人造悪魔
女神教と女神正教の信徒の奪い合い加速し、帝国の内戦という形で大きく現れた。我々の300年の友情は何も意味をなさなかった。
そして、そうなって初めて私は自分自身の気持ちを認識する。我々のせいで人々が争うことに何も感じないのだ。いや、完全に何も感じないとは言わない、けれど、300人の不老不死の友のうち帝国で女神正教を布教した2人が不老不死の者さえ殺す力をもつ神々の世界の者に殺された。その事が戦争の多数の犠牲者を出した事よりショックが大きかったのだ。
神々の世界からこちらの世界への召喚に応じた11匹の獣の神、特に大きな力をもつキムンカムイは不老不死のものさえ殺す。女神教、女神正教にとって大きく信仰は揺らぐ、不老不死は完璧ではない。
不老不死が完璧でない事にショックを受けたのではない、恐らく私と私の友300人は信徒の奪い合いなどもうどうでもよくなっている。それが恐ろしい。
どうでも良い事の為に数千万の人が死ぬ戦争を起こし、やはりどうでも良いと感じた事が恐ろしいのだ。いや全くどうでもいいとまではいわない。心を失った訳では無い。ただ私は敵対したとはいえ、かつての友2人の死は、戦争の数千万の犠牲者、そして既に死んでしまった妻や子や孫の死以上に衝撃を受けている。
「今から起こす事は人としての格の変化。命に関わる場面なら、大事に使った道具より、大事に飼ったペットより、見知らぬ他人が大切、信仰の為に人を殺す者は少なくはないけれどそれは、利益が絡む時や身を守る時で、何もなければ人が大切。やはり格の近いモノを最も大切にする」女神は我々を不老不死に変えるときそのような事を口走った。
我々は不老不死に変えられる時にやはり何かを変えられた。恐ろしい。
恐怖に負けた女神正教はいよいよ悪魔を召喚した。
獣の神を殺すためだった。そしてそれ以上に戦争の責任を押し付けるためでもあった。我々にも秘密裏に相談が来ている。友の誰かがそれに応じた。
月の民と呼ばれ1000年以上も迫害され続ける民族の王家の傍流の少女サラを生贄に捧げる。まだ帝国の内乱が起きてはいない頃、かつては幾つもあった月の民の国は既にすべて失われている。そんな中月の民の生き残りの少女は帝国により住処を追われ、両親は殺される。両親の死からようやく立ち直った頃、育ての親も殺された。育ての親は月の民ではない。女神教ではなく、19人の神々の世界の王を信仰していた。
一時迫害が緩んだ頃、サラ含め3人の月の民の王家の血をひく少年少女が出会う。女神正教はそれを利用する。帝国の内乱に乗じて、国の再興を測るように唆したのだ。月の民は謎の民族、かつての三女神のように、我等の女神を借りずとも不老不死となる者が生まれやすい民族。彼等3人もそのような素質をもっている。彼等の民族は神々の血を引いているからだと信じていたが迫害され続けるうちにその事を口走らなくてなったている。サラは戦争の中にあってさえ誰も殺す事はせず、キムンカムイさえ自分達の世界に返しただけであり。後の2人のうち1人は死に、1人は無事国を手に入れる。
戦争の中、不老不死の者特有の強大な力で戦い、そしてそうでありながら自らは一人も殺めずに戦争を終わらせた少女サラは、戦争の責任を負わされ悪魔と呼ばれるようになった。
力は見せてはいけないのだ。彼女は戦争を終わらせるために力を見せた。
彼女は今日も女神教、そして女神正教から追われ続けている。彼女の力は我等を超えているだろう。それでも彼女は追われ続けている。
人々を守る為に他の神を殺す者は神と呼ばれ、そしてその殺された神に守られていたものからは悪魔と呼ばれる。彼女は人はもちろん神さえも殺さなかった。彼女は神にならぬまま悪魔となった。これを人は人造悪魔と呼ぶ。




