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第一話 「残忍な死のエルフ」の登場と神聖少年部隊 ~エルフ族とヒト族の全面戦争~



 ・・・ムワッとする草いきれに包まれた、鬱蒼としたヴェノームの森の奥深く。


 30人ほどの垢にまみれ疲れ切った顔をした少年達が、グッタリと地面に足を投げ出して転がっている。


 「・・・はあぁ、これからどうしよう・・・・」


 「もう四日も何も食べてないよ・・・これ以上動けないや・・・」


 「引き返そうよ!もう指揮官のセベロさんも死んでしまったんだ!・・・僕達だけでは何も出来やしないさ」


 「・・・そうだグラムニア王国に帰ろう・・・帰ろうよ!」


 「うん!帰ろう・・・この森に留まっていても犬死だよ・・・」



 ほとんど気休め程度の薄鉄の軽装鎧に、長剣や弓などの雑多な武装・・・30人ほどのこの奇妙な集団はみな少年達。


 ・・・それも〇〇歳から〇〇歳程度の、まだあどけなさの残る可愛らしい少年達ばかりだった。


 このメタリア大陸の中央に位置する深いヴェノームの森に入って既に半月余り。

 戦闘らしい戦闘はほとんど経験していない。


 ・・・もっともこんな「小僧」達が恐ろしい戦闘に巻き込まれれば、ほとんど瞬時に皆殺しにされるか捕虜になって他国に奴隷として売り飛ばされるのは火を見るよりも明らかだ。

 それを考えれば、逆に彼らは幸運だと言える。


 「引き返すなんて!それでも君達は戦士か?NWOBHMとしての誇りはないのか?僕は前進するぞ・・・たとえ一人でも!」


 まだ元気そうな、日焼けした肌が精悍な少年が怒気を含んだ声で叫び、皆を見回して叱咤する。



 ・・・殆んど水も食料も尽きかけ、このままでは戦闘に遭遇する前に密林の中で全員遭難し、餓死をするのが関の山だというのに、彼は激しい使命感に支えられているようだった。



 ・・・彼等は「NWOBHM」・・・Neo Warriors of Boys Holy Mind・・・



 「聖なる心の新たな少年戦士達」と呼ばれる、この不思議な少年だけで結成された部隊が誕生したのには理由がある。



 ・・・現在密林の中で遭難しかけているこの少年達の境遇を理解する為、少し時間を遡り事の起こりから話をしよう。




 ルスカヤ歴2022年、このメタリア大陸を揺るがす大事件が勃発した。


 長命で理性的な平和を愛する森の民、エルフ族に変異が起こり、凶暴で好戦的な変異種「残忍な死のエルフ(ブルータル・デス・エルフ)」が誕生し、ヒト族の領域を侵し始めたのである。


 このメタリア大陸には我々ヒト族の他、亜人種であるエルフ族や、ほとんど獣に近い獣人族の「ハガート」等様々な種族が混在して暮らしている。

 その中でもいわゆる「知性」を持った存在とし頂点に君臨しているのが我々ヒト族とエルフ族であった。


 ヒト族とエルフ族も数千年前は戦火を交え領土を奪い合う関係だったが、ルスカヤ歴956年、両者の間で「エルシフェルツ協定」・・・それは協定が結ばれた地名に由来する・・・という和平協定が成立し、メタリア大陸の中央に位置する大海のように広大な「ヴェノームの森」の領有権が定められたのである。


 ヴェノームの森の中央に位置する天まで届く精霊樹「ブラッド・ツリー」を境に、北半分はエルフ族の領地、南半分はヒト族の領地と決められたのだった。

 それから千年近くも両者は自分のテリトリーを守り、時には互いに交易も行う友好的な関係が築かれていたのだった。

 ヒト族とエルフ族は非常に良く似た外見をしており、言語による意思疎通も出来る他、互いに生殖も可能なため、一部ではヒト族とエルフ族が入り混じって暮らす村もあったほどだった。


 ・・・・しかし5年ほど前に知的で温厚、きわめて平和的なエルフ族の中に変異種が誕生し、凶暴で好戦的、残虐極まりない「残虐な死のエルフ(ブルータル・デス・エルフ)」と呼ばれる一群が出現してからその状況は一変したのだった。




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