No.4 オタクに人種は関係ない
神様かっる
「永遠とも言えるほどの時を生きておるからのう。暇ではあるが、それがなんだと言うのじゃ?」
「ところで、少し話は変わりますが、神様って地球ーー僕が元々いた世界のことをそんなに知らないですよね」
「あそこは数少ないワシの管轄外じゃからな。他の神が管理しておる。故に存在以外はほとんど知らんのう」
(オッケこれいけるんじゃね?)
蓮は、全てうまくいっていると言ったような笑みを見せる。それを見て、創造神はますます謎が深まったようだが、すぐに蓮が口を開いたことによってその疑問を口にはしなかった。
「神様、僕が元いた世界は娯楽が充実していてですね。その中に小説という文化があるんですが、これがまた面白いんですよ。暇つぶしと思って少し読んでみてはいかがでしょう?」
「暇が潰せるなら良いのじゃが、あいにくさっき言った通り地球は管轄外でな。勝手に覗くことはできんのだ。管理している神と連絡を取ろうにも、奴は基本自分の管理する土地にこもっておってな」
「いや、それならば問題はありません。僕も小説がとても好きでして。今回も偶然バッグに小説が。
ところで、ジャンルはどれにします?戦記恋愛ファンタジー?SF系もいいですよね!」
鼻息を荒くしながら蓮は次々とバッグから本を取り出す。学校用鞄のはずだが、一体どういうことだろうか。
それを見て創造神は再度わからなそうな表情を浮かべている。何も知らないのだから当然だろうが、蓮がそれに気づいた様子はない。というか、何冊入っているのだろうか。もう10冊は出てきたが。
「うーむ、ワシは全くわからんからのう。おすすめはあるのか?」
「もっちろん! それなら初めての人でも読みやすい感じのラノベで、『天才ゲーマーのハンデ戦』なんてどうでしょう! 一番好きなのは別ですが、ファンタジー系は神様的に被りそうですし」
「よくわからんが……まあ良い。読んでみることとしよう」
創造神は、心ーーこそ読めはしないが、ある程度の感情の波が読める。蓮の中でとても楽しそうでワクワクとしたような感情が渦巻いていたので、どうせ暇だし、少し試してみようかと思ったのだ。それに、普段見ることのない地球の娯楽品というのも気になる。そんな考えがあったから、創造神は勧められたものを読んでみることにした。
(よっしゃ! ここまで来たらどハマりするだろ! いやー、やっぱ楽しいものは人に勧めるべきだね!)
♢
ーー1時間ほどして、一冊を読み終えた創造神は、目を輝かせながら蓮の方に振り返った。
「これの、続きはないのじゃろうか?」
そんな短い一言だったが、そこにはかなりの感情がこもっており、蓮が心の中で勝利を確信するにはそれで十分だった。とはいえ、蓮は別に創造神を陥れたいわけではない。純粋に面白いものを共有して楽しさに浸かりたいだけなのだ。
(でも、少し時間が心配だな。基本停止しているだろうけど、一応聞いておくか)
「続きはありますが、ここでそんなに時間を消費していても良いんですか? 僕より前に4人ほどきたと思うんですが」
「そこは問題ないのう。ここは外界と隔離された空間でな。今の時間はユルヴアや地球での一瞬にも満たんのじゃ。
じゃから続きを貸してくれんかのう。思ったより面白くてついハマってしまったわい」
(ふぅ………やったぜ!!)
お前...それでいいのか!?