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第11話 森の探索

第1章のタイトルイメージを作ってみました。


挿絵(By みてみん)


 そういえば、この辺り一帯は王家直轄だったはずだが、ルルティナの家――グランディル侯爵家の領地に近い位置にあったな。

 付近には肥沃な地帯もあり、また川や湖もあるため川魚であれば魚もよくとれる。かくいうこの辺りも、水源はそこそこ近く、水路を引くことも十分可能だろう。

 拠点づくりが落ち着いたら、そうした大々的な開発に取り組むのもいいかもしれないな。

 今のところは三人だけしかいない拠点だが、いつまでもアリサの水魔法にばかり頼っているわけにもいくまい。

 水源が確保できるのなら、確保しておくに越したことはない。利便性の向上というのは、そういうことだ。

 さて。本日から、俺は拠点から離れて、森の調査に乗り出し始めている。

 サラは、拠点の南の方から来たのだが、サラがもともと生活していた農村も、森からほどなく近い場所にあったという。

 おそらくだが、俺達の拠点からもそれほど離れていない場所にあるのかもしれない。

 村を占拠している盗賊たちがこちらに来なければいいが……心配なところだな。

 さて。

 草やツタを適宜切り払いながら、森の中を探索しているのだが……どうにも、この森にはやはりというべきか、社会性のあるモンスターたちが生息しているようであることが、少し歩いていて判明した。

 見かけたのはデミゴブリンと呼ばれる、ゴブリンによく似たモンスターだ。

 モンスターではない、普通のゴブリンたちが褐色系の肌なのに対して、デミゴブリンたちは緑色の肌を持つ。

 ゴブリン族とは違ってデミゴブリンは魔法も苦手。

 一対一なら、それほ苦労せずに倒せる相手ではあるのだが――なにぶん、それなりに知性があり、群れをつくって生きる社会性のモンスターなので、大抵は複数隊を相手にしなければならないこともある、それなりに危険性が高い。

 狡猾な側面もあり、倒しきったと思ったら陰に隠れていた最後の一匹に不意打ちされて大けがを負った、というケースもあるというほどだ。

 自惚れてデミゴブリンに暗殺される、という諺もあるほどに、油断してはならないモンスターだ。

 もっとも――俺には、そういった心配は一切不要なんだがな。

「……それにしても。一部は食べれるかどうかわからないとして、割と実のなっている木が多いな……」

 森を歩いていて、他に感じた所見といえば、森ということもあり、やはり自然の恵みが多いことだろうか。

 特に目を引いたのは、王城でも食べたことのある果物とほぼ同一と思われる果実がいくつか散見されたことだ。

 王城では見かけたことのない実もあったが、アリサや、サラに聞いてみれば何かわかるか……などと考えて、とりあえず見つけた木の実は一応一通りもぎ取って持って帰ってみることにした。

「……あとは、よくはわからないな……。薬の材料になりそうなものがあれば、また違ったのだろうが……」

 まったく、無知というものが罪であると嫌でもわからされるな。

 追放が実行されるまでの猶予期間を使って、俺は直轄領の近年の状況が書かれた資料を読み解き、ある場所に追放後の拠点を見出した。

 それが、あの廃村だ。

 人口の減少に伴い、村としての体裁を維持できなくなり、廃された村。

 廃村ゆえに人目につくことはそれほどなく、しかし同時に街からはほどなく近い場所にあるため、買い出しにはそれほど苦労しない。

 隠れ住むにはちょうどいい立地だった。

 まぁ、旧街道は整備されていないため、整備しなければ街に買い出しに行くごとに、道なき道を歩く羽目になるのが少々難ありだがな。

 ――ただ。

 書面上で見たのと実際に住んでみるのとでは、やはり大違いだった。

 城下町でアリサと合流できていなかったら、きっと俺は近いうちに諦めて街での生活に切り替えていただろう。

 彼女には、感謝してもしきれない。

「この音は……水音か……?」

 考えながら歩いていたら、水の流れがどこからか聞こえてきた。

 資料室で確認したこの辺りの立地を鵜呑みにするならば、付近にある河川はこの森を貫く形で西から東へと伸びている。

 ……川か。

 そういえば、川はまだ調べていなかったな。

 拠点を整備するための、新しい資源が得られるかもしれないし、行ってみる価値はある。

 それに、食用可能な魚が獲れるかもしれない。

 幸い、俺は過去に王家の避暑地にあった水場で幾度となく釣りに講じたことがあったからな。

 魚釣りなら大得意だ。

 ただ、気になるのは、それと同時に時折デミゴブリンのものによく似た鳴き声が聞こえることだった。

 もしかしたら、近くに潜んでいるのかもしれない。

 負けることはないだろうが、戦うことになったとしてもそれなりの労力を割く必要が生じることになることに変わりはない。

 避けられることに越したことはないだろうし、一応注意していった方がいいだろう。

「……まぁ、何はともあれ、行ってみるか」

 水音を頼りに川を探し始める。ほどなくして、開けた場所に出た。

 目的の、川……ではなく、それなりに広い泉だったことは想定外だったが、目的の、水場には到達できた。

 まぁ、それは良しとしよう。

 ただ、茂みから様子を探ったところ、泉を挟んで反対側に、気になるモノも同時に発見してしまった。

 あれは――まさか、な。


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