世界で一番有名な理想のアイドル
そのアイドルは、嫌がらせにも嫉妬にも動じない。
何か悪戯されて、持ち物を隠される事は日常茶飯事だ。
出演する番組やコンサートの情報を間違って伝えられる事も多い。
なぜなら、そのアイドルはとても可愛くて、可憐な美少女だったからだ。
たくさんの人の心を虜にした結果、多くのアイドル達から嫉妬をかった。
しかし、そのアイドルは、嫌がらせにも嫉妬にもまるで動じない。
いつでも、どんな時でも、にこにこと笑顔を絶やさずにアイドル活動を続けている。
そんなアイドルを見た業界関係者は、逆境にめげずに頑張る、健気な姿に感動し、ますます彼女を表舞台へと引き立てる。
しかし彼女に嫌がらせをしていたり、嫉妬をしていた者達は、気味悪がって、距離をとるようになった。
数年後。
そのアイドルは世界中の人たちが知るような有名なアイドルになった。
多くの人を笑顔にする、アイドルの中のアイドル。
人々の心の中にある理想を反映した、完璧なアイドルとして君臨していた。
それくらいになると、そのアイドルと張り合おうなんて考える者など存在しなくなっていた。
その結果は、当然だった。
なぜなら……。
マネージャーが控室に戻ってきたアイドルを出迎えて、コードを手渡す。
「はい、次の出番は長いんだから今の内に充電しないとだめよ」
「はい、わかりました」
「疲れもしない、感情に振り回される事もない、問題を起こさないし、こんなに便利なら他のアイドルもこの子と同じものを採用しようかしら」