第十三話 ボランド三世がハマった戦争の泥沼 ~裸の王様の悲哀と常軌を逸した征服欲~
・・・その夜、ヒト族の〇〇歳の少年セリオンと、350歳・・・ヒト族の年齢で言えば35歳ほどに相当するシセラは夜明けまで何度も愛し合った。
・・・エルフ熟女達と甘くトロけて一つに溶け合ったのは、セリオンとマグリスだけではない。
村の各家々で、30人組のヒト族の少年とエルフ族の女性達の「異種間カップル」のとびきり甘い嬌声が響き渡った。
村全体が甘美な愛に包まれたような・・・そんな夜だった。
〇〇歳前後の元気な少年達は「エルフ族を絶滅の危機から救う」とういう重要任務の為に、身を粉にして必死で「頑張った」のであった!
「・・・おはよう!・・・みんな・・・・」
「ああっ、マグリス、おはよう!」
その翌朝の集会所では、思わず見ている方が赤面してしまうような光景が出来した。
朝食を食べに集まった30人の少年達は、みな一様に寝不足で眠そうな目をこすっている・・・・しかしその表情は昨晩の甘い体験を反芻しているのかニヤニヤと締りのない表情をしているのである。
・・・見方によっては、昨日とは違う「一皮むけた」顔をしているのだ。
そして少年達一人一人に、ペアとなったエルフの熟女がまるで恋人のように仲睦まじく手を組んでいるのだ!
・・・・その姿はまるで母子のようにも見えてしまうが、彼らはれっきとした「夫婦」なのである!
ここに30組の、年齢も種族を超えた奇妙な夫婦が出来上がったのだ。
無論、あの精悍な風貌のマグリスも、意中の人であったゾラと体を密着させ、朝からイチャイチャと戯れながらすっかり鼻の下を伸ばしている・・・傍から見ると実に間抜けな表情だ。
セリオンはそんなマグリスの前に鏡を持って行って、今の彼自身の顔を見せてやりたい・・・そんな風に思い心の中でクスクスと笑った。
長命な種族の宿命として、とても妊娠しずらいエルフ族の女達・・・・しかし、ヒト族とは互いに交配が可能で、特にヒト族の男性の「種」はエルフ族の女性をあっと言う間に孕ませることが出来るという。
こうして、偽りの「ブルータル・デス・エルフ」を成敗するために森に入った30人の少年達は、あべこべに、このエルフの里で美しいエルフの熟女達とめでたく夫婦となり、ここに住み着くことになったのである。
・・・さすがにヒト族の元気な少年達の「生命の素」の愛のプレゼントは素晴らしい効果を発揮し、10か月後には村のほぼ全員のエルフ達が可愛らしいハーフエルフを出産した。
面白い事にエルフ族同士では女のコが生まれる確率が高いのと正反対に、ヒト族とエルフの混血であるハーフエルフは男のコのが生まれる率が非常に高かった。
十数年後・・・・彼らドミネ村で生まれたハーフエルフの子供達は立派に成長し、逞しい戦士となって各地に散っていったのである。
一方のグラムニア王国の王、ボランド三世はエルフ達との戦いが次第に不利になり、戦線が膠着状態に陥ってもヴェノームの森を全て己の領土とする野心を捨てきれず、対エルフ戦争の深い泥沼にはまったまま身動きが取れなくなっていた。
王である自分に対して耳の痛い意見でも堂と主張する立派な家臣を全て排除し、耳に心地よい報告ばかりをし、王に媚びへつらう佞臣共で周囲を固めたボランド三世は絵に描いたような「裸の王様」となっていたのである。
・・・一時期、熱病のように国中で流行した少年達だけの聖なる軍「NWOBHM」もいつしか忘れ去られ、いつ終わるとも知れないエルフとの戦争に国民はすっかり嫌気が差していた。
ただ一人、現実が見えていないボランド三世だけは狂ったようにエルフとの戦争継続に固執し、度重なる増税に加え、働き盛りの男達を根こそぎ徴兵するなどの暴挙に出て、グラムニア王国はその基盤が揺らいでいたのである。
穀物の収穫量は激減し国は荒廃し、国民は塗炭の苦しみにあえいだ。
その時点で既にボランド三世と国民の気持ちは完全に離反していたのだ。
・・・国の将来を憂う国民や一部の軍の青年将校の間では、クーデターによる国王追放、新政権樹立とエルフ族との停戦の計画さえ密かに計画されていたのである。




