あとがき
作者の蒼井凌です。ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます。
スカートがめくれてしまう――そんな出来事は、いつの時代も「恥ずかしいけれど、ちょっと笑える話」として消費されがちです。けれど、その「見られる側の怖さ」や「心に残る傷」に、もっと真剣に向き合いたいと思い、この物語を書きました。
スカートがめくれることの“恐怖”を、正面から描いた物語は、少なくとも私自身の中にはあまり記憶がありませんでした。社会の中でも、“触れてはいけない話題”として避けられてきた印象があります。
それでも、あえてこのテーマを書いたのは、今の時代だからこそ、こういった物語が必要だと思ったからです。恥ずかしさの奥にある「声にならない感情」や「知られたくない脆さ」を、少しでも丁寧に描けていたなら幸いです。
本作「葵と綾、そして風 -First Edition- 」は、ChatGPTの力も借りつつ、自分にとっては初めて執筆した作品とも言えるものでした。そのため、未熟な点も多く、次作を構想したり、改めて本作を読み直す中で、この「First Edition」は──よく言えば“綺麗に”、悪く言えば“お高く”まとまっていると感じるようになりました。
そこで、二人の感情描写をもっと深めてみようと、「葵と綾、そして風 -Rewrite Version- 」の執筆に取りかかりました。当初はほんの“手直し”程度のつもりだったのですが、書き進めるうちに展開がまるで別物になってしまい……書き終えた時には、正直途方に暮れてしまいました。(苦笑)
物語としての完成度でいえばRewrite版の方が上かもしれません。でも、未熟ながらも綺麗にまとまっていたこのFirst Editionにも、やはり思い入れがあって……。
そこで、これはこれでひとつの「かたち」として、残すことにしました。
執筆しているとき、そして公開に踏み切ったときは、本当に怖かったです。ともすれば重く受け止められるか、いかがわしいものとして批判されるか、この物語が世に受け入れてもらえるのか、とても不安でした。本作に始まる「葵と綾」の物語に価値を感じてくださる方がいらっしゃるのなら、本当に喜ばしいことです。
「葵と綾」のシリーズは、もう少し続く予定です。「葵と綾、そして風 -Rewrite Version- 」との違いもお楽しみいただければ幸いです。
また次の物語でお会いできることを願っています。
蒼井 凌