こうして、好奇心旺盛なキジも加わりました。


四人はやがて鬼ヶ島にたどり着きました。

しかし、そこに広がっていたのは、恐ろしい鬼の巣ではなく――

静かで平和な暮らしをしている鬼たちの村でした。

鬼たちは畑を耕し、子どもたちは遊び、穏やかに暮らしていたのです。


犬は言いました。

「やはり悪い鬼などいません。帰りましょう」

しかし桃太郎は首を振りました。

「でも宝はあるはずだ」


桃太郎は強引に門を破り、仲間たちとともに鬼の家へ押し入りました。

猿は食べ物をあさり、キジは面白がって鬼たちをからかい、桃太郎は宝物を集めていきました。

犬は必死に止めましたが、誰も聞きませんでした。


鬼たちは突然の出来事に驚き、恐れました。

「やめてください!それは私たちの大切なものです!」

しかし桃太郎たちは耳を貸さず、ついにたくさんの財産を持ち去ってしまいました。


悲しみにくれた鬼たちは話し合い、ついに決心しました。

「こんなことは許されない。助けを求めよう」


鬼たちは人間の世界へ行き、警察に事情を話しました。

真面目に暮らしていた証拠や、奪われた品々の記録もきちんと持っていました。

警察はすぐに動きました。


一方、桃太郎たちは宝を抱えて帰る途中でした。

猿は大喜びで食べ物を頬張り、キジはずっと笑い続けていました。

しかし犬は黙ったまま、悲しそうな顔をしていました。


そのとき、後ろから声がしました。

「そこまでです」

振り返ると、警察と鬼たちが立っていました。


桃太郎たちは逃げようとしましたが、すぐに捕まりました。

鬼たちは言いました。

「どうしてこんなことをしたのですか」

桃太郎は何も言えませんでした。


裁きの場で、桃太郎たちは自分たちのしたことを認めました。

猿は「お腹が空いてたから」と泣き、キジも「面白いと思っただけ」とうつむきました。

犬は静かに言いました。

「私は止められませんでした。ですが、この人たちは悪いことをしました」


桃太郎は初めて、自分の行いの重さを知りました。

「お金があればいいと思っていた。でも違ったんだ……」


鬼たちに財産はすべて返されました。

そして鬼たちは、元の平和な暮らしを取り戻しました。

畑には再び作物が育ち、子どもたちは安心して遊べるようになりました。


鬼たちは言いました。

「もう争いは望みません。ただ、静かに暮らしたいのです」


こうして鬼たちにとって、本当の意味でのハッピーエンドが訪れました。


一方、桃太郎たちはそれぞれの過ちと向き合うことになりました。

桃太郎は、お金よりも大切なものがあることを、ようやく学び始めたのでした。

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