最終話 希望に満ちた未来!ヒト族とエルフ族を繋ぐハーフエルフ族の誇り
ルスカヤ歴2040年、ついにエルフ側の大攻勢が始まり、グラムニア王国の首都までが陥落するに至って暴君、ボランド三世の命運は尽きた。
・・・グラムニア王国の王、ボランド三世はエルフ軍に捕らえられ、新たに臨時に立ち上げられたグラムニア国民による臨時政府の裁判により、国外へ重追放とされたのである。
この戦でエルフ軍を指揮して勇敢に戦ったのは、かのドミネ村で生まれたハーフエルフの青年たち、つまりセリオンやマグリスら、30人の少年達の息子達であった!
エルフ軍はグラムニア王国の国民に新たな王を選ばせ、すぐに停戦し友好条約を結んだ。
彼らは理性的で平和を愛する種族なのである。
それから数十年、エルフ族もヒト族の国グラムニア王国もすっかり平和を取り戻し、二つの種族は昔のように互いに兄弟のように仲良く暮らすようになったのである。
・・・・しかし、戦争前と違う事がたった一つだけあった。
広大なヴェノームの森の、エルフ族とヒト族のほぼ国境付近に新たにハーフエルフ族達の村が誕生したことである。
・・・戦争終結から長い歳月が過ぎたある日。
ハーフエルフ達の最も大きな村「ノバエラ」では、終戦から50年を祝う賑やかな祭りが開催されていいた。
エルフ族とヒト族の和平を記念しての祭りである。
村のハーフエルフ達に加え、ヒト族とエルフ族からも大勢の祝い客がこの森の中のノバエラ村へ馳せ参じ共に平和を祝ったのである。
ヒト族、エルフ族それぞれの王から一般庶民に至るまで!・・・その数は数千人に上るだろう。
種族の壁を越えて踊り、酒宴に興じる三種族・・・ヒト族とエルフ族、そしとハーフエルフ族!
「ねえ、おじいちゃん・・・あたしたちはエルフ族なの?ヒト族なの?」
立錐の余地も無いほど村の広場に集まった三種族の楽しそうな会話や踊りを、一番奥の玉座でにこやかに眺めていたハーフエルフ族の族長とおぼしき髭面の老人。
・・・彼の側に孫らしい可愛らしいハーフエルフの少女がやってきて、老人に抱き着きついて尋ねる。
「エルフ族かヒト族か?・・・ハハッ、その両方だよ、可愛い我が孫よ!・・・ハーフエルフはエルフ族でありヒト族なのだよ、二つの種族を一つに結び付ける平和の象徴、融和の要・・・それが我々ハーフエルフなのだよ」
・・・そう誇らしげに言った老族長・・・・彼はヒト族の老人であった。
孫を抱いて会話している族長のすぐ隣で、豪快に酒を飲んでいたもう一人のヒト族の老人も大きな声で笑いながら話に加わってくる。
・・・ハーフエルフの村は族長が二人いるのだ。
「うむ・・・我々がいる限り、エルフ族とヒト族は未来永劫兄弟だ・・・なあそうだうろ、セリオン?」
「・・・ああ、もちろんだとも、マグリス・・・我々が二つの種族を本来あるべき姿に戻したのだ、随分と苦労はしたがねぇ、ワハハハッ!」
ハーフエルフ族の二人の老族長・・・それは数十年前「NWOBHM」~Neo Warriors of Boys Holy Mind~としてエルフ討伐の為ヴェノームの森に入り、運命のいたずらでエルフの女性達と夫婦になったセリオンとマグリスの姿であった!
「・・・いや・・・本当の功労者はたくさんの子を産んでエルフを絶滅の危機から救ったシセラとゾラ殿だろう・・・なあっ、シセラ?」
「えっ?ウフフッ・・・イヤですわ、アナタっ・・・二人の共同作業ですわよ♥」
「男と女・・・両者が愛し合い心を合わせないと未来は開けないでしょう、エルフ族もヒト族も同じですわね・・・・私達はその「手助け」をしただけですわ」
二人の族長の老人の少し後ろで、楽しそうに談笑していたエルフ族の二人の女性・・・族長の妻である美貌の女達はまだ艶やかで若々しく、ヒト族で言えば三十代の妖艶な姿のままだ。
・・・いう間でもなく、それはシセラとゾラの姿である。
「手助けか・・・本当にそのとおりじゃな、シセラよ・・・」
老セリオンは彼の人生を振り返るように目をつむって大きくうなずいた。
~~ 完 ~~




