No.3 小説の神様は大体暇人
10秒後。すぐに六面全てを揃え切った蓮の眼前で、創造神は茫然としていた。
「お主……どんな手を使ったんじゃ?」
「いや、僕の世界にも似たようなものがあったんですよ」
「それにしても、それほど早くできるのはいまだ信じられん……が、結果は結果じゃ。能力を選ぶが良い」
「まず、その世界についてもっと詳しい説明をしてもらってもいいですか?
能力と言われても、どんなものなのかわかりませんし」
(まあ大体予想はつくけど、一応ね)
「その説明をしておらんかったな。ユルヴアでは………」
創造神は、ユルヴアには魔法やレベルといった非科学的存在があること、それによって蓮がユルヴアに呼ばれることや人間の敵である魔物、それから危機となっている存在である魔王について語っていく。
1時間ほどして大まかな説明を終えた創造神は、
「ま、細かいことはお主を呼んだ向こうの王に聞くが良いじゃろう」
といって話を締めた。
(ふーん、やっぱり基本的なことは同じなのか)
どうやら、説明の内容は蓮の予想と似たようなものだったようだ。
蓮も「異世界ものの小説に似ている」と、説明の途中で呟いていた。
「それでは、能力とやらを見せてください」
「いや、お主の記録なら、選ぶなどといった制限はない。自由に創って良いぞ」
創造神は蓮に、自由に能力を創って良いという。
「あれの結果でそこまで決めちゃって良いんだ……」
創造神は、蓮の呟きを聞き逃さなかった。
「なんじゃ、文句でもあるのか? 六面揃えを解くには知恵、運など重要なものが必要なのじゃぞ?」
「いえいえ、文句なんかないですよ。能力は自由に決めちゃって良いんですね」
少し声のトーンを落とした創造神に対し、慌てたように蓮は返事を返す。
そして、どんな能力を作るかと思想にふける。
(この神様異世界のバランス思いっきり壊すじゃん。まあでもどうせできるっていうんだったら……)
ーー数分後、思い描く能力を形にした蓮に対し、創造神は問いかける。
「お主、本当にその能力で良いのか?」
蓮が作った能力は、このようなものだ。
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スキルストックLv.1 無系統ーS SP:10
効果
使用可能なスキルを通常のn倍のMPを使用して亜空間にストック出来る。
ストックした魔法は好きなタイミングで発動可能。
同時ストックはn個まで可能、ストックはn週間で消える。
スキル保持者の半径nメートル内でのみストックを解放できる。
SP強化
魔法効果上昇 :0
MP消費減少 :0
同時ストック可能数上昇 :0
ストック削除時間延長 :0
ストック解放可能範囲増大:0
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この世界のスキルは、最大レベルが10となっており、レベルが1上がるごとにSPというものを規定数獲得する。
SPはそのスキルの系統ごとの適正値ーーFからSまでの7段評価で、先天性の才能ーーによって、レベルアップごとに獲得できる量が変わってくる。下位のランクはそこまで違いはないが、BとAには大きな溝があり、Sは世界全体を見渡しても数えるほどしかいないという希少なものだ。
そして、そのSPをスキルごとに設定されている強化項目に振り分けることで、スキルが強化されていくのだ。
「その能力で良い、というのはどういうことでしょうか?」
「そんなスキルであれば、普通に発動した方が良いのではないのか? 一見したところそこまでの有用性はなさそうじゃぞ?」
「やっぱりそうですよね!」
蓮はなぜか楽しそうに返事をした。それを見て、創造神はますます不思議そうな顔を深める。
「やっぱりパッと見そう見えるんですね。このスキル、よく見ると魔法が同時発動できるようになってません?」
先の説明で創造神が言っていたことだが、ユルヴアで魔法を同時に発動させるのは、ごくごく限られた人数しかいない。3つ同時ともなれば、人では不可能な領域だ。しかしこのスキルならば、ストックを解放することで擬似的に同時発動が為せると蓮は言う。
「確かにそうなっておるが……それならなぜ効果の欄にそう書かなかったんじゃ?」
「一見してそこまで強いスキルではないと思われるからです。話は変わりますが、1つ質問していいですか?」
「まあ良いぞ。大体のことは答えてやろう」
「神様は、地球ーー僕が元々いた世界のことを知っていますか?」
「いや、あそこは管轄外なのでな。場所程度はわかるが細かくは知らんのじゃ」
(いよっしゃこれ言えるんじゃね? 敬語にしたらいっていいよね? 多分そうだし!)
蓮は少しのタメを作り、そして言葉を投げかける。
「神様ーー暇してません?」
どっかで書いたと思いますがもう一度。
月〜木の朝5時に固定投稿、+気が向いたら出します。
明日から3日間はお休みです。