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第三話 指揮官を失った哀れな子羊達 ~進むか退くか?少年部隊、密林の論争~



 突如、民衆の間に沸き上がった「NWOBHM」運動。


 ・・・Neo Warriors of Boys Holy Mind・・・純真無垢な聖なる心の新たな少年戦士達!


 グラムニア王国の王、ボランド三世はそんな熱病のようなNWOBHM運動を積極的に賞賛もしなかったが、禁止もしなかった。

 ・・・こんな戦闘訓練も受けていない素人少年達が軽装で(いくさ)()けたエルフ軍と対峙してもその結末は判り切っている。

 王としてはこんな暴挙は、出来れば思い止まらせたいのあるが、国民の熱狂的なNWOBHM信仰はもはや王と言えども制御出来なかったのである。



 こうして数十人、あるいは数百人単位のNWOBHMが、ブルータル・デス・エルフを成敗するためにヴェノームの森に入ったが、その後の彼等の消息はようとして知れなかった。



 ・・・純粋に国を救いたい一心で戦いに身を投じたNWOBHMの少年達であったが、その運命は過酷だった。


 グラムニア王国の国民達は知る由もないが、悪者に騙され辺境の地に連れてゆかれ、そこで全員奴隷として売られてしまった集団も数知れない。

 その目的通りヴェノームの森に分け入った集団も、途中で道に迷ったり遭難したりと、その多くは全滅の憂き目をみたのだった。

 おそらく、運よく・・・と言うべきかは分からないが、エルフとの戦闘まで漕ぎつけた少年集団は数えるほどしかないであろう。


 NWOBHM全体で数千人ほどの少年達がブルータル・デス・エルフ征伐に向ったが、国民が待ち望んでいる吉報は、いつまで経っても届かなかったのである。




 ・・・ここで話を密林の中で遭難一歩手前の少年達に戻そう。


 彼ら30人の少年達もNWOBHMとしてブルータル・デス・エルフ征伐に向った一団だった。

 グラムニア王国陸軍の元大佐で、左手を負傷して軍を退き、今は町で司祭をしている「ウオー・プリースト」の二つ名で呼ばれるセベロという男が少年達を募って結成されたこの部隊は、他のいかがわしい男達が「金儲け」の為に募集したそれと違い、純粋にエルフ征伐の熱意に燃えたものだった。


 セベロは負傷して軍を退いた後も国を護る熱意を忘れず、民衆の間で話題になっているNWOBHMの噂を聞きつけ、自分も国への最後の御奉公のつもりで少年軍を率いて戦う決意だったのだ。



 ・・・しかしセベロが指揮した「神聖隊」と命名した30人の少年達の部隊は、ヴェノームの森のかなり奥深くに入ったところで窮地に陥ってしまう。


 行軍の先頭を歩いていた当のセベロが足を踏み外して谷底に落下し、あっけなく死んでしまったのである!


 ・・・指揮官を失ったほとんど素人同然の少年達は密林の中で途方に暮れた。

 

 全員で喧々諤々(けんけんがくがく)の議論を重ね、結局、多数決でとにかく進める所まで進むことに決めたものの、広大な森の中で食料も水も底を尽き、ついには皆が動けなくなってしまったのである。


 ・・・このままでは全員餓死してしまう、故郷に引き返そう・・・。


 そんな意見が大勢を占めるなか、まだ元気そうな日に焼けた肌が精悍な少年が怒気を含んだ声で叫び、皆を見回して叱咤する。


 「引き返すなんて!それでも君達は戦士か?NWOBHMとしての誇りはないのか?僕は前進するぞ・・・たとえ一人でも進むからな!」


 ・・・彼はグラムニア王国の南にあるインサニアという海沿いの村の漁師の息子、マグリスだった。

 熱血漢のマグリスは巨石の上に上り、半ば「撤退」に傾いている弱気な集団に(げき)を飛ばす。



 「・・・でも、もう食料もないし、このまま進んでも先に何があるのかはこの中の誰も知らないじゃないか、僕達はろくな地図も持っていないんだよ・・・ブルータル・デス・エルフ達の村が本当にあるのかさえも分からないよ」


 皆がうつ向いて黙り込む中、そう反論したのは色白で華奢な少年、セリオン・・・マグリスと同い年の〇〇歳である。

 衣服は破れ、顔や手は長期間の行軍で垢にまみれてはいるが、色白で金髪の、まるで女の子のように可愛らしい美少年だった!





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