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【大帝】

 ギィィィ...。


 古臭い扉のような音を立てながら【大帝】の部屋へと侵入する。


 少し肌寒いその部屋の中には氷の世界が広がっていた。


 その部屋を彩る全ての装飾品が凍りついており、まるでその世界の時が止まってしまったかのような錯覚さえ覚えてしまう程だ。


 部屋の中に入った後も警戒しながら進んで行くと、ついに奴が姿を現した。


 氷の椅子に座りながら氷の柱の中で眠る裸の少女の頬をそっと撫でている。


 白い髪のせいか人形のようにさえ見えるその少女の生命活動は既に停止しているようだが、何故か【大帝】はその者の姿を大事に保存しているように見えた。


「綺麗でしょ? フィナの体は...」


 と我に呟く【大帝】にこう返した。


「...フリーズ、我はお前と話にきたのではない、お前を殺しにきたのだ」


「...」


「...」


 その言葉を皮切りに環境が一気に低温化していくのが分かった。


 しかし、まだ攻撃してくる気配はない。


 悪魔で威嚇射撃のように周りの温度を下げただけに感じる。


「【次元龍】、今は私が話しているの、少しくらい聞いてくれてもいいよね?」


 そう呟く彼女は続けてこう述べた。


「貴方達が全員揃ってこの場に立っているという事は、【風帝】ライファー【雷帝】ミカウ【炎帝】ファウスト【邪帝】グラムゥ【聖帝】ラグネルの全員が貴方達に敗れたと言うことね、【帝王】の全てを撃破した事、それは取り合えず褒めてあげる」


 ゆっくりと燃え盛るような赤い瞳をこちらに移してくる彼女の態度は揺るがない。


 仲間がいなくなったと言うのに全くをもって動揺する気配すら見せない所はさすが【大帝】である。


 彼女は我らが目の前にいると言うのに自らの世界に浸りながら少女に向かって喋り続けていた。


「ごめんねフィナ、ちょっと邪魔が入っちゃったから後でまたゆっくり話そうね、大丈夫だよ、私は【大帝】であいつらは()()()()だからさ、すぐに片付けてこの腐った世界の終わりを一緒に見届けよう」


 彼女は氷越しに少女の唇にキスをすると我らの方に指を向ける。


「ピ...」


【大帝】がそこまで言いかけると我よりも前にアルフィが立ち入り、何やら話を始めるのでした。

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