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ゲームセンターとヤンデレさん

「へぇ、そんな事があったのかー。見たかったなぁ」


 朝の出来事を君谷さんに話したところ、そんな言葉を返された。


「見たかったって……でも君谷さんがまさか遅刻寸前だったとはな」


 あの『一年豚組お金騒動事件』は君谷さんが首謀者だと思ったが、あれが雅さんの独断で行った出来事だったなんて思ってもいなかった。


 こりゃ今度からガード固めとかなきゃなぁ……。いつ既成事実つくられるか……。こっわ。


「みゅぅ……」


 恥ずかしそうに赤い顔を両手で隠す雅さん。初めて自分から行動したのに失敗してしまった気持ちを分からなくもない。


 ドンマイ。


「あぁあぁ氷ちゃんそんなに赤くなっちゃって……。あ、そうだ、フフフフフ……この札束が目に入らぬかぁっ!」


 君谷さんは懐から財布を取り出し、万札の束をを雅さんに見せ付ける。


「……っ! それは……!!」


 雅さんは瞬時に掴み取ろうとするが、君谷さんの左腕によって静止させられた。


「待って、待って。氷ちゃんがこれを欲っしているのはよぉく分かるよ。だって、この金さえあれば九条くんと同じ塾入れるもんねぇ。でも、私だってこの金タダで貰った訳じゃないんだし? それなりの対価っていうのが必要なんじゃあないかねぇ?」


「……対価って?」


 どうやら雅さんは何がなんでもお金を手に入れたいらしい。そこまでして俺を塾に入らせたいのか。


 そして君谷さんはゆっくりと焦らすように口を開く。



「それは――――」




 ※※※※※




 放課後、近くのゲームセンターへやって来た。自動ドアを潜り抜けると、途端に耳へ大きな音が――入ってくることはなく、全くゲームセンター特有の大きな音は鳴っていなかった。


 このゲームセンターはヤンキーの溜まり場になってたからな。


 そもそも手付かずだった上に色々物ぶっ壊したり暴れ回ってたらしいから遊べるゲームもほんの僅かなんだよ。


 というかモグラ叩きとホッピングだけだわ。明らかにゲームセンターと言っていい場所じゃない。

 心霊スポットと言われても納得しそうな所だ。

 所有者はなんでここを残しているのだろう……


 ちなみに、このゲームセンターは一般人がゲームの台を買って自力で運営している。だから無くなることもないのだ。


 で、俺らは何でゲームセンターなんかに来たのかというと……


「よし、じゃあこれで一回戦を始めよう!! 第一回戦モグラ叩き!! 氷ちゃんが勝ったら一ポイントゲット!! 九条くんが勝ったら九条くんが一ポイントゲット!! 先に二ポイント先取すればなんと! 万札の束が貰えるぞ!! さぁ両者共々位置につけぇ!!」


 ……という事でございますはい。なんか巻き込まれましたよ俺。


 てか、これは個人の見解だけど、大金がかかってるってのに難易度甘くね? 


 束なんだからデスゲームとまではいかずとも無理ゲー攻略とかそのぐらいで良いと思うのだが……


 そうは考えつつも、俺はこの戦いに勝てるとは思ってはいなかった。


 言っとくけど俺、反射神経皆無ですぞ? この前の体力テストどうだったか知ってるか? あ、棒落としね。あれ掴めねぇんだぞ?


 まぁそれだけじゃないけどな。五十メートル走十二秒台だし、シャトルランは十五回だし、反復横跳びに至っては足を攣った。


 そんな影で『リアルの◯太』と言われてる俺が女子だとしても運動で勝てる訳ないだろ。


 気が乗らない状態で右のモグラ叩き台のハンマーを取り、百円玉を挿入口のギリギリまで近付ける。


 雅さんは左のモグラ叩き台で同じ体勢を取っていた。


「それじゃあ始めるよ!!」


 君谷さんが手を上に掲げる。


「よーい!!」


 ――君谷さんが腕を振り下ろし。


「――どん!!」


 ――今開戦した。


 百円玉を挿入し、動き出すモグラ。


「はぁっ!!」


 息を強く吐き、出てくるモグラをボッコボコのフルボッコにする。


 こ、これはっ!! 思ったより動ける。……もしかしたら、このまま雅さんに差をつけれるかもしれない……!!


「はぁぁぁぁぁ!!!」



「勝者!! ヒョウゥゥゥゥゥゥ!! ミヤビィィィィィィィィ!!!」


 完敗だった。


「いやぁ、モグラ叩きで九百点以上差が出るとはねぇ。てか、五十点って九条くん逆に凄いなぁ」


 傷口を抉るなぁ……


「よし、じゃあ次のゲームをやろう!」




 ※※※※※




「さぁ続いてのゲームはぴょんぴょんホッピング!! ホッピングで飛んだ数を競うクソ詰まらないゲームだぁぁ!! はたして、どちらが勝つのだろうか!」


 もう結果が見えてるね。何で俺の苦手な運動系のゲームしかないんだよ。格ゲーだったら勝機は十分あるのに……


「じゃあ始めるよ!! よーい!! スタート!!」


 ――バンッ! バンッ! バンッ!


 さっきの要領でゲームを始め、より多く飛ぶ。


 き、きつい……。なんか気持ち悪くもなってくるし、スゲェ辛ぇ……


 チラリと雅さんを視界の端で確認する。


 ――――バンバンバンバンバンバン


 は、速ぇぇ!! 何あれ人間がやって良い動きか!? 残像で浮いてるように見えるぞ!!


 クソ、これじゃまた負ける……っ!! そうだ! 


「雅さん」


「……」


 雅さんは飛びながらこちらに目線をやる。


「雅さんって可愛いね」


 俺は自分ができる精一杯のイケボアンド爽やか笑顔でそういった。


「グハァッ!!」


 直後、鼻血をロケットのように噴射して撒き散らしながら、後ろへ吹っ飛んでいく雅さん。お、おう……そこまでなるとは思わなかった……。頭打ってないよな?


 まぁ、何はともあれ。


「勝者!! カイリィィィィィ!! クジョォォォォォ!!」


「いえーい」


「汚い手口だったけど勝利は勝利!! 誰が予想出来ただろうか、優勝は三回戦目まで持ち越しです!!」


「しゅき……かいりしゃまにしゅきって言われた……えへ、エヘヘヘヘ」


 あ、雅さんが壊れた。自然回復を待とう。

 それより気になった事がある。


「なあ」


「んー?」


「またモグラ叩きやるのか? それとも、連続でホッピングか?」


 そう、此処にはモグラ叩きとホッピングしかない。他にやる物がないのだ。俺としては出来るならばモグラ叩きは避けたい。


 モグラ叩きは雅さんのモグラを叩く音がデカすぎて音が届かないんだよな。ホッピングの時でも音はデカかったけど、あれは近かったし。


「いんや、どっちも違うけど?」


「え」


 予想だにしない言葉だった。思わず耳を疑ってしまう。


 どっちも違う……? ここには二つのゲームしか真面に機能しない筈だ。なら、どちらでもないというのは……君谷さんしか知らないゲームがあるのか?


「第三回戦目にやるゲーム……それは……」


「それは……?」


「ジャンケン」


「ジャンケン? ジャンケンってあの?」


「そう、あのジャンケン」


「此処にジャンケンのゲーム台があるのか?」


「そんなの無いよ」


「え、じゃあどうやって」


「どうやっても何も手で出来るじゃん」


「あっ」


 そうか、ゲームセンターに来ているからそういう概念的なのに囚われていたけど、普通に手でも出来る……てか、手が主流だったな。


 でもここに来てまでジャンケンするなんておかしくね? じゃあ全部ジャンケンでよかったじゃん。


 俺たちなんでここ来たんだよ。


「じゃあ早速始めよう!」


「……ん」


 いつの間にか雅さんが復活していた。

でも後遺症は残っているようで顔が薄く蕩けている。


「さぁ最終決戦だぁぁ!! これで勝っても負けても恨みっこなし!! 金はその人の物となる!! ジャンケンのルール説明なんていらない! もう始めるぞ! 最初はグー!! ジャンケン――――」


 え、ちょっと待ってまだ心の準備出来てないんだけど!? お、落ち着け……考えるんだ。相手が何を出すかを……ってそんなの分かるわけねぇじゃん!!


 あぁもうどうにでもなれぇ!!


「――ポン!!」


「負けたぁぁぁ!!」


 普通に負けたぁぁぁ!! こういうのって勝つパターンじゃないの? 現実は非情だぁぁ!!


 膝から崩れ落ちる俺。君谷さんなら渡された金をキラキラした目で見る雅さん。


 ……終わった。


「か、海里さ……くん」


「……はい?」


「こ、これで……塾に……」


 金をバレンタインデーで好きな人にチョコを渡すように差し出してくる雅さん。その様子で俺は本来の目的を思い出す。


 ……あれ、これってどっちにしろ金貰えたのか。いや、別に金目当てで勝負に挑んでいたのではないが、少なからずお金が欲しいと思うところもあった。


 …………


「氷ちゃんがこんだけ言ってるんだからちゃんと入ってあげてよー」


「……それは親に聞いてみないと分からないからそれはまた今度で」


「じゃあ早めに親御さんに伝えておいてね」


 …出来るか……? いきなり息子が大金を出してきたら何言われるか分からん。それに母さんはちょっと決め付ける癖があるからな。


「今日明日には難しいかも……」


 なんせヘタレなので。


 そして案の定、母さんに伝えるのは忘れる等の理由で遅れてしまい、先に遊ぶ日が来ることになる……。

________

【ここまで読んでくださった読者様へ】


ここまでこの作品を読んでくださりありがとうございます。最近作者のリアルでの都合が忙しくなっており、十分に執筆作業が行える時間が少なくなってしまいました。それにより、貯めていたストックが水のように消えていき、とうとうストックもあと数話だけとなってしまいました。


そこで、読者様方へ質問(?)があります。


今後、一話の文字数を少なくする変わりに、頻度を増やす(二日に一回ほど)か、一話の文字数を今まで通りにする変わりに、頻度を減らす(一週間に一回ほど)か、どちらがいいでしょうか?


こんな事を読者様に聞くのは、あまり良く思われないかもしれませんが、どうか読者様方の意見を聞かせてください。


感想の方で受け付けております。


A 文字数 減 頻度 微早


B 文字数 常 頻度 鈍足


尚、感想に書かれたのが多い方で決めさせていただきます。長ったらしくすみません。

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― 新着の感想 ―
[良い点] Bでお願いします! 無理して続かなくなるよりも、作者のペースでゆっくりと進めてください!更新が1週間だろうが1ヶ月だろうが楽しみにしています! [一言] お疲れ様です!
[一言] Aじゃないと内容忘れて読む気なくなるかもなんでAがいいです
[一言] Bでおなしゃす! たまの楽しみに待ってますー
感想一覧
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