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ヤンデレさんと親バカ

 家に帰宅して直ぐ、私は父の部屋に向かう。扉

 をトントンと二回ノックした。


「えっ!? 誰!? 氷!? ち、ちょっと待って!!」


 私は無駄に重い扉を開く。

 そこに居たのは無性髭の生えたボサボサ髪でぽっちゃり体型の男だった。


 下に視線を向け、目を細める。


 相変わらずの粗悪なブツを娘に見せるとは、何とはしたないことか。


 急いでズボンを履く父。

 だが、腹が出てるせいだ上までちゃんと上げられないようだ。


 結果、私にピンク色のトランクスを見せることになっている。


 そんなことはどうでもいいとして本題に入ろう。


「もう……俺ちゃんと言ったよね? 開けちゃ――」


「父」


「――話被せてくんなよ!!」


 一々煩い人だ。


「父、金頂戴」


「……え?」


 父は私の言葉に耳を疑う。


「ちょっともう一回言ってみて?」


「金くれ。百万くらい」


「さっきより雑になってない!?」


 そんなー私は心を込めて聞いているのにー。(棒)


「そんな、百万て………何に使うんだ」


「別に。関係ない」


「いいや、お金の問題は父の立場として大いに関係がある。ていうか、俺の金を変なことに使わせたくない」


 腕を組み体を反って言う父。お腹が強調されて、威厳もクソもない。痩せろ。


「いいじゃん」


「駄目だ」


「……友だちに一緒の塾とか入ってもらう」


「友だち? 四音ちゃんのことか?」


「違う。別の友――」


 椅子に座っていた父は勢いをつけて私に駆け寄り、肩を掴む。


「……友だち出来たのか?」


 私は数秒の間のあと、こくりと頷いた。


「!! どんな子なんだ!? 同じクラスか!? それとも後輩か!?」


「あ……ぁぅ……」


 怒涛の質問攻めが繰り出される。それに戸惑う私。


「あぁ、母さんよ。遂に氷に四音ちゃん以外の友だちが出来たぞ……」


 泣く父。私に母はいないでしょ。


「それで、どんな子なんだ!?」


「男子」


 父の笑みがすぅっと消えて無表情になった。


「男子……だと」


「悪い?」


 恩のある父でも海里様を侮辱することは赦さない。そういう意味を込めて言ったのだが、父は何を勘違いしたのか、大声で笑い始めた。


「はははははっ! そ……そうだよな! うん! ただの友だちだ!」


「煩い」


「そうだな……で、その子と同じ塾に通いたいと?」


「ん」



「駄目だ」



 私はアッパーカットをお見舞いした。重い体に似合わず大きく吹っ飛ばされる父。


「ひ、ひたい!! 実の父に何すんだ!!」


「全然大丈夫でしょ。てか、実の親じゃない。調子乗るなEDのDT。略してEDT」


 ピンピンしてる父に腕を鳴らして威圧する。父から細い息が漏れた。


「ひ、酷い……。これでも父さん、卒業まじかまではいったんだぞ!!」


「そこで逃げられてEDになったんでしょ?」


「そ、それは……」


「父さんってさ、そんな体なのに評判良いよね。優しいとか、生き生きしてるとか」


「お、おい。どういうことだ?」


 私はスマホを父に見せ付ける。すると父の顔がどんどん青ざめていった。


「はい、これ父さんが昔愛用してた性癖ドストライクのイラストね。覚えてるでしょ? そして、これが私のラウィン繋いでる人。わぁ凄い。メイド、執事、料理長から清掃員まで見事に皆いるね。ここに一括送信のボタンがあるんだけど、どうしようかな……」


 これを送れば父の家での評判はガタ落ち、皆から蔑んだ目で見られるのは間違いないだろう。


 口をパクパクしている父は、唾液を飲み込み私に現金を渡した。


「二万までだ……」


 まぁ、最初のうちはこのくらいで良いだろう。海里様のお家は貧乏だし、これでもつれる。


「ん」


 嬉々としてその金を受け取った。


「……ねぇ、氷ってさ」


 満足気な私に父が言葉を紡ぐ。


「最近情報収集に磨きがかかってない?」


「ファッ!?」


「ファッ?」


 思わず声を出してしまった……。


「そんなことない」


「…………」


 父は無言で圧力をかける。

 うぅ……まだ私が海里様のことを好きというのを教えるのは……私なりに順序があるし……


「もしかしてだけど、その友だちの男の子のこと好きだったりして」



 ――――ぽふんっ



 ポップコーンが弾け飛んだ。私の顔は赤色に染まり、猿みたいになっている。


「えぇ……」


 これには父も困惑しているようで、声を漏らしていた。

 し、しまった。ここで反応してしまうと私が彼を想っていることがバレてしまう。


 必死に言い訳を考える。


「………………………………………………

 ……………………………………………………………………………………じゃあ」


 思い付かなかったのでその場を去ることにした。何事もなかったかのように父に背を向け歩く。


「いやいやいや、待て待て待て待て」


 ……流石に無理があった……。


「何? お粗末EDT父」


「何でそんなに俺の息子を虐めるの!? 何かした!?」


「何?」


「……ひ、氷ってさ」


 父はゴクリと喉を鳴らしてから言う。


「その男の子のこと……好きだったりする?」


「は? θμννωρμμπη!!」


「何言ってんの!?」


 そう父に言われ、私は口を紡ぐ。違う言語が出てしまった。それ程までに私も焦っていたのだろう。


 さて、この状況どう突破すればいいのか。真面目な話、父は素でこんな性格だ。


 こんなと性格を表すなら、造語だが、ドーターコンプレックス、ドタコンというのが最適だろう。


 兎に角甘い。


 私には砂糖水をぶっ掛けてその上追い討ちとしてガムシロシュガシロ最終的にはグラブジャムを混ざり合わせた蜂蜜味のポテトチップスレベルで甘い。


 というかそれは最早ポテトチップスなのだろうか? 要素でいえばグラブジャムンの方が強そうだが………と、そんな事はどうでもいい。


 これでも父はあれだ。私以外には結構高圧的に接しているんだ。 無駄に威厳を保とうとして。


 それが私の前では、ただの親バカドタコンお粗末EDTデブおじさん。


 私的にはいつものままで良いのに、父は何をしたいのやら……。やっぱり金持ちの性格は分からない。


「その反応は……当たり、という事で良いのか……」


 まずい。どうにかしようと頭をフル回転させる。が、良い案が見当たらない。そんな私を余所に、父はわざとらしく「ゴホンッ!」と一回咳き込んだ。


「ま、まぁ、そいつがどんな奴にもよるが、やっぱり氷も年だし? 認めてやらんこともないが? その、あれだ。言葉が出て来ない。ん……そう! 一回家に呼びなさい! 父である俺が氷を伴侶にするに値するか確かめて――――はぐっ!?」


 饒舌になった父にまたアッパーカットを喰らわせる。その衝撃で舌を噛んだのか、父は口から血を吹き出していた。


 大丈夫、手加減はしてる。


「に、二回もぶったぁ!? 彼女にもぶたれたことないのに!!」


 うん、これでも冗談を言える父は大物だと思う。そこだけは尊敬しよう。


「父、一々私の人生に突っ掛かってくんな」


「えぇ!? で、でも親としては――――」


「――それに」


「…………」


 父が押し黙る。静寂を切り裂くように、私は口を開いた。


「……ま、まだ友だち……だから……」


 恥ずかしくなった私は、お金を鷲掴みにして自室へと戻った。

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[良い点] お父さんかわいいなw
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