ヤンデレさんたちと場所相談
今日は休業日だー。近くのイ◯ンに行ったら学生わんさかいてて草
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科学館、という案は俺としては賛成だが、果たしてどこにあるのだろうか?
科学館という場所があるのは知識としてあるが、それだけで一度も行ったことがない。
もっと言えば興味もない。
雅さんの俺が理科が好きという発言は間違っていないが、言うてそこまでなのだ。
ただ小学校の時から、他の退屈な座学に比べると、理科の実験やら理科室やらが真新しくみえて、つい興奮してしまっていただけで……てか、こんなこと俺人に言った記憶ないんだけど。
雅さんの情報源マジで何処だよ。
閑話休題。
まぁ何が言いたいかというと、実際科学館ってこのへんあるのかって話だ。
そこで三人で調べたところ……
“君谷”『この場所なんてどう?』
二週間前に作ったグループラウィンで君谷さんが送ってきた画像は、古い廃墟のようなコンクリートの壁で造られた建物だ。
そこまで大きくなく、見た限りだと二階建てのようだ。
画面をスワイプする。
次の画像は内装だ。中は外見通り、灰色の壁に包まれていて、色んな機械のようなものがあったが、どれも変な色だったり錆びていた。
他の送られてきた画像も同じ感じ。
最後に徒歩五分と書かれていた。
科学館、めっちゃ近くにあった。
“九条”『いや……それはちょっと……』
“君谷”『えー、近場だとこの科学館が一番広いよー?』
そう言ってもなぁ……
自室の古びたソファーに寝転がっていた俺はノソノソとうつ伏せの体勢になる。
「うー」
何か他に良い場所はないのか? と、俺もネットで近場を条件にネットで検索する……が、なんかしっくりくる場所がない。
それはそれとしてこのへん科学館多くね? なんで数件も見つかるんだよ。
密集しすぎだろそんなに需要あるか? ここ。
んー……
何分か探してみるが、やはり良いところが見つからない。
“九条”『良いところないな、科学館。もう違う場所にしたほうが早くないか? 遊園地とかさ』
悩みに悩んだ結果遊ぶ所を変えたいという俺の正直な心が二人に聞く。先にきた返信は君谷さんだった。
“君谷”『だめだめー。遊園地はデートみたいでまた氷ちゃんが失神しちゃう。もちろん嬉しさでだよ?』
あー、そういやそんなめんどくさい判定あったな。
もう気軽に話せるようになったからすっかり忘れてた。
“雅”『私、ジェットコースター乗れない。お化け屋敷ならいける』
おう、同類だな。俺もジェットコースター乗れない。お化け屋敷もムリ。幽霊怖い。落ちるの怖い。
じゃあなんで遊園地を選んだかって? 一番最初に浮かんだからだ。
“君谷”『へぇ、そうなんだ。じゃあまた今度一緒に遊園地行こうか! (ゲス顔)』
やっぱり君谷さんは人の怖がるので笑う悪魔だな。
ラウィンは三人しかグループに入ってないからか、容赦のないことで。いつもそんなこと考えてるのか?
ふざけてると雅さんに怒られるぞー。
“雅”『ねぇ、一緒にってどういうこと? まさか、四音。海里様とあんなことやこんなことをしているわけ? ねぇ、簡潔に、一秒以内で返信して』
おっと、怒りはしたが別方向だったようだ。南無三。すると一秒以内に君谷さんが返信する。
“君谷”『打ち間違い』
そっちなのか。てっきり俺は雅さんの解釈の間違いだと思ってた。
それとも、一秒で打ち込むから簡潔に伝えるように打ち間違いを選んだのか?
……って、俺はなんてくだらない考察をしてるんだ。
“雅”『ほんと?』
“君谷”『ほんとだよ』
“雅”『じゃあ証拠見せて』
“君谷”『えぇ……』
めんどくさ……。こういうの言われた時どう対処すればいいのだろうか? 俺にもこの質問がくる可能性は十二分にある。
君谷さんの対応で予習しておこう。
……数分後。
“君谷”『言ってなかったけど私彼氏いるんだ』
……………………え?
「ふぁぁぁぁぁ!?!?!?!?」
もう夜中だというのに奇声を上げてしまった。
でも仕方なくない!?
えっ!? ドッキリ!? ドッキリなの!?
「海里うっせぇぞ!! 度玉かち割られてぇのかごらぁっ!!」
大きな声を出し過ぎて一階の母さんにまで届いてしまったようだ。
そりゃ、ここはオンボロ木造一軒家。
声は届きやすいのにそんな大きな音だしたら普通に煩い。
「ご、ごめんなさい……!!」
振り絞って出した言葉は伝わったらしく、ドカドカと足を鳴らしながら遠ざかっていった。
「……すぅーはぁー」
取り敢えず落ち着かせようと深呼吸をする。
よし、冷静になった……。俺はスマホをめり込むぐらいに凝視した。
“雅”『それほんと?』
雅さんも俺と同じく混乱しているようだ。
“雅”『海里様じゃないよね?』
残念。俺は非リア童貞だ。
今まで女の人との関わりも母さん、店の定員さんしかいない俺に君谷さんのような上ずらだけでも超完璧な美少女と付き合えるわけないだろ?
もし君谷さんの彼氏になれたとしても、散々弄ばされて挙げ句の果てにドッキリでした~とか言われるだけだ。
“君谷”『私があんな奴選ぶわけないでしょ? 昔からそこまで興味なかったし、氷ちゃんの彼氏を奪うような真似、死んでもしないよ』
あんな奴って……
分かってはいるが、そんな本人の目の前で言うことはないだろ……。目の前でも言ってもないのだが。
“雅”『そっか』
納得しないで雅さん。あなたの好きな人だよ? なのに何で何も言わないの?
ここは、海里様はイケメンでスタイル抜群で非の打ち所もない飯嶌の最上位互換みたいな人だわ!!
くらいは言って欲しい……
“九条”『さっきから黙ってれば……言ってくれるじゃねぇか……』
“君谷”『あっ、ごっめーん(棒)』
いや、ラウィンで(棒)を使うなよ!! 誠意がないのが丸わかりだろうがチクショー!!
どうせ俺はずっと舐められるんでしょうね!!
“雅”『ねぇ、ほんとに彼氏がいるの? なんか写真とかある?』
“君谷”『あるー。ちょっと待ってて』
え、あるの? 君谷さんの彼氏……気になる! 気になり過ぎる!!
“君谷”『これだよー』
その一文と共に送信された写真は、塔を背景にして自撮りをしている色つきサングラスを掛けたパリピってる感じの君谷さん……の隣に取って付けたかのように横から現れてる若い男性。
……あれ、この人アイドルグループの人じゃね?
なんてグループだっけな。
『シャイニーズ』の『暴風』だったような……
気になり我らがググールで調べてみる。そしたら案の定アイドルだった。えぇ……まじか。
俺の知り合いにテレビの有名人の彼女がいたとは。何とも信じがたい話だが、君谷さんのあのルックスなら十分にいけるのだろう。
うっしゃ、このつてでMIちゃんに合わせてもらおうかな。
“雅”『本当なんだ……』
“君谷”『ふふんっ』
雅さんが驚き、君谷さんが自慢気に文字を送る。
なんだかこの遣り取り、その場にいるように彼女たちの動作が浮かんでくるな……
俺の想像力も遂にここまできたか。
ふとその写真に違和感を感じた。
「んー?」
その違和感を突き止めようと顔を近付ける。
すると、君谷さんの彼氏の周りに、薄ーく、本当に薄ーく、白い何かがあることに気が付いた。
これはなんだ?
何で君谷さんの彼氏の周りだけ……あっ。
「そういうことかよ……」
まさかまさか、ここまで高度なフェイクを作れるとは思わなかった。そして、それに気付けた俺を誰か褒めて欲しい。
これ、合成写真だ。
“君谷”『あ、脱線してるじゃん。話戻そ。で、科学館探すんだっけ……』
数分間ラウィンの中が静まり返る。
やっぱ科学館無謀だろ……
違うとこにした方が絶対早いって。
そう思い俺は探すのを諦めた。
“君谷”『一言いい?』
“雅”『ん』
“九条”『おう、何だよ』
“君谷”『もう県外でもいいよね?』
県外か……
全然いいけど、遠い場所になるとお金がかかるよなぁ。
電車に乗って行くとして、お小遣い足りるだろうか?
“君谷”『もうここにしよ』
そうして送られてきた科学館は、巨大な建物だった。
見た目はメカメカしく、近未来を感じさせる見た目をしている。
建物の内部も広々としていて、幾つかのエリアに分かられて真新しい綺麗な展示物が数多くあった。
おお、凄くいいなこの場所。一番いい。
大きくて、内装がしっかりしてて、尚且つ面白そうだ。
ネットで調べると、どうやらテレビで紹介されるほどには有名な場所らしい。
“九条”『賛成』
“雅”『じゃあ私も』
“君谷”『おっけー! じゃ、ここで決まりということで、後でやっぱ止めてとか言ってもなしだからねー。行く日とかは後程決めましょー』
こうして、俺たちの遊び場所は決まったのだった。
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作者「後書き書くの面倒臭くなった。やってくれって言われん限りもうやらん」
遊ぶ日まであと六話




