完全防備ヤンデレさん
【更新頻度の件】
どうも、人除機です。前話の後書きの件は想定より多くの読者様が応えてくださりました。この場でもまた言わせてもらいます。本当にありがとうございました。それと、お手数をかけてしまいすみませんでした。
集計の結果、【人見知りのヤンデレさんが愉悦主義者と共に俺の生活を世紀末にしてくる】の更新頻度はBの【文字数 常 更新頻度 鈍足】となりました。
ただ、Aの方の意見で、内容忘れて読む気が失せるといった呈の事が書かれておりましたので、そちらはあらすじを前書きに書くなどして対処しようかと思っています。どのような形になるかはお楽しみに…………。
それでは本編をどうぞ!
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『ピピピピッピピピピッ』
「んぅ……」
『ピピピピッピピピピッピピピピッ』
「……ぬぅ」
俺は右手だけを自立させ目覚まし時計のスイッチを手探りで探す。
朝だというのに煩い。耳をつんざくような音に不快感を覚えていた。
『ピピピピッピピ』
アラーム音が止むと、俺はまた至福の一時を満喫為始めた。
――だが、それも十分後に覚醒する。
俺は今日が何の日かを思い出し、バッ! と起き上がった。
「今日公園行くんだった……」
思い出しはしたものの、まだ眠い。
そのまま数分間ポケーッとした後、布団から出て身支度を始めた。
「とっても~♪ 美味しいパンパパンッ、ヘイ!」
パンをトースターで焼いている間を使ってパンの有名メーカーである『海崎』のcmを歌う。
ちなみにこれはいつもやっている事なので恥ずかしい気持ちとかは存在しない。
流石にクラスメイトとかに見られたら発狂するがな。
「ふわぁ………」
一階の寝室からパジャマ姿の母さんが出てくる。
ボサボサの髪を腰まで伸ばした目つきの鋭い母さんは、俺を見ると冷凍庫を指差して「具材作っておいたからな」と言った。
「おっけ」
俺はトースターからパンを取り出し、冷凍庫に入っていた磨り潰されたトマトを表面に塗り、オリーブオイルをかけて最後にバジルを乗せる。
うむ、いつ見ても美味そうだ。やはり朝といえばパンだな。米も好きだけど。
食欲のお陰で目が覚めた。
それを母さんの分もつくると、椅子に座る。
「頂きまぁす」
トーストを口に入れる。その瞬間にパンの香りとトマトの瑞々しいジューシーな果汁が相互に響き渡り、オーケストラを奏でた。
うん、オリーブオイルも効いてるな。バジルで見た目もバッチリだし、美味い。
「そうやぁさ」
母さんが唐突に喋りだす。
「何?」
「今日どっか行くんだろ? いいのか?」
「あぁ、それ八時からになったんだよ。だから大丈夫」
「……大丈夫じゃねぇだろ。今の時間見てねぇのか」
「え?」
母さんはテレビを点ける。
その左斜め上を観ると八時五分の文字が――
やっべぇぇぇぇぇぇぇ!?!?
「行ってきまぁぁぁぁす!!!」
「ちょ、食べかけの飯どうすん――――」
玄関へ走り、予め用意していた財布をズボンのポッケに入れて住宅街を走り抜ける。
ヤバイヤバイヤバイヤバイ!! 大、遅刻だぁぁ!!
息を荒らし、走る俺の額は冷や汗でいっぱいだった。
四肢を素早く動かして少しでも早く走ろうと画策する。
クッソ!! 何でよりにもよってこんな時にアラームの設定間違えるんだよ!! 運がねぇなぁ!
もし、雅さんを待たせた影響でヤンデレ属性が発動していたら……あぁぁぁ!! 走れぇ!!
赤信号に引っ掛かった。
そんな!? ここ信号変わるの長ぇのに!!
その場で足踏みする俺は、スマホで雅さんと君谷さんに連絡する。
“九条”『悪い! 寝過ごした!!今向かってるとこ!』
そう打ったが、一向に既読が付かない。
「あぁもう!!」
青信号になると同時に俺は全速力で走り出す。
道行くサラリーマンを押しのけ、跳ね飛ばし、コンビニに居座るヤンキーが駄弁ってる中駆け抜け、走ってる最中足が酒に当たり零れ、ヤンキーに追われ、犬を蹴飛ばし、犬に追われ、何とか全てまき、遂に目的地である『超犬パチ公』へと辿り着いた。
「ぜぇ……ぜぇ……ぜぇ……」
死ぬ!! 俺死んでしまう!!
休みたい。だが遅刻した奴が休めるわけがない。俺は辺りを見回して君谷さんたちを探す。
「ぜぇ……ぜぇ……あ……あれ?」
いないんだけど……
どういうことだ? もう時間は過ぎてるのに……
まさか、俺が来なかったから帰った?
いやいやいや、それはないだろう。だってあの雅さんだ。あの君谷さんだ。俺との遊ぶ約束をそう簡単に諦めるとは思えない。
「何処に……?」
呼吸を整えて呟く。すると、ラウィンの通知音が鳴った。
“君谷”『ごっめーん!! 超大切な用事入っちゃって遊べなくなっちゃった!!』
「はぁ!? 何だよそれ!?」
スマホを投げ付けようとするが、必死に堪える。歯軋りがギリギリと音を立てた。
“九条”『ドタキャン!? ドタキャンかよ!』
収まりきらない怒りをラウィンの中でぶつける。
“君谷”『ごめんって! ほら、私という邪魔者がいなくなったんだから存分に楽しめるじゃん!! 良かったね、二人でデートだよ』
…確かに、そうかもな……
雅さんは実のところそこまで対処不可能というわけではない。
雅さんの素は君谷さんと違って普通の女の子だし、俺が選択肢を間違えない限りは大丈夫な筈だ。
俺のこの関係を表すなら、一つでも選択肢を間違えたらバッドエンドのギャルゲー。雅さんが攻略対象とすると、君谷さんは妨害キャラだ。
君谷さんが掻き乱すから、いつもよく分からない展開になっていた。
でもいないなら、選択も簡単で済む。
“九条”『よくよく考えればそうだな』
“君谷”『酷い!! 「四音ちゃんがいなきゃ楽しくないよぉ!!」くらい言って欲しかったのに!!』
誰が言うか。
“雅”『四音。海里様がそんな事を言うなんて有り得ない。今までは恩があった見逃してたけど、妄想もそこまでにして自重したら?』
雅さんが参加してきた。それにも反応するのか。
雅さんヤンデレ極めちゃってるな。というか、これが駄目ならいつも君谷さんが俺と話しているのは何でヤンデレが反応しないんだ?
って、今はそんなのどうでもいい。それより先に雅さんに聞かねばならない事がある。
“九条”『雅さん、今どこにいる?』
“雅”『パチ公の目の前』
えっ!? もう着いてるの!? 俺はパチ公へと目を向ける。
……やっぱり雅さんらしき人は見当たらない。
“九条”『何処?』
“雅”『ここ』
その言葉と共に写真が送られてくる。どれどれ……は?
送られてきた写真にはまごう事無き俺の顔が写っていた。しかもちょっと加工してあって、目元がいつもよりハッキリとしてる。
それでもやっぱり良いとは言い難い顔だな。良くて中の上ぐらいか? 雅さんは一体俺の何処を見たのだろうか。
えーと……この店が写っている角度だから……やっぱパチ公のとこだよな………え?
俺が写真伝いに向いた先はやはりパチ公であった。そして、その場所には人がいた。
……うん。多分あれ、だよな。
“九条”『雅さんで合ってる?』
“雅”『ん』
肯定を貰った。まぁ、露出は少ない方がいいとは言ったけどさ………
限度ってのがあるじゃん?
「はぁ……」
雅さんの今の服装。何重にもコートを着重ねて、顔はサングラス――スキーに持ってくようなやつ――とマスクで覆い、さらに追い討ちをかけるようにフードを被って、モッコモコの耳当てを付け、靴はブーツ、手袋にスパッツと……マジで肌色という肌色を全て払拭したザ・不審者。
いや、全く気付かなかったわけではない。俺だってあんな変な人がいたら気になるし、なんなら雅さんなんじゃないかと疑っていた。
でも、確証もなかったし、あれが友人、そして学校一の美少女がやる事だと思いたくなかったのだ。
だから無意識にあれは雅さんではないと思い込んでしまっていたのだろう。自分の浅はかさに嫌気がさしてきた。
人っていうのはここまで印象を変えることが出来るのか……。逆にその格好で良いと思ったことに尊敬するわ。
今日来た事を少しだけ後悔する俺であった。




