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鏡の青年   作者: 紫藤 楚妖


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鏡の青年 第3話 異世界転移

ある日異世界で目が覚める。こんな体験をするのは100年後の未来ならばありふれたことなのだろう。しかし現代ではまだありふれたことではない。昨日の夜、私は晩酌をしていた。舶来のチョコレートをあてについ飲みすぎてしまった。そして目が覚めると、見覚えのない家にいた。

このように昨日の夜、寝るまでを思い返していると頭の中に声がした。

「おはようございます。誠に勝手ながら貴方様をこの世界にお連れしました。元の世界にお帰りになられる際にはこの家にある謎を解いていただきます。

なお、ご質問等は一切受け付けておりませんのであしからず」

さて困った。普通の人なら取り乱すのだろう。しかし私にはたとえこの家から出られないとしてもどうにかする方法がある。すすんで使いたい手段では決してないが。

とりあえずこの家を探索するとしよう。


どうやらこの家は平屋建てらしく2階に上がる階段が見当たらない。今のところ目覚めた寝室、浴室、トイレを見て回ったが謎らしきものは見つからなかった。そして今、客間と思われる部屋を探索し終わったところだ。この部屋にも特におかしなところはない。元の世界に帰れないかもしれない焦りよりも謎が見つからない徒労感のほうが強い。そんな気持ちを抱きながら部屋を出る。次の部屋へ向かおうとすると後ろから肩を叩かれた。驚いて振り返るとトランプに描かれるような赤と黒の縞々の服を着たピエロが満面の笑みで立っている。どう考えてもこれは危ないと感じて身近な部屋へ逃げ込んだ。幸いなことにあいつは部屋の中までは追いかけてこなかった。

「危なかった。なんだあれは」

無事逃げ込めたことに安堵しつつ入った部屋を見回す。

「ここは書斎か。こういう場所に何かヒントがあるのがお約束だが」

男は目星をつけて役に立ちそうな本を探していく。

男はある一冊の本を見つけた。

「これはつかえるかな」

男が見つけた本曰く

相手に手のひらを見せ、拒絶の意を示すことで相手を追い払う原始的な呪術が存在する。また、古今東西の神話において果物は重要な役割を持つ。この強い力を持つ果物を投げつけることでも同じ効果を持つ。ただしこれらの方法は同じ相手には1度ずつしか効果を持たない。

「ふむ、試してみるか。失敗したら奥の手を使おう」

男は慎重にドアを開けた。幸か不幸かピエロはまだ廊下にいた。ピエロは男の首に手を伸ばしながら近づいてきた。男はピエロの腕を躱しながら本に載っていた通り手のひらをピエロに向ける。

「きえろ」

途端ピエロは笑いながら溶けるように消えていった。

「とりあえず急場はしのげたな。次は果物をとりに行こう」

男はピエロに合わないことを祈りつつ果物がある可能性が1番高いキッチンを探した。

「果物は見つけた、が」

男の言う通りキッチンの机の上にカゴがあり、ミカンが山になるように置かれていた。しかし、机の上にはもう1つ、【謎】と書かれた封筒も置かれていた。

男は封筒におかしなところはないか、裏に何か書かれていないか、中から音はしないかなどを調べた。結果としてありふれた封筒という事が分かった。

「開けてみるしかないか」

男は呟いて封筒を開けた。中身は正方形のカードにそれぞれ、スイカ、↑、↓、家、ライオン、←、タバコ、→、と書かれていた。

「謎、というのはこれか」

意味の分からないカードが8枚。どうすればいいのだろうか。そのように謎解きに没頭して注意をおろそかにした男の首が後ろから絞められた。視界の隅にあのピエロが見える。抵抗しながら先ほどのように手のひらを向けながら拒絶してみるがまるで効果がない。もがきながら机の上のミカンを手に取り後ろのピエロに投げつけた。ピエロは高笑いをしながら煙を上げて消え去った。これであいつを追い払う術はなくなった。もうこの謎を解くしかない。


「という夢を見たのですよ。飲みすぎた夜に見る夢は不気味でした」

「いやー、恐ろしい夢を見ましたな。それでその謎というのの答えは分かりましたか」

「目が覚めてからしばらく考えたんですがね。大きさ順に並べたらよかったのではと思います。上下の矢印は90度傾けて、↑↓を←→にします。答えは家→ライオン→スイカ→ミカン→タバコの順に並べることだと思います」

「あれ、ミカンのカードなんてありましたか」

「あぁ失礼。説明が抜けてました。ミカンはカゴの上に入っていた本物のミカンを使います。一回しか使えないのにカゴの中には山のようにありましたから」

「ほー。灰崎さんは思考が柔軟でいらっしゃる」

「いえ、それほどでは。これが正解とは限りませんし、ミカンのくだりは無理やりですよ。それでは次はあなたの面白い夢を聞かせてください」

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