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間章 夢
僕は、夜が嫌いだ。
僕は、寝るのも嫌いだ。
いや、違う。僕が嫌いなのは、夢だ。
この身体は、眠りを必要としない。
それでも昔は、僕も目を瞑って空想にふけることが多々あった。
そう、あの日までは。
目を瞑るたびに脳裏に浮かぶ、何十年も前の記憶。あの恐怖に満ちた目、鮮血の匂い、真っ赤に染まった床。
これは、僕の記憶だ。きっとこれは夢とは呼べない。
今でも覚えているのは、大切な人を守れなかった無力さと、無実の人をああも無惨に傷つけた “あいつ”への怒りだけ。
忘れない、あの後ろ姿。長い金髪、手に握られた大きな戦鎚に、2本の剣のクロスの紋章の鎧。
そして、深海を覗き込むような、あの、瑠璃色の瞳。
あと、それとは別の、血の記憶よりもさらに昔の…何もかもが存在しない、冷たい『無』の記憶。
だから僕は寝るのをやめた。
だから僕は、眠れない。
だけど、君は本当に幸せそうに寝る。そんな君の安らかな寝息を聞くたびに、僕は考えるんだ。
…君は一体、どんな夢を見ているんだろうか。
ってね。




