学園
おお、思っていたよりも、ずっと大きいな。ここが、クローズ王国のフィアトリア学園か。
この学園は、国王の名において、家の権力を振りかざすことを禁じられている。
つまり、実力主義なのだ。集めた情報によると、クローズ王国の周辺国からも優秀な生徒がやってくるらしい。
この入試、手抜きはしない。全て全力で取り組む。
「ちょっと!アンタ、いい加減にしなさいよ!この子が嫌がってるじゃない!」
「何だと!?このオリバー・キャンベルが貴様の様な低級貴族に声をかけてやっているのだぞ?嫌がることなど、何一つない!」
…大体わかったかな。何で揉めているのか。
そこには一人の男が二人の女性に詰め寄っている、という光景が広がっていた。
「あの~、この学園で家の権力を振りかざすのは禁止されているのですよ?」
俺はその間に入って言う。
「何だ貴様は?名乗れ、無礼者め。」
男、オリバーと言ったかな?が、俺を睨んで言う。
「俺はウィリアム・マーティン。貴族ではないね。」
俺は名乗る。
「え…」
「え!?『マーティン』って、勇者様の!?」
後ろの女性二人が驚きの声をあげる。
「な、何だと!?ふ、フン、まあ、もうすぐ試験だ。今はこのぐらいで勘弁してやろう。」
と言い残し、オリバーは足早に去って行った。
…おじいちゃんって、思っているより有名な人なのかな?
「ふう、ありがとね。助かったわ。…あの男、本当にしつこくてね~。あ!ごめん、名乗ってなかったね。私はリリアン・コールマンよ。で、こっちが…」
「あ、えと、ソフィア・クロフォードと申します。あの、ありがとうございました。」
彼女たちは自己紹介をする。
…え!?俺はもう一度ソフィアの顔を見る。
彼女も俺を見ている。
俺も見つめ続ける。
…やばい。この子、滅茶苦茶、可愛い。
細い手足に、人形のように整っている顔。その髪は美しい水色で、腰位までの長さだ。身長は俺より少し低いくらい。そして、十五歳にしては大きいソレが存在感を放っている。
…一目惚れって、本当にあるんだな。
「お~い、早くしないと試験始まっちゃうよ?」
リリアンが聞いてくる。
「ああ、じゃあ、行こうか。」
二人とは会場が違うのでそのまま別れた。
筆記試験と実技試験が終わり、帰宅する。
試験内容はあまり覚えてないけど、大丈夫だと思う。
今はそんな事より、あの子、ソフィアの事で頭がいっぱいだ。
彼女は試験を通過したのだろうか。同じクラスになれるだろうか。…
知りたい。もっと、彼女の事が知りたい。
…ああ、やっぱり、俺は彼女に恋をしている。
ソフィアは俺の事、どう思っているのだろうか。
・・・
そういえば、あの男、オリバーとか言っていたが、ソフィアに目をつけていたような…
ッ!まずい!俺がアイツなら、試験が終わってから彼女に会いに行くはずだ。
俺はすぐに来た道を引き返し、再び学園に向かった。