No.7 部屋
「素晴らしい! 勇者様方のステータスは勇者の平均値をかなり超えております! ステータスや適正を見ても、他の方々は特化型、アマキ殿は高水準でまとまっているアタッカーと理想的なパーティーが作れますし、それぞれの固有スキルも最強格と言って差し支えないでしょう。誠に素晴らしいですぞ、王よ!」
(ふんふん、天城たちのステータスは普通より高いのか。ってか基準がわかんないんだよなぁ。どのぐらいなら強いのか)
ロマーヌスが天城らのステータスを見、興奮したように国王にまくし立てる。
「そうか、ロマーヌス。して、そこにもう一人おるようだが?」
その言葉を受け、ロマーヌスは蓮のステータスを見るべくプレートを覗き込みーーそして、一瞬だけ苦い顔になったのを、蓮は見逃さなかった。
「宰相様、僕のステータスはどうだったのでしょうか」
そう、すかさず探りを入れてロマーヌスの反応を確認する。この状況、一歩間違えば自分が殺されるかもしれないとまで思っている蓮は、天城たちもいて比較的安全な今のうちに王国側の考えを探っておきたいのだ。
「いえ、レン殿のステータスは常人と比べて突出しております。いやはや、今回の勇者様方は皆優秀ですな」
しかし、蓮にはロマーヌスの顔が少し引きつっているように見えた。それに加えて、声も少し硬い。
基本ネガティブな方向から考える彼としては、この微妙なロマーヌスの反応は、彼に疑いを持たせるには十分だった。
(つまり、勇者としてはあまり高くないと。多分だけど職業に勇者ってなかったのも関係してるかもしれない。やっぱり、その大小は置いといて敵意自体はあると思った方がいいな……)
「それでは勇者様方。お疲れでしょうし、部屋を用意しましたので、そちらでお休みください」
しばらく沈黙が流れた後、ロマーヌスはそう言って、天城たちを引き連れて玉座の間を出ていく。
蓮のことは一旦忘れることにしたようだ。
当の蓮は、少し警戒心を持ちつつも黙ってロマーヌスについていく。仮に何かが起こるとしても、戦力として期待されている天城たちの前で事は起こさないだろうと言う考えだ。
(ここからは賭けだ。多分この後案内される部屋は個室だろう。流石にこれが現実である以上、殺される可能性もあるにはある。僕は勇者ではないっぽいし、向こうになんか手違いがあって口封じ的な考えを持ってるかもしれない。その場合、相手は精鋭だろうし逃げ切ることは不可能だろう。交渉……もできないだろうし)
「ここが勇者様方のお部屋です。一人一部屋用意しておりますので、ごゆっくりお寛ぎください。ご用の際はこのベルを鳴らせば、すぐにメイドが駆けつけますゆえ」
(とはいえ、レベル1の状態では何もできないし......。 部屋になんか使えるものとかないかな)
そう考えながら、蓮は案内された自分の部屋に入り、そして、その豪華さに目を見開いた。
床には全面にフカフカのカーペットが敷かれ、立派なソファ、テーブルが置いてある。
その隣には、まだこの世界に関する知識が浅い異世界人である彼らに対する配慮なのか、背の高い本棚いっぱいに様々な本が置かれている。
(今後どういう状況になろうと情報は大事だよなぁ……)
そう考えた蓮は、しばらくソファに座って読書に勤しむことにした。